4話
4話
あの後まんまと誘拐された僕は、何故か家庭科室へと連れ込まれていた。
魔王というのは過去に実在していたそうで、断絶の時代とも言われている。もちろんのこと勇者もいて、彼らの伝説は大抵の子どもが親から子守歌がわりに聞かされる。
魔王と勇者が戦い、その結果、魔力が生まれた。
そして現代に至り魔術と科学が誕生したーー
勇者は魔術の祖であり、世界を破滅から救った英雄なのだ。
しかしそれは勇者がついた大嘘であるのだと、
白昼堂々と僕を攫った電波はそう語った。
そんなことを熱弁されても、僕にはこいつヤバイ以上の感想を抱くことができないのだが……
「つまり、私は姫君の側近であったメキアなのです。どうですか?もう流石に全て思い出しましたよね?」
「ああ、さっぱり。
つまり僕は伝説の魔王の生まれ変わりなんだな?」
電波は爆発しそうな様子だったが、思い直したように歯噛みした。
「ぐっ……姫の命さえなければこんなやつ……まあいいでしょう。
私が言いたいことは、貴方に危険が迫っているということなのです。ここ数日起こっている魔術師への襲撃事件、あれはきっと貴方をねらったものに違いありません。いままで私は無力な魔王様をこっそり見守っていくつもりでしたが、これからは貴方自身がより警戒していないといけなくなるかもしれ……」
「ちょっと、ちょっと、ちょっと待った!」
何かいま、どうしようもなく聞き捨てならないことを聞いてしまった気がする。
「見守ってた……って!ことは!僕の!あんなことや!こんなことまでっ!余さず残さずみてたってのかっ!」
最低だっ!と畳み掛けると電波、いやストーカー女は慌てて否定してきた。
「ち、違いますっ
……あなたに危険が及ぶとしたら学園内ですから……それ以外は……」
わたわたと両手をふって弁解しているが、まあきっと事実だろう。
気を引くための妄言の類いだ。
そう確信できる理由が僕にはある。
しかし、嘘だとはわかっていても気持ち悪いものは気持ち悪い。
「まあお前なんかに僕が見張れるはずも無いし、信じてないさ。
じゃあな、ストーカー」
そう返してから素早く家庭科室の出口へと向かう。すっかり言い訳に気を取られていたストーカー女が昨日と同じように僕を呼び止める声がしたが、僕は無視することにした。
とりあえず、一時間目の鐘もとっくに鳴ってしまったことだし、今日はもうばっくれてしまおう。真面目にきて完全に損してしまった。
……しかし、もう少し慎重にならなきゃな……
実に関係のない話だが、その後また魔術科に対する暴力事件があったらしい。
物騒なことである。