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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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罠と行動

 菜々子と三枝の突破力は相当なレベルであり、達樹がフォローを入れる役目だったのだが、実質ほとんど戦っていない状態となっていた。


(この調子なら、あっさりと突破できるかもしれない)


 そんな楽観的な考えさえ、達樹は頭の中に浮かぶ。

 後方にいる優矢たちも、祖々江のサポートにより事なきを得ている。廊下を進み階段を下り、このまま外に出ようとした――だが、


「うおっ……」


 達樹は呻く。建物の外には、先ほど見た騎士だらけの光景があった。

 無論、大半は幻影のはずだが――これを菜々子たちはどう対応するのか。


「三枝さん。私がやります」


 そこで菜々子が声を上げた。三枝もそれには従うらしく、一歩引き下がった。

 直後、建物から半身を出した菜々子に対し、騎士たちが仕掛ける。どうやら外に出た者を狙うよう指示を受けているらしい。


 魔力が渦巻いているため、どれが幻影でどれが本物なのかはまったくわからない――しかし、


「ふっ!」


 菜々子は極大の魔力を収束させた後、腕を振る。直後に放たれたのは、以前後援会の拠点を破壊したような熱波を伴う火炎魔法。閃光と炎が発せられ、建物入口周辺を一気に覆う。

 結界内なのでまったく容赦のない攻撃。なおかつ爆風については三枝が風できっちりとフォローを入れ、自分たちに返ってこないようにしている。連携は十分だった。


「後方からの敵はいなくなった……後は、ここを突破できるかだが」


 祖々江は口にしつつ前方を一瞥。粉塵などが舞い上がりしばし視界が効かない状況であったためか、結界を張り援護する。


 やがて、視界が開ける。そこには先ほどと比べて数を減らした騎士の群れの姿が。


「……残っているということは、こいつらは全て幻影か?」


 達樹が口にしたが、対する菜々子は「わかりません」と応じた。


「油断するべきではないでしょう。こちらの魔法に耐えうるような存在を生み出していてもおかしくない」

「だが、幻影には魔法が通用しない様子……進むのは大変そうだな」


 祖々江は結界を構成しながら告げる。語る間に、後方に騎士の姿が見えた。長時間ここにいると、間違いなく挟撃される。

 彼の結界がある以上、挟まれても耐えうることは可能なはずだが、さすがにこの状況で身動きが取れなくなるのもまずい。決断しなければ――


「私が、吹き飛ばすわ」


 今度は三枝の発言。


「外に出た直後、風の魔法を利用して周辺の敵を吹き飛ばす。幻影がどういうアクションを起こすかわからないけど……物理的に反応がないようなら、その敵は幻影で害はないと考えればよろしいのでは?」

「ま、それが無難か」


 祖々江は同意するような言葉。ならばと、達樹も頷いて同意の意を示した。


「なら、それでいこう……外に出たら端までいって結界を破壊するわけだが……ここからは一気に行こう。いいか?」

「私は構いません」


 菜々子が同意。他の面々も各々同意の言葉を口にし――三枝が魔力収束を始めた。


「タイミングは三枝さんに任せる」

「ええ」


 背草は祖々江の言葉に応じると共に、菜々子と三枝が構える。もし何かあればフォローできるように達樹もまた彼女たちと共に拳を構え、三枝が先んじて動いた。

 一歩外に出た途端、騎士が襲い掛かってくる。入口を包囲するように群れを成し、これが全て本物であれば相当厄介だが――


 三枝の魔法が発動する。旋風が入口を始点として吹き荒れ、攻撃しようとしていた騎士全てに襲い掛かる。

 直後、変化が起こる。幻影も多く含まれているはずの騎士たちだが、魔法によって生み出された風に従い大きく吹き飛んだ。その光景からは本物と偽物の区別はつかない。


「さすがに幻影は本物と同じような動きをみせますか」


 三枝は呟くと同時に菜々子を一瞥。


「私が騎士を散らします。あなたは魔法を撃ちこんで迎撃してください」

「はい」


 役割も決まり、二人は外へと出る。続いて達樹と祖々江。さらに応援団のメンバーが外に出て、一路結界の端へと進む。

 周辺にいた騎士が襲い掛かる。だがその多くを三枝の風が吹き飛ばし、そこへ容赦なく菜々子が魔法を撃ちこんでいく。中には魔法をすり抜ける騎士がいるのだが、それは間違いなく幻影だろう。


