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『縮小』のショコレーチ(弐)

-前回のォォォあらすじィィィィィッ!!!-

 スキンシンに到着間近の悠谷たちィ!目の前に見えたのはァ···でっかいスイカ!(駅で凄く便利だよね!)ただし、それはスイカが大きいのではなく、悠谷たちが小さくなっていたのだッ!使用人がまさかのドラテク見せたり、トルクがけっこう喋ったり···ィ。そしていま、トルクの作戦が始まろうとしている。


「ジェリー···『怖い』のか?」

 悠谷が尋ねても、ジェリー・ミサは何も答えない。

「巻き込む気はないから、車から降りてもいいんだぞ?後で迎えにくるから···」

「···『怖い』?そんなわけないじゃない」

 突然に、ジェリー・ミサは喋り出した。

「考えていたのよ。トルクの作戦の『後』···どうするか考えていただけよ」

「考えていただけ···じゃあ、それって――」

 やるのよ。ジェリー・ミサは言い切った。その表情には、何一つ曇りがなく、まるで戦う前から勝っている眼差しだ。

「···作戦を実行しよう!」

 その場にいる全員の表情が変わった。全員一致で、『勇気の顔』であった。

「あれ?車が止まっちゃったわ?···車から腕が···ッ!『あの手』!トルクのだわ!――近くに『バナナ』があるッ!『まさか』!?」

「『治癒ゲリールTHE()(マン)』ッ!『生命力のある植物ならば』!切れたヘタの部分を『治す』ことによって···」

 ググギュ···。ヂュギュ···。

「再生し、新たに『木ができる』ッ!」

 ゴォウゥン。

 バナナのヘタ部分からみるみるうちに、木ができ上がってきている。

「この木になる『威力』を利用して、あいつのところまでぶっ飛ぶ!」

 ブウゥオォオオオン。

 車は時速250キロほどのスピードで、ショコレーチの元へと飛ぶ。

「ッ!『速すぎて見失った』じゃない!何よ!ここは『80キロ区間』よ!?標識が読めな···そうか、『小さいから』見えないのね···」

 車はそのまま、地面へと落ちていき――ビュウゥウウ。風に受け止められた。

「はぁ、はぁ···よかった。車1台受け止められる『力』があったようだ」

「みんな、無事か!?」

 そう声を上げたトルクは、なぜか逆立ちをしていた。車の揺れが激しすぎたようだ。

「お、俺は無事です···ッ、ジェリーは?」

「···大丈夫。ユーヤ、守ろうとしてくれたのは有難いけど、抱きしめなくてもいいのよ?」

「あ、すまん。無事で···なによりだ···」

 次に使用人が起き上がる。使用人は――無事だった。

「トルクさん···せめて、皆さんに『シートベルト』をしめるよう、忠告しておくべきですよ···」

 使用人はシートベルトをしていたので、何食わぬ顔をしている。

「こ、ここは···はッ!『植木鉢』だ!つまりこの上にあるのが···」

 フーゴンとトルクが車から顔を出す。その時、上の人物が走って行った。

「あッ、逃げられたッ!しかも俺らが小さいからか、超速い!」

 次第にその人物は見えなくなった。逃がしてしまったようだ。

「···見たか、トルク」

「えぇ···驚きましたよ。流石に···」

 ――「『水色のパンツ』だ」

 フーゴンとトルクの声が被った。そして、2人は奇妙な笑みを浮かべる。

「ちょっ、パンツ見て何笑ってるんだ!」

「『何を勘違いしてるんだい?』ゆうや君。わたしたちは···『パンツ』を見たことによって、あることが分かったのだよ」

 フーゴンは咳払いをし――また笑った。

「ふふ···いや、失礼···くっく······『パンツが見えた』ということは、あいつは『スカートを履いていた』という···ことだろう?ぶっ···はっはっ···スカートを履くということは、あいつは『女』ということになる」

「ドジな敵だなぁ···ぷっくく···ひっ···」

 正直のところ、悠谷とジェリー・ミサは引いた。手がかりを見つけたとしても、その『手がかり』がアホらしいのだから。

「だが、逃げられたのは予想外だった。あいつが女だということ以外、特定できなかったからな――ウッ!?」

「オッ!?なっ、これは···『体が元に戻っている』ッ!」

 一同の体も、車も元の大きさに戻っている。だが、あいつの姿はなかった。

「···やつが逃げたのは、やつを打ち負かしたからだ。しばらく···2時間くらいは攻撃してはこないだろう···」

 フーゴンは溜め息をつく。使用人は車を走らせ続けるが、脱力感がある。


 スキンシンに到着した一同は、歩道なのか車道なのか、よく分からん道を突き進む。車道外側線(しゃどうがいそくせん)がないのだ。子供が将棋をしながら道を塞いでいたりもする。

