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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第4話

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成長の証

「えっとだね……まずその増幅器についてだけど、別に秘密を明かしたからといって急激な変化があるわけではないよ」

「その辺りは別に期待してないんですけど」

「ああ、そうなのか。じゃあ簡潔に増幅器の持っている効果を説明しよう」


 青井はそう告げると、意味深な笑みを達樹へ浮かべて見せる。


「その増幅器には、達樹君が持っている魔力を底上げする効果がある……けれど、それ以外にも矯正器具としての効果がある」

「矯正? 何を矯正するんですか?」

「魔力を出し方とかを」


 言っている意味が汲み取れず達樹は首を傾げる。


「えっと……?」

「これは実際説明するよりも見てもらった方が早いかもしれないな。達樹君、右腕だけ増幅器を外してもらえないか」


 言われるがまま、達樹は右腕にある増幅器を外す。


「確認だけど、増幅器を渡した以降はそれを外した状態で魔法を行使したことはないよね?」

「はい」


 日常生活上、風呂や眠る時はさすがに外しているが、学校に行く時は基本身に着けている。


「その状態で魔力を収束させてみてくれ」


 達樹は右腕に目を向ける。増幅器を外している状態で魔力収束を行う――だがそれは、落ちこぼれの力しか出せないことを意味しているはずだ。

 だが言われるがままに達樹は魔力を込める――すると、


「え?」


 まるで増幅器を身に着けているかのように、右腕に魔力が発せられた。


「達樹君のように、魔力を所持していながら一般的な魔法使いよりも能力が低い……こうした場合、どうすればいいか考えた結果、一つの結論に達した」


 青井が言う。達樹は彼に視線を送り、言葉を待つ。


「達樹君のそれは、別に体の中にある魔力が増えたわけじゃない。増幅器によって体が魔力の出し方を覚えた……増幅器なしでも、魔法を扱えるように」

「それじゃあ……」

「増幅器は体の内にある魔力に働きかけ続けているため、以前と比べて魔力量そのものも少しばかり増えているはずだ。ただし、これはあくまで増幅器の仕様に合わせて魔力の生み出し方を変えただけだから、魔法を収束させたからといって他の魔法まで使えるようになった、というわけではない」

「けど、増幅器で生み出せる光の魔法は、これが無くても使えるようになったと?」

「そういうこと」


 頷く青井。増幅器によって使える魔法だけなら、増幅器なしでも使えるようになった――つまり、増幅器なしでも色々と立ち回れるようになったということだ。


「さらに調整すれば、魔力の制御法なんかも増幅器を利用して訓練できるようにできるだろう。」

「なるほど……わかりました」


 攻撃の種類は限定されるが、達樹自身増幅器なしに魔法使いとして動けることがわかった。


「ただし、これは決して達樹君が戦力アップしたというわけじゃない」


 青井の言わんとしていることを、達樹も理解する。


 彼が言ったことはあくまで「増幅器がなくなっても魔法が使えるようになった」ということだけで、決して能力が向上したわけではない。


「しかし、この情報が君の立場を好転させるのは間違いない」


 青井はさらに続ける。これについても何が言いたいのか達樹には理解できた。


「つまり、増幅器なしでも戦えるようになったことから、パートナーとしての価値が上がったと」

「そういうこと。警察が君をパートナーにすると言っている以上、達樹君の状態がどうであろうとも結論は変わらないと思うけど……増幅器持ちということで反発がないとも限らない。それに対し反論できるようになるというは大きいと思う」


