ちょっと一息姉妹編 瑞希(みずき)+亜美(あみ)
「蝶のようにrararaー蜂のようにbebebeー」
相変わらず瑞希はテンションが高い、
高校女流名人三連覇を成し遂げたからではない。常にゴキゲンなのだ。
「 今日も1段と調子良さそうね、瑞希さん」
「 オーっほっほっ、せんせ、私は常なゴキゲン中飛車でございますことよ、オーっほっほっ」
それなりに美形で高校女流名人三連覇を成し遂げ、マスコミに引っ貼りだこになっても良さそうなものだがそうはなっていない、新聞にデカデカと載っても個人的な掲載ではなく、上位2名だったり3名だったり
大会の結果と棋譜やその観戦記は載るのだがインタビュー記事などは 殆ど掲載されていない。
一般の高校生が余りに大口叩いてもバッシングを浴びるだけだし、瑞希がコメントを抑えるとも思えない。「凄い」というアピールだけして個人の発言は避けているのだろう。
もう少し成長すれば世間も見えてくるだろう、と言う才能溢れる者への配慮なのかもしれない。
「 オーっほっほっ、亜美惜しかったわね、そろそろ私に勝てるような気がしてるんじゃない?まぁそんな日は永遠に来ないのだけどね、オーっほっほっ」
「 お姉ちゃんも相変わらずねー、負けた時廃人にならないか心配だわ、私が恵まれてたのは、目の前に最大のライバルがいたところかもね、負けるのに慣れてるから他人に負けてもショックなんて受けないわよ」
「 亜美のところにはインタビュー来たのかしら?なんて答えたの?まぁ興味ないけど、オーっほっほっ、ちなみに私は勝つべくして勝った、優勝の栄冠と言うのは努力して奪うものではない、天から与えられる物だって答えておいたわ、オーっほっほっ」
「 私はそろそろ世代交代になるって答えておきました、私の方が若いからそのうち有利になる、まぁ時間の問題だけどね、お姉ちゃん」
瑞希の顔から一瞬笑みが消えたがまた元の顔に戻り高笑いしながら消えていった。
「 オーっほっほっオーっほっほっ、若い方が有利ねえ、たかだか2歳の差で若い方が有利になるのは未成年の犯罪とアラサーの結婚くらいのものよ、オーっほっほっオーっほっほっ」
去っていく瑞希を見えなくなるまで見続ける亜美。
「 今日は珍しくお姉ちゃんの直接攻撃が来なかったか、3歳の頃から毎日死と隣り合わせなんて私くらいのものじゃないかしら、しかも狙ってくるのが実の姉、あの人の考えてることは分かんないわー、まあおかげ様で明日からジャングル行けって言われても生活出来そうだけどねー」
亜美はそうつぶやくと顔を半分右に素早く傾けた、亜美の動いたあとを「ひゅっ」という音とともに何かが通り前の壁に突き刺さった。
「 ちょっとーお姉ちゃんアイスピック投げるのやめてくれない?壁に穴が開くでしょ!」
「 オーっほっほっ、亜美がちゃんと受け取めてくれれば壁に穴なんて開かないのよオーっほっほっ」
「 避けなきゃ私に穴が開くわよ、お姉ちゃんもただでは済まないんだからね」
「 オーっほっほっちゃんと証拠は残らないように気を付けていますよオーっほっほっ」
「 そっちが残してなくてもこっちがちゃんと残してるのよ、それと次からはもう少し殺気消した方が良いわよ、気配でばればれになってるわよ」
「 オーっほっほっ亜美の将来を考えて毎日のように構ってあげてるんじゃないのオーっほっほっ」
「 私は将来ジャングルに住む気も、殺し屋に追われるような職業に就く気もないわよ」
「 あらあらそれは残念ねオーっほっほっ」
瑞希はまた高笑いしながら去っていった。