続・邂逅
「はあ?」
「〜〜〜〜〜〜〜!!」
「〜〜〜〜〜〜!??」
「〜〜〜〜〜〜!!!」
「分からんか?こうで、こうで、こうなった」
「無理です、いきなり言葉なんか通じませんよ!」
あれだけ止めたのに…
今も必死に身振り手振りで意思の疎通を図ろうとしているこの人の行動力と根気は一体どこから来るのだろうか?
随分と腰が軽そうではある。
「だめか?だめか…や、泊めてくれ、泊める。わかるかね?」
言葉も通じない、彼らからしてみたら奇抜な格好をした、俺達の話を当然誰も聞く筈が無く、おまけに彼らを怒らせてしまっている様である。
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
「〜〜!!!」
異世界人の方々は互いに目配せしたかと思うと…
「うわっ!」
「何をするんだ!やめろ!」
何処からか麻縄を持ち出したかと思うと、あっという間に俺達を捕らえて、縛り上げてしまった。
「〜〜〜〜〜!!!」
熟れた手つきで俺達を縛り上げた異世界人達。
そのうち、少し年を重ねている様に見える男が懐からホイッスルの様なものを取り出した。
それを口に咥え、思い切り息を吹き込む。
ピリリリっと周りの空気を裂く音がしたかと思うと、異世界人達は足早に俺達の前から立ち去った。
「おい!待て!何処へ行くんだ!」
「縄を解け!おい!」
「行っちゃったよ…」
言わんこっちゃない。
縄はきつく縛られていて、確実に手足の動きを封じている。
「くそっ…駄目か…」
芋虫の様に地面を何度か転がっても、縄はぐいぐい足に食い込む。
「おい、動くな」
「くっ…」
「動くなと言ったろう、止まれ」
「はい」
「ったく雑に縛るもんだな、これじゃあ薪と一緒じゃ無いか」
不意に、手足が自由になった。
それと同時に、後ろにいた筈の彼が立ち上がって俺の手を引いた。
「さっさと立たんか、ぼさっと口を開けてないで」
「す、すみません」
「礼はいらん。私と君がまとめて縛られてたから解いたまでだ」
「何なら、君を置いて…や、冗談だ。面白い話を聞かせて貰ったからな」
冗談にしてはきついなあ…
ともかく、自由になったのだからこの異世界で…ダメだ。
右も左も分からないこんな場所で血塗れの老人と青年のむさ苦しい男2人組が送り込まれたところで、良くて餓死が関の山だろう。
せめて俺だけでも女だったならば人類最古の職業にありついてワンチャン…想像もつかないが。
ただし、一つだけ希望を持つとしたら今俺の隣にいる老人が唯の老人ではなく、動乱の幕末を生き抜いた、押しも押されもせぬ明治の元勲であるといったことだけだろうか。
「おい」
「は、はい」
「此方に向かって…」
彼の指差した方向を見ると、
「何か、来たみたいだ…」
そう言って彼が指差した方向を見ると…
ズドドドっと地響きが辺りを揺らし、土煙が小道の向こうからもうもうと立ち上がっていた。
道を外れるにも、馬小屋の方向、そして恐らくは異世界人の集落へと二つ道がある他は、青々と茂った背の高い立ち草が俺たちの行き先を阻んでいた。
「こりゃ、逃げも隠れも出来ないな」
彼はそう言って含み笑いをした。
そうしているうちに、俺たちの前には筋骨隆々とした大馬二、三騎とそれに跨った鉄仮面に鎖帷子の騎士とも思わしき武人がやって来て、俺たちの前で止まった。
「い、伊藤さん…」
「何だ?」
「何処で、縄解きを覚えたんですか?」
「何処でって…まあ、若い頃に色々とな」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「ひっ」
さっきまで走っていた馬にも負けないくらいの鼻息で、怒鳴りつけられた。




