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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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パートナー

 週が開け、月曜日。色々騒動があって授業などにも影響があったのだが、ようやく月曜になって完全に授業が再開されることになった。


「やれやれ。騒動続きだな、達樹」


 昼食。いつものようにオープンカフェの一席で食事を行う達樹たち。さすがに気温が一段と低くなりつつある現状ではこうした場所に座る人間は少ない。とりわけ今日は風だってあるのだが、優矢が薄い結界を張っているため、風なんかはしのげていたりする。

 そして優矢の言葉に、達樹は何も答えない。食事を終え、仏頂面でそっぽを向いている。


「何で達樹がそんな顔をするんだ?」

「……別に」


 疲れた、という言葉が何より似合っている――結局、祖々江は事件を解決した報酬代わりに早河に達樹をどうするかについて話すことを要求した。早河もパートナー云々については知っている人物がいた方が学園で公に隠し通せるのでは、ということで結局、


「パートナー候補である達樹自身、ストレスでもあるのか?」

「そうやっていつまでもネチネチ言われ続けるからだよ……」


 ため息をついた後、達樹は優矢を見据え、


「あんまりひどいと、舞桜に言うぞ」

「おお怖い……言っておくけど、俺は心配しているんだぞ?」


 ――無論、達樹だって優矢が茶化して言っているわけではないのはわかっている。早河はこうなった経緯をきちんと説明した。その結果、達樹が騎士の攻撃によって死にかけたことまで話した。なので、それでも戦う意志を持つ達樹に祖々江たちが驚いたくらいだった。


「ま、この話が正式に認可されるまで待機じゃあ、フラストレーションも溜まるな」

「本当はもっと色々理由があるんだけど……まあいいや。そういうことにしておくよ」


 幸い、達樹と舞桜の関係性については先の事件に関わった面々で留まっている。警察としても変に話を広げられると困るということで――また、舞桜自身に相当迷惑が掛かると釘を刺したため、話が漏れるようなことはないだろう。


「というか優矢……確認だけど、俺に対し思う所はないのか?」

「あのなぁ、俺がそんなに狭量な人間に見えるのか?」

「見える」

「断言するなっての……ったく」


 肩をすくめる優矢。


「そりゃあお前が立栄さんを口説きまくってとかならボコボコにしてやる所だが、経緯が経緯だからな。事件解決まで関わったなんて話を聞かされれば、認めるしかないだろ」

「……そうか」

「友人として助言しとくが、あんまり無茶はするなよ。死にかけている時点で首を突っ込まない方がいいんじゃないかと思うくらいだが、その辺りは紆余曲折あったんだろうから、何も言わないでおくさ」

「……ちなみに、優矢は今後事件があったとしたら関わりたい?」

「ごめんこうむる」


 優矢の回答が、普通の人間の反応だろう。舞桜にいくら憧れを抱いているといっても、さすがに事件にまで関わろうとするなんて真似はしない。


「ところで達樹、青井さんにはもう連絡したのか?」

「いや、用事があるってことでまだだけど」


 増幅器には、どうやら何かしら秘密があるらしい――そう判断した達樹は、青井と連絡を行い詳細を訊こうとしていた。ただ相手の時間がとれずまだ上手くいっていない。少しばかりもどかしい気持ちもあるが――


「まあ、警察側で達樹をパートナーとすることを協議中らしいし、少し休憩してもいいだろ」


 優矢が言う――休憩という言い方が適切かどうかわからないが、確かに少し急ぐような気持ちはあった。心を休める必要はあるかもしれない。

 現状は達樹だけでは解決しえない問題。待つしかない以上、優矢の言葉も一理あるだろう。


「……そうだな。一度頭の中を空っぽにしてみるよ」

「その意気だな……ところで、達樹」

「何?」

「立栄さんを狙うような輩がいるみたいだが……その辺、どう考える?」

「どうって……俺には何が目的なのか見当もつかないよ。けど――」


 優矢たちに警察は話していないが――これはおそらく警察と関わりがないからだとは思うし、まだパートナーになっていない達樹が知っているのもおかしな話だが――今回の事件については一つ大きな懸念がある。

 それは関石という人物達について。パートナーとする予定であった人物が行方不明となっており、その父親である人物だけが協力姿勢を見せている。


 早河は息子が『救世主』と名乗る存在に目をつけられたのだろうと言っていた。つまり事件は完全に解決しているわけではない。よって、注意する必要がある。


(とはいえ……今後しばらくの間は警察も学園なんかの警備を強化するらしいし、表だって動くことはないと思うけど)


 ともあれ、鍵は舞桜にある。彼女が今回の件についてどう思うか訊いてはいないが、理由もわからず狙われているのは危険だと考えるだろう。対策を講じる必要がある。


(ただそれはあくまで警察の仕事……で、俺は警察と協力して対応する、か)


 そこでふと、声が聞こえた。親衛隊を伴う舞桜の姿。


「立栄さんが狙われている以上、親衛隊も相当頑張るつもりらしいな」


 先日の事件に深く関わった三枝が主導で、ずいぶんと親衛隊の中も変えたらしい。だからなのか、以前のように和気あいあいとしながらも、舞桜を守るという芯の強さは、倍増さえしている気がした。


「達樹、学園の方は俺達に任せておけ」


 優矢が言う。それに達樹は何も答えない。


「だからお前は、無茶しない程度に立栄さんを守れ」

「言われなくても、そのつもりだよ」


 達樹の返答に優矢はどこか満足そうに頷き、


「ちなみに応援団についてだが、まだ達樹は加入継続ということでいいんだな?」

「……学園内で、舞桜に色々と干渉する気だな?」

「協力者という呈ならいいんじゃないか?」


 なんというか、懲りてない――達樹は深いため息を共に、授業に出るべく静かに立ち上がった。



 * * *



 ――とある研究室。舞桜に干渉する女性研究員の部屋に、来客が。


「つまり、ここまでは予定通りだと言いたいわけですか?」


 地味な印象の男性は、椅子に腰掛ける女性に対して問い掛ける。


「予定通り、とまではいかないわね。正直な話、今回の件で私達の目的を達成できる可能性もあったわけだし」

「……俺は、あんたらからその目的については何も聞かされていないんだが」

「あら、そうだった?」


 とぼけるように小首を傾げる女性。それに男性は短く嘆息し、


「まあいいさ……で、俺は次どう動けばいいんだ?」

「確認だけれど、あなた父親はいいの?」

「どう足掻こうとも、元に戻ることはできない。なら、とことんまで前に進むだけだ」


 男性の言葉に、女性は口を歪ませ笑う。目で「その意気」だとでも語っているかのようだった。


「わかったわ。ならもう少しばかり協力してもらうわ」

「次は何をすればいいんだ?」

「そう慌てなくてもいいわ。彼女だってしばらくの間は警察と連携して色々と行動するでしょうし、直接狙うのは危険」

「となると……」

「パートナーの話が浮上しているし、今度はその辺りが狙い目かしらね。けど……」

「けど、何だ?」

「単にけしかけるだけでは、おそらく意味はないわ。パートナーの候補になった人物と立栄さんはとある事件で今回の敵より遥かに強大な相手を倒している……だから」


 と、女性は含みのある笑みを見せた。


「少しばかり、やり方を変えることにするわ……こちらには、色々と策を用いる材料がある。特に、パートナー候補の人物にはね」

「わかった……その辺りは任せよう」

「……一応訊くけど、今も彼女のパートナーになりたい?」

「愚問だな」


 好戦的な笑み。それは、どういう意図で『救世主』に協力するのか、如実にわかる卑しい笑みだった。


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