 彼は微笑を見せる。達樹としては内心同意。だが、


「問題は、ここからさらにどう強くなるか、ですよね」

「そこだね。技術については門外漢だから、他の人に相談するしかないな」

「相談……」


 といっても、誰にすればいいのか。候補はいくらか浮かび上がるが、達樹としてはそれでいいのかと思う。


「まあ……どちらにせよもっと腕を磨かないといけないのは理解しているので、おいおい考えます」

「それがいいね。他に質問はある?」

「この増幅器は今後も身に着けていて問題はないですか?」

「大丈夫だよ。不要となるまで魔法を極めてくれ」


 さすがに極めるという境地に到達するのは無理だろうと達樹は思いつつ――礼を述べ店を出た。


「魔法……か」


 増幅器なしでも使えるようになったという事実は、達樹自身大きいと思った。

 なんだか今以上にできることが増えたような気もしたが――決して違うことができるようになったわけではない。達樹は気を引き締め直し今後パートナーとしてどうするべきかを考えようとした。


 その時、携帯に着信が。確認すると舞桜だった。


「……もしもし」

『達樹? 今どこにいるの? 寮?』

「いや、出先だけど……」

『今から私の家に来れる?』

「何かあったのか?」


 問い掛けに舞桜は少し間をおいて、


『……パートナーに関する件。警察側は、達樹のデータを収集したいみたい』

「収集?」

『詳しい話は家に来てからでもいい?』

「ああ、そうだな。わかった。すぐに行くよ」


 通話を切る。そして次に出たのは、小さな溜息。


「……やっぱり、俺は不満なのか?」


 そんなことを呟きつつ――達樹は、舞桜の家へと歩き始めた。






 舞桜の家に到着した時刻は日が沈んだくらいの時刻。達樹がリビングに入ると、そこには彼女以外にもう一人、日町の存在が。

 相変わらず白衣姿の彼女は、達樹と舞桜が向かい合って椅子に座ったと同時に、横手に立って口を開いた。


「おそらく警察側は、達樹の存在が嫌だからこんなことを言い出したのではなく、純粋に数値化された力量がわからないため判断できないということだろう」

「力量……」


 達樹が呟くと、日町はゆっくりと頷いた。


「光陣市は魔法使いが集まり、なおかつ魔法に関する研究が多い場所だ。当然そうした町の治安を守るために立栄君を始めとした魔法使いも動員する必要がある」

「それはまあ、わかります」

「資料などに関しては早河さんだって用意していたはずだが、それでもということは納得しきれなかった人間がいたということだろう。誰がこういうことを決める権限があるのかわからないが、厳しい目で見ている人物がいるのかもしれない」

「……事情はわかりました。具体的にどういうことをすればいいんですか?」

「警察は定期的に能力測定を行っている。それに参加してデータを取りたいらしい」

「まあ、それなら……」

「ただ」


 と、日町は微妙な表情を示す。


「単純にデータ取りだけだと、ちょっと厳しいかもしれない」

「え?」


 達樹は聞き返す。すると今度は舞桜が話し始めた。


「能力測定は基本、通常通り魔法が使える人物を対象に行われるもの。ここまで言えばわかると思うけど――」

「つまり、増幅器がないと厳しい俺には不利ってことか?」

「能力測定だから総合的な評価が成されると思うの。達樹の魔法は強力なものだって存在するけど、こうしたデータ収集の場合は……」


 それ以上は言われなくても理解できていた。達樹としては頷く他ない。


「とはいえ、私達としてはそれであきらめるわけにもいかないというわけだ」


 日町が言う。達樹が視線を向けると、彼女は肩をすくめた。


「君自身例外的な人物だからな……そうしたデータ収集以外にも、別の見地で評価できないかと早河さんに伝えた」

「それは……?」

「簡単に言えば、実戦的な能力がどれほどなのか……その辺りを評価するように伝えたんだ」

「実戦、ですか?」

「警察側にそうした能力についても直接見てもらうようにお願いしたわけだ。もちとん能力測定できちんと評価が成されれば問題ないが……もし駄目だったら、実戦だ。達樹君ならそういう形式でも難しくはないだろう?」


 首を縦に振ることも横に振ることもできなかった。実戦――達樹としてはシチュエーションがどういうものかで変わってしまうと思ったためだ。


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