 後方はというと、そちらも基本三枝の風がフォローする。だがやはり漏れてしまうのは仕方がなく、そこに祖々江の結界や優矢を始めとした応援団の魔法が炸裂する。

 連携としては中々のものであり、達樹も接近しようとする騎士を適度に跳ね除けるだけで事足りた。


 これなら端まで到達するのにそう時間はかからない――そう達樹が感じた時だった。


 前方に、またも黒い騎士が見えた。ただしそれは他の騎士と比べてもずいぶんと大きく、二階建ての建物くらいの高さを持ち――


「おい、とんでもないのが出たぞ」


 優矢が気付き口を開く。見た目は他の黒き騎士と変わらないが、その大きさから巨人とでも言うべき存在だった。


「あれは近づかれたら終わりだな……どうする?」


 祖々江が問い掛けると、菜々子が手を上げた。


「私に任せてください」

「倒せるか?」

「できるできないではなく、やらなければならないと思います……火力的なものは私がこの中で一番上のようですし、それに三枝さんや祖々江さんは皆さんを守るよう魔法を使い続けるべきです……私が一人で倒します」


 確固たる言葉。同時に魔力が体が滲み出る。


「間近まで迫られると厄介です。私が単独で戦います。三枝さんや祖々江さんは皆さんを守ってください」

「援護なしで大丈夫なのか?」

「ご心配なく……危険があればすぐに退避します」


 祖々江の質問に答えた後、菜々子は走り出す。彼女の火力であれば十分倒すことは可能だろう――だが、

 そこで達樹はこの混沌の中で改めて思い出す。敵の目的。


 その狙いは舞桜に近しい人――そういう推測をした。


(これは、まさか……)


 敵の計略にはまったのではないか。だがこの場であれを一気に倒せる可能性があるのは彼女くらいのものかもしれない。

 達樹はここで選択に迫られる。菜々子を単独で進ませるのか、あるいは援護に回るのか。達樹が出張ってどうにかなるような相手なのかはわからない。けれど以前の事件の舞桜のように対策を立てられている危険性もある。もしそうなら――


 菜々子は突き進んでいく。それほど経たずして交戦を開始するだろう。決めるなら今しかない。

 そう思った直後――達樹の体は、勝手に動き始めた。


「――おいっ!?」


 優矢の声。だが達樹はそれを無視し菜々子へと走った。

 その動きはおそらく菜々子にも伝わったらしく、一瞬彼女は後方に首を向けそうになった。だが、目の前の相手を注視すべきという判断からか、結局を振り返る事はなく直進した。


 巨人と菜々子が接近する。罠などないのか達樹はどこまでも警戒し――そして、


 いよいよ菜々子が魔法を放とうとする段階となった時、巨人は彼女に相対するべく拳をかざし、真正面から戦う動きを見せる。

 だが、その時――達樹は一つ気付いた。


 結界内は魔力がずいぶんと拡散しており、魔力探知が非常にし難い状況だった。だからこそ視界に頼る面が強くなっていたのだが――視界に入れることができなかった場所に、達樹は敵の存在を感知した。


(隠れていた……!)


 なぜ気付けたのかは、達樹自身もよく理解していない。だが間違いなく近くに敵がいると断じ、増幅器により魔力を噴出した。

 刹那、菜々子が動く。それに加え達樹が彼女の後方に到達し――両脇から、隠れていた騎士が躍り出た。


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