プロローグ
ちょっと、話を幾つか並べ替えました。
ややこしくてすみません。
プロローグ
色とりどりのカケラが宙に浮かんでいる。
赤いもの、青いもの、黄色いもの、緑のもの……その間を縫うようにして、黒と白の粒子がざわめいている。
瞬き、震え、歪み、踊り、
くるくるとまわりながら、生命に宿る魔力を糧としてこの世に偏在するそれらのことを、僕は、『魔法』と呼んでいたーー
「ガッ……グギャアアアアッ!」
「辞めろ……辞めてくれ!た、助けてくれぇっ!」
情けなく呻きながら地面を這いつくばり、どうにかして逃げようとするそいつらに、彼は声をかける。
「どうしたんだ?別にどこもどうもしてないじゃないか。落ち着きなよ」
彼の言ったことは事実だった。少なくとも、その不良たちは血どころか、傷一つとして負ってはいなかった。
「違う、違う、違うんだぁ、痛ぇんだよぅ」
会話が伝わらないということを本能的に察知した不良たちは、ますます怯えた声をあげた。
「だから、どうもしてないだろ?
もうちょっとだけ音を聞かせて欲しいだけだ」
そういうと、スタスタと歩み寄り、彼はあっさりと不良の2人組に追いついた。
腕を伸ばし、そのうちの1人の顔面を鷲掴みにする。
「あ、あ、アギャアアアアッ!」
絶叫が木霊する。
叫ぶ不良の顔を見つめながら、彼の顔は全くの無表情だった。
まだなにもしていない。
ゆっくりと、不良の周りにうく、壊れかかった魔術の構成を眺める。未完成の魔術は火の玉を創り出すものだった。どうせ遊び半分で放火でもするつもりだったのだろう。
そっと指でつつき、構成を完全に打ち砕く。
その瞬間、彼の耳に美しい音が響いた。天国の鐘のなるような、繊細なガラス細工が砕け散るような、そんな音をたてて、魔力によってつなぎ合わせられていた『魔法』が解放された。虚空へと散らばって行く。
『魔法』の奔流に魅入っているうちに、気付けば、不良はすっかり沈黙していた。構成を崩されたフィードバックが魔力回路にきたのだろう。グッタリとした身体を地面に放り投げる。
音を聞くどころか、気絶してしまうとは、なんてもったいない奴なのだろうか?
「でも、お前はもしかしたら『聞こえる』かもな……」
まあ、そんなわけないか?
振り返ると、もう1人の不良は既にヤケクソになっていたようだった。ガクガクと覚束ない足で何とか立っている。
「危ないな。座っていたほうがいいぞ」
「だ、だまれぇ!やられてたまるかよぉっ」
不良が手をかかげる。
詠唱とともに、赤い魔力が、赤色の『魔法』をつなぎ合わせていく。
ーーじりりりりりりりりん
学園内に設置されていた魔導警報器が鳴り始めた。
「ああ、人が来ちまう。さわぎすぎたか……」
今日のはこれぐらいでいいか。
彼は飛来する火の玉を片手で砕いて、素早く距離をつめると、不良の首を軽く締め上げた。
「よし。逃げよう」
崩れ落ちた不良をさっき同様地面に放り投げると、彼はその場から立ち去って行った。
こうして、被害者がまた二人、生まれたのだったーー