Worm、あるいは異世界という名の流刑地
習作です。
この世界は荒廃している。
核戦争が何度か起きて、南極大陸には新しい国家が誕生した。
台布巾のほうがまだマシなくらい、ボロボロだ。
資材も無い、枯渇したというより、霧散したというほうが正しいだろう。
火薬は街だけではなく、生活の原材料まで粉みじんにした。
まあ、いいだろう。
そんなものは何十年も前から分かっていたことだ。
ここに一つの虫がいる。
足は無い、芋虫のように、残酷な形状だ。
世界の終わりを迎える前に発見したのが、この『ワーム』だ。
安易な名前だ。
ワームに食われたものは、異世界へと旅立ってしまう。
そう、ワームホールだ。
だから、ワーム。
このワームをたまたま捕獲した科学者がいた。
いまではクローンの大量生産で、自由自在に異世界へと旅立つことが出来る。
資源を奪って、世界を復興させる。
異世界のことなんぞどうでもいい。
ワームを捕獲した科学者は不幸だった。
たまたま、科学者の兄が世界最大の犯罪をして、世界で初めて異世界追放になった。
科学者は泣き崩れ、いつしか異世界へと旅立ってしまった。
その後、何人かの犯罪者をワームで異世界へと旅立たせた。
とある大学でワーム以外の方法で異世界を行き来する方法があるという論文が発表された。
異世界へ行ったら、たまたま地球の人とあったというのだ。
原因は不明だが、おそらく野生のワームが存在するのだろう。
中には転生したものもいたそうだ。
どこまでが真実で、どこまでがオカルトか分からない。
そんなある日、異世界で最初の追放者と接触した。
追放者は叫び声をあげて、飛び掛ってきた。
「ワームを寄こせ! 俺は南極に帰るんだ」
必死の形相だった。
誰だって故郷は恋しいのだろう。
ワームを発動させて、逃げた。
最後に見た彼の顔は絶望に歪んでいた。
政府へと報告した。
その異世界へ行ってはいけないと。
聞き返された、異世界の名は?
パンゲアです。
古代の超大陸の名か。よかろう、あいつがいるなら行くのは危険なのは明白だ。
ただ、気になることが。
何かね?
あの異世界へ行った調査員の報告に、多数の地球人と、転生者がいると報告が上がっています。
……戯言か?
それは、わかりません。
なるほど、ただ危険なのはかわりは無い。
今後、ワームにはパンゲアへ行かないように教育を施そう。
わかりました。
それから、248年。
いまだにパンゲアへの通行は許されていない。
地球は異世界からの資源で回復の目途がたち、幸せを謳歌しようとしていた。
いつしか、その異世界は忘れられてしまった。