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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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首謀者との対面

 舞桜は空間に突如できた亀裂を見て、叫ぶ。


「――すぐに退避してください!」


 直後、舞桜の言葉に対し周囲にいた人物が大きく引き下がった。同時白い亀裂がさらに広がり、一気に空間を侵食していく。


「これは……!?」


 中に閉じ込められた人物達が破壊を――察した直後、亀裂がさらに大きくなり結界の中から僅かに魔力を察知する。

 それは、ひどく感じたことのある魔力であり、誰が破壊したのか舞桜はすぐに察することができた。


 刹那、亀裂が一気に弾けとうとう結界の一部分が崩壊する。魔力が流れ、衝撃波が周囲に生じ、舞桜は結界を用いてそれを防いだ。

 そして、


「……やったか」


 達樹の声だった。それと同時に光が収まり、彼の姿が舞桜にも見えた。

 同時、目が合う。達樹は思わず名を呼ぼうとしたようだったが、すぐさま口をつぐむと、


「……立栄さん」

「こっちに!」


 指示に達樹は弾かれたように動く。それと共に彼の後方にいた――菜々子を始めとした面々も亀裂から抜け出してくる。

 次いで、その後方から黒き騎士が達樹たちへ迫ろうとする――が、それを舞桜は炎を放ち防いだ。騎士は魔法に直撃すると、あっけなくその形を消滅させる。


「……さすが、ですね」


 男性の声。見ると亀裂の奥に、騎士を率いる舞桜にとっては見覚えのない姿。


「……古閑七星さんですか」

「ええ」


 柔和な笑み。結界を破壊されたことや舞桜がここにいること自体は予定の範囲外に違いないのだが、それでも冷静さを保っているように見える。あるいは、単なるポーカーフェイスか。


「こうやってお話できるとは、予想外でしたよ」

「……ご自身がどうなるのか、理解はしておいでですよね?」

「ええ」


 あくまで余裕の表情。


「本来ならば、こうなった以上私は警察に捕まるでしょう……しかし、結界の一部分を破壊してなお私の結界が維持できている。これが何を意味するかわかりますか?」

「結界の中に閉じこもる気ですか?」


 笑みを浮かべる古閑。すると突如破壊された結界の一部分が、少しずつ光に染まり始める。

 このまま結界を再構築し、頃合いを見て逃げるつもりだろう――舞桜は察した直後、炎を発した。それは亀裂の中へと吸い込まれ、古閑の周辺にいた騎士を焼く。


「さすが立栄さんですね。あなた程の魔力は解析してもあまり効果がない……ですが」


 結界が少しずつ再構築されていく。もう一度結界を破壊することは可能だろうが、その間に彼には逃げられてしまうだろう。

 かといって――舞桜は周囲に目を移す。ここには教員を始め、一般的な学生もいる。ならば――


「祖々江君」

「は、はい!」

「私達を中心に魔力遮断の結界を張って!」


 理由を問う言葉はなかった。祖々江は即座に指示に従い――彼女の周囲に結界を形成させる。

 舞桜は一度大きく息を吸う。対する古閑は何をしようとしているのか予想できたのか、小さく笑みを浮かべた。


「修復しようとしている結界の穴から、強力な魔法を撃ちこもうとしているわけですね? なるほど、それなら私を倒せるかもしれない」


 両手を広げる古閑。その余裕に対し、舞桜は極めて冷静だった。


「……古閑さん」


 名を告げた瞬間、彼の所業を改めて思い出す。爆破事件を契機とし――無論、彼もまた『救世主』とやらの構成員であり、首謀者ではないはず。だがそれでも、彼のしでかしたことは許せない。

 だからこそ――舞桜は右腕に魔力を収束させ、業火を生み出した。


 その魔力は祖々江の結界により周囲にはほとんど漏れず――いや、多少ながら外に出たか驚く声が聞こえた。だが舞桜はそちらに反応せず、ただ古閑を見据える。

 彼は――先ほどまでの余裕とは違う、笑みを張りつかせていた。


「な……」


 呻き声。けれど舞桜は容赦なく魔法を放った。

 直後、結界内で業火が炸裂し、一気に古閑の下まで到達する。だが魔法は彼を狙ったわけではない。舞桜と彼の直線上に炎は舞わず、代わりに彼の背後と左右に炎は広がり――周囲にいた騎士たちを余すところなく消滅させていく。


