4着って1番名誉だと俺は思う
題名詐欺な話を作る作者は嫌いですか?
「位置について〜、よーい」
ドンッ!
「いけー!」「キャーがんばってー!」「おぉっと、a組西川くんがトップへと躍り出たー」
パンパン!!
「結果は1位a組西川くん、2位c組佐藤くん……」
あぁ、早く終わんなかなぁ…
誰が18にもなって徒競走でテンション上げれるんだよ…
しかもまだ朝の9時だぞ?昨日の寝たのリアルに3時くらいだったからみんなのノリについていけない。
「よう、琢磨大丈夫か?あからさまに顔色悪いぞ!?」
「あぁ、寝不足にこの炎天下とこのノリには俺の体が絶不調を訴えてるよ」
「救護所行った方が良いんじゃないか?」
そうだなぁ、と俺は空返事をする。
意識が朦朧としてるからこいつの言葉もうっすらとしか聞こえないし、顔はちょっと視認できない。たか誰だこいつ。
そんな俺にも無情な声は届くようだ。
「3コースのa組枯山君はまだですか〜」
俺は何で見ず知らずの死刑宣告だけがこんなに鮮明に聞こえるのか甚だ疑問だったが聞こえてしまったものは仕方ないと諦めて「はーい」と自分でもわかるほど弱々しい声で返事をして3コースへと小走りで向かった。
「ヨォ、琢磨!今年は負けないからな!」
隣の奴が何やら行ってるような気がするが俺は今それどころじゃない。気づいてくれ…
……いや本当に気づいてくれよ!何、目を瞑りながら俺に語りかけてきたんだこいつ?誰なんだ?
俺は少し気になりかけた隣の奴から視線を外し位置に着く。するとそいつはあからさまに不機嫌そうな声だけあげると俺に近づいてきたがスピーカーから発せられる怒号によって慌てて自分の位置についたようだ。
「今年は本気を出してくれるのかな?」
今度は何だと先ほどとは逆の方から声が聞こえた。
あぁ、またこいつか…
何年連続で俺の隣にいて、俺と同じ番で走ってるんだか今の俺の頭では考えれないな。ただすまん、名前が思い出せない。
「毎年4着の枯山琢磨くん、君の高校生活最後は一体何着で終わるのか楽しみだよ。」
「枯山ぁ!今年こそ本気で走れよな!」
「そこは逆だろ、お前たち」
何と個性豊かな友達?知り合いがいたのか、今まで会話はした事ないはずだけど君達僕のこと知ってたのかい?…僕は知らないよ。
そんな俺の心境も知らずに勝手に話し出した彼はもれなくスピーカーから聞こえる怒号にシュンとしてしまった。
何となくだけど……1位を取ってみたくなった。
というか、多分…だけど、早く終わらせて救護所行きたいだけだと思うんだ。予想外に待機時間が長くて気持ち悪くなってきた。手は震えてるし、さっきまで暑かった筈なのに凄い寒気がする。なんかやばい気がするんだ。
「位置についてー!」
やっとか…
地面に手をつきクラウチングスタートを決めようとしてる周りの連中を一瞥して、スタンディングスタートの姿勢になる。
ドヨメキのような声が聞こえた気がしたが、どこからとか、どんなとかは今は判断できない。
「よーい」
ドンッ!
胸に響くような音が聞こえたと同時に先ほどまでの手の震えや体の寒気はどこかへと吹っ飛んで、ゴールへと駆けて行った。
隣を見れば1番最初に怒号で怒られた奴がスタートをミスって転んでいた。
100m徒競走という短いレースで転けたらもう終わりだな…あぁはならないようにしよう。
それにしても身体がどんどん重くなるなぁ。
いつもより時間がたつのも遅い気がするし、100mなんでせいぜい10数秒の話なのになんでこんなに俺はいろいろ考える時間があるんだ?
「あっ?」
驚きの声を上げた瞬間俺の目線は下がって行き、俺を追い抜いて行った奴らが驚愕の声を上げて俺に振り向いた。
ズシャァァア
あれ?なんで俺は壁にぶつかったんだ?
というか転んだ?なんで?
痛みはないからおかしい気がするしなんなんだよ。
ん?こいつらどうして俺の方を向いて泣いてるんだ?
てか、レースはどうした?
あっゴールしましたか?ん?俺が4着?まぁこれで良いとは思うんだ。
あぁ、なんかスッキリしてきた。
身体が軽いわ
やっぱり4着くらいの成績の方が楽で良いな……
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はて、これはなんだ?
スロット?
やったことないけど、これ友達の持ってた糞ゲーで見たことあるな。スロットとかいうやつのレバーだよな?
「ちょっ!なんだ!よ」
流れるプールみたいな緩やかな動きでスロットの方に自然と体が進んで行った。
俺は歩いてないという事だけは言っておこう。
そして自然と伸びる手がレバーを握りこむ。ここまで自然に動いたら逆に不自然だと思うのは俺だけだろうか?
ガチャ、ドゥルルルルルル
古典的なスロット音が聞こえたと思うとボタンが3つ現れた。
またも不自然に手がボタンの方に向かったのでどうやらこれを押さなければ行けないのだろうとわかった俺は少し抗って見たくなりボタンを押す位置まで手の動きを加速させた。すると不自然な力は無くなって一気に加速した手はボタンを押してしまった。
ドンッ!
まぁ分かってた結果だけど改めて言わしてもらうと。
「理不尽すぎるなこいつ!」
どこから現れたのか、空中から一枚のカードが落ちてきた。それを拾い上げようと手を伸ばして触れた瞬間カードは光の粒子となって俺の手の中に入ってきた。
【魔手】
何のことだかさっぱりな文字が頭の中に現れた。
はぁと一息つくと残りのボタンをダダンッと押してサッサと終わらせにかかった。
そして落ちてくる2枚のカード。
【x-1】【スクリーン】
何だこれ?と言おうとするが声が出ない。
喉に手を当ておかしいなと思うが、指が薄っすらとして言ってるのに気がついた。
そして閃光弾でも弾けたのかと思うぐらいに辺りが白く染まる。
「何だよ!」
あっ、今度は声が出た。
と思ったらこの状況は何でしょうか?
目の前には見上げるほどにでかい狼の姿が…
死んだ…そう思った俺は目をつぶった。