「···おいおいぃ、『明治』なんじゃないのか?こんなの、まだ『江戸時代』じゃないか」

「まぁ···あくまで『気分は』だからな···ゆうや君より日本に詳しくないわたしから見ても···」

 ふと、フーゴンは時計を見る。時針が差すは1。分針が差すは2と3の間。秒針が差すは8。13時13分40秒だ。

「···そろそろ昼食を取ろうか。明治時代だから···『すき焼き』が食べれるハズ」

「···牛肉を食べれる店なんて、あるんでしょうか?」

 スキンシン中を探し回ることにした。やはり、明治時代より江戸時代の名残(なごり)がある。たまに街灯あったり、煉瓦造りの道を馬車が走っていたりもする。

「――あれ?ここ···店が並んでいるようですが···『車では通れない』ようですね。馬車さえも通れないっぽいです」

 すぐ隣には、親切に『駐車場』がある。といっても、停まっているのは大抵が馬車だ。仕方がないので、一同はその通りを歩くことにした。

「はぉ···すごい。江戸時だ···明治時代って、こんな食い物があったのかなぁ···」

「日本を舐めちゃあいけないというのが、分かった気がするよ」

 という会話を交わす悠谷とフーゴンだが、江戸時代の頃の食べ物に、ドリアンやミートスパゲッティなんてものはない。

「見た感じ···肉料理はないみたいですね」

 魚、野菜、果物···謎に中華料理ッ!一同は落ち込む。期待した自分たちがバカだった。スキンシンに、期待してはいけない。

「どうします?フーゴンさ···ん···あれ?」

「ん?どうしたにの?トルク」

「いや、あれ···?『フーゴンさんが···いない』···」

 ブゥワッ。人混みの波に押されながら、悠谷たちを強く固定するのは焦燥感だ。

「ま、『迷子』じゃないか?周りに流されちゃったとか···」

「フーゴンさんはそのような場合、大声で叫ぶんだ!つまり、これは···喪失···?」

 肉料理が食えないから喪失したのか?

 いや、違うか···。

「···『きたのかもしれない』···数時間前のあいつが···」

 あいつというのは、誰を差そう『縮小のショコレーチ』だ。


「······してやられた。いつの間にか···『小さくなっている』じゃないか···」

 敵の位置も分からない。多分、小さくなったのは自分だけだ。トルクやゆうや、ジェリー・ミサがいない。

「しかも、戦場が『ここ』だなんて···ッ。小さくなったわたしの『不利』じゃないか!」

 何十もの人が歩き混じるここでは、無闇に動けば誰かに踏まれてしまう。

 勝利のためならば、手段は選ばないのか?相手を不利に追いやり、勝利すればそれでいいとでも?

「いいや、違うだろう?それじゃあ···」

 フーゴンは速足で近くにある木箱の陰に隠れる。これは道行く人に踏まれないようにするためであり、相手に自分の位置を把握されないようにするためだ。


(···木箱のところにいるわね。どんな険しい顔しても···苺の種並の大きさじゃあ怖くないわねぇ)

 ショコレーチはそう思うなり、フーゴンが身を隠す木箱へと近付く。


「ん?あッ!あれは···『パンツ』ッ!色が『水色』···間違いない、あいつがレガリア使いだッ!」

 フーゴンが確信した瞬間――木箱が蹴り飛ばされた。

「なんだと!?こい···つぅ···もう周りには『身を隠すものがない』というのに!」

 木箱がなくなると、木箱を避けて歩いていた通行人は、自然とそこを通るようになる。

「ッ···あっ、あぶない!む、無理だ!あいつの『レガリア』···強すぎるッ!」

 今まで出会ったレガリア使い全てにおいて、やつは最強ともいえる。『ただの小さくする能力』に負けるだなんて···そんなの······『紳士』じゃァァないッ!

「閃いたぞ!戦いにおいて、相手だけを『観れ』ばいいと思っていた···が!持論が変わった!そうか···『観る』のは『その場』なんだ!この店が並ぶ『道』全てをッ!」


「ふっふっ···ふ···私の『レガリア』は弱いわ···でも···『弱いからどうしたのよ?』···戦いは『力』じゃないって、アメリカ人プロレスラーの『アントニオ・ウエット』が言っていたわ···」

 ショコレーチは人混みをかき分けながら店が並ぶ道から出ようと走る。フーゴンを倒せた。その確信だけを胸に抱いている。

「···『アントニオ・ウエット』はそう言ったあと···プロレス大会の準決勝で···開始から15秒後に脊椎が折れて死んだわ。その一部始終をすぐ近くで見て私は思ったの。『彼の死体が欲しい』って」

 流石に耐えられなくなった。ショコレーチは高笑いをする。何人もの通行人がこちらを見るが、ショコレーチの笑い声は周りの声に圧し殺される。

「そう思ってからだったかしら。私の『レガリアが目覚めた時は』···」

 この能力(プテイト)を使って、ショコレーチは有りとあらゆることをやった。放火や殺人なんて、3日に1回の頻度だ。だが、ショコレーチが悪びれることはない。

 なぜなら――「これは『運命』なのよ」

「私は選ばれたの。だから人を殺したって神さまは怒らない。いまではグランベル様の『道具』として···私は人を殺せるわ」

 ショコレーチは自分が正しいと思っているのだ。グランベル・ミサに出会う前から既に、ショコレーチは『クズ』だった。


 フーゴンを見失った悠谷たちは、困惑し、何もできずにいた。

「フーゴンさんは···夏場の『蚊』のようにしぶとく、そして『強い』人だ···簡単にくたばるような人じゃ···ない」

 そう言ったトルクさえ、気を抜けば脚がガタガタと震えそうに考え追い詰めている。

「···敵の『レガリア』は『ものの大きさを変える』···こんな人が煩わしく歩く道は危険だわ。『踏まれるもの』。だったら、フーゴンはどのような行動を取るか···ユーヤ、もう分かるよね?」

 トルクとは反対に、ジェリー・ミサの表情は確信があった。

「······『フーゴンさんはこの道から出ようとする』···か」

 ジェリー・ミサに釣られてだろうか、悠谷の表情もまた、決心に満ちていた。

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