「こ、れは……」

「――相手が、悪すぎたって話だな」


 声は、後方にいる祖々江からやってきた。


「古閑さん……あんたの技量じゃ、立栄さんをどうにかすることなんて、できなかったってわけさ」


 言葉の間にも業火は結界の中を蹂躙する。彼の背後は火の海と化し、さらに彼の左右には炎の壁が生じそれに触れれば焼き尽くされそうな程の凄まじい迫力が生じている。

 男性はそれらを見て――なおかつ騎士が一切合切消滅したのを見て、情けない声を上げた。


「……このまま結界を閉じれば、あなたは炎に飲み込まれます」


 舞桜が告げる。それに古閑は肩をビクリと震わせた。


「けれど、ご安心ください……これはあくまで魔法の炎であり、あなたを殺すことはありません。その代わり、炎に触れたのならどうなるのかは……少なくとも、健康体でいられる保証はないとだけ言っておきます」


 古閑は呻き――だが、一つだけ気付いたようで、眼を見開いた。

 唯一、舞桜の所――つまり、結界の外へ通じる道だけを空けている。逃げ道を完全に失くすのではなくわざと一つだけ開けることで、そちらへ誘導しようという策だった。


 それは紛れもない虎穴。しかしこのままではまずいと悟ったらしい古閑は、舞桜に対し決死の突撃を行う。その間に騎士を生み出し――舞桜はそれを一も二もなく炎で消し飛ばす。

 古閑を直接狙った魔法は全て騎士を盾にして防がれた。舞桜はなおも魔法を放つが、まだ結界内である古閑の騎士生成速度は相当なもので、全て瞬時に生み出された騎士によって阻まれる。


 だが、舞桜の目にも古閑の魔力が見る見る内に減っていくのが理解できた――だからこそ舞桜はなおも魔法を放ち古閑の魔力を減らす。

 そして古閑がとうとう亀裂を突破しようとした。その瞬間古閑はありったけの騎士を生み出し、物量で強引に舞桜たちを押しのけようと動く。


「立栄様――!」

「立栄さん!」


 三枝と祖々江が叫ぶ。だが舞桜は動かず、右腕に魔力を集め業火を放った。

 その時、横に気配――それが誰なのかを理解すると共に、舞桜は炎で消し飛ばされていく騎士たちを眺める。


 消滅していく騎士の奥で、古閑の姿が僅かに見える。驚愕により顔を引きつらせ、それでもここから逃れようと抵抗をはっきりと見せる。

 逃がさない――舞桜は心の中で呟くと同時にさらに炎の出力を上げようとする。だが、その寸前で気付いた。


 騎士たちの動きが変化している――それは古閑を守ろうとする動きだけではなく、散開しようとしている気配。

 舞桜は古閑が咄嗟に考え付いたのだと判断。周辺には達樹たち以外にもまだ人がいる。結界はあくまで魔力を遮断する程度なので騎士は突破できるだろう。


 もしこのまま騎士たちがバラバラになれば舞桜はそちらに魔法の出力を傾けざるを得ない。そして、舞桜の魔法を使ってさえ騎士はまだまだ健在――このまま散らばれば、対処できなくなる。

 まずいと悟ったと同時、古閑の表情が見えた。目論見が成功するという確信を抱いた笑み。舞桜はなおも炎を生み出しているが、騎士たちはそれを抜けて左右に展開しようと動く――


 そこへ、風と雷の魔法が騎士たちを迎撃した。


「こちらを――」

「忘れてもらっては困りますね!」


 菜々子と三枝の援護。だがそれでも騎士たちはまだ左右へ――


「このっ!」


 そこへ、今度は別の――応援団と思しき人物たちが援護に入った。さすがに菜々子たちのように一撃とはいかなかったが、それでも足止めに成功。次いで菜々子たちが魔法で倒す。


 それと同時、横にいた人物が舞桜の一歩前に出る――それは、達樹だった。


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