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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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学園へ

 達樹たちが結界の内に取り込まれた段階で、舞桜は警察署にいた。目的はまだ全容がつかめていない寮爆破事件の対策について。また関石たちの行方も捜索することになり、一連の出来事に対する方針を決定したところだった。


「立栄君はどうする? 一度家に戻るか?」


 早河は舞桜にペットボトルのお茶を渡しつつ問い掛ける――場所は喫煙室が近くにある休憩スペース。自販機が存在し、早河は缶コーヒーを手にしている。


「そうですね。少し疲れましたし……」


 キャップを開けつつ舞桜は応じる。


 ひとまず、自宅には手紙が送られてきただけで今の所変化がない。騒動が起きているような状況で、手紙の主も家に向かうなどすれば警察に捕まる可能性があるなどと考えているのかもしれない。

 ともあれ、事件はまだまだ分からないことも多く、行動しようにも選択の幅が多く逆に困るような状況。舞桜としてはひとまず警察と協力し、事態の解決に当たることしかできないが――自分が狙われているのに、そう危機感を抱いてはいなかった。


(この原因は……)


 もしかすると、協力してくれる人がいるとわかったためなのかもしれない。


 達樹が関わったとある研究者の暴走とでも言うべきあの事件まで、舞桜は一人で戦っていた。それに不満は決してなかったが、一人であるが故に張りつめた心境を抱いていたのもまた事実。しかし、今回は違うのだが――

 それでも誰かと共に戦うこと自体不安も大きい。菜々子を傷つけてしまった事実は舞桜の心の中にこびりついている。これを打ち払わなければきっと前には進めないだろうし、共に戦うことを心の底から同意できないかもしれない。


(結局、後は私自身の問題なんだよね……)


 警察は達樹にパートナーの要求をしたように、舞桜を一人にさせるわけにはいかないという意見で一致しているのは間違いない。だからこそ、舞桜の決意で決まると言っても過言ではない。

 早河などが一切言及しないのは、きっと舞桜の決断を待っているのだろう――それが少しばかり申し訳なく思いつつ、舞桜はお茶を飲みつつ考える。


「しかし立栄君。学校の方は大丈夫か?」


 ふいに早河から質問が飛ぶ。それに舞桜は首を傾げた。


「大丈夫か、とは?」

「学業の方だよ。最近ずいぶんと警察に来てもらっているからね。仕方がないとはいえ、私達のせいで成績が下がってしまうのは忍びない」

「大丈夫ですよ。成績は維持しています」


 魔法以外の面でも、舞桜自身成績はかなり良かった。だからこその総合一位であり、また過去にもこうして事件に関わり長期間学校に思うように行けなかったこともあったが、結局成績は維持している。


「その辺りは心配しないでください。あ、もしそういうので色々問題が出たら相談しますね」

「わかった……とはいっても、成績不振で仕事ができないとなるとこちらとしても対策を講じなければならないな……もう少し、君に頼らない態勢を整えなければ」

「期待していますね」


 微笑する舞桜だったが――そうなっているのも当然だと舞桜は思う。


 そもそも魔法使いを養成するのだって相当な期間を要する上、この光陣市は魔法に関連する機関が大量に存在している。もちろん警察に魔法使いがいないわけではないし増幅器などを使って対策も講じているが、慢性的な人手不足は否めない。

 それを少しでも是正しようと、舞桜が動いている。その戦闘能力により、舞桜は警察でも難事件を解決してきた。達樹も関わったあの研究所についてもそうであり、ああした事件がこれから発生するかもしれないという現状を鑑みれば、舞桜の存在は必要だと考えていることだろう。


「さて、私達はもう少し話し合いを続けるとしよう……立栄君。また何かあったら連絡する」

「はい、わかりました」


 舞桜は携帯電話をポケットから出して時刻を確認。頃合いだと思い、なおかつ今日も授業に出れなかったのがちょっとばかり寂しくも思い――その時だった。

 一人の警官が、慌てた様子で早河の所に駆けてきた。舞桜はもしや犯人が――と思い小声で会話する早河たちを観察。


 すると、彼の顔が見る見る内に険しくなっていく。


「本当なのか? それは――」

「はい、先ほど連絡があり、避難を――」


 どうやら大事の様子――舞桜もまた顔を引き締め待っていると、会話が終わり警官が慌ただしくこの場を去る。


「……立栄君」

「はい」


 返事をしたと同時に、早河の口から予想外の言葉が飛んできた。


「すぐに、学校に向かってくれ」

「え?」


 聞き返す舞桜。すると早河はなおも表情を変えないまま、


「光陣学園で……とある校舎が魔法によって覆われているらしい。しかも記録では、笹原君などが所属する同好会が、その校舎の教室を借りていたらしい――」


 途端、舞桜の背筋に冷たいものが走る。

 もしや敵は自分ではなく――そう思ったと同時、舞桜は脇目も振らず走り始めた。


「私達もすぐに後を追う!」


 後方から早河の声が聞こえた。けれど舞桜はその言葉に応じることもなく、警察署を出るべくひたすら走る。


(菜々子……達樹……!)


 不安が押し寄せてくる。同時に舞桜は一つ悟った。

 敵はどうやら方針を転換した――いや、罠などのことを考えれば、元から舞桜を狙って行動していたわけではないのかもしれない。


 最大の問題は、主犯者がどの程度まで舞桜のことを知っているのか。さすがに応援団を罠にはめるために結界を用いたとは考えにくい。十中八九達樹か菜々子か――どちらかと舞桜が関係しているとわかった上で行動している可能性が高い。


(もしそうだとしたら、敵の狙いは間違いなく――)


 状況はどう転ぶかわからない。応援団が校舎の教室を借りた上で襲撃を受けたのだとしたら、菜々子か達樹がその場にいるだろう。もし菜々子がいた場合、同行者として祖々江や三枝がいるはず。そうした面々の戦闘能力を考えれば、敵の罠を突破しそうな雰囲気もある。


 だが――公になっていない菜々子か達樹について知っているのだとしたら、当然親衛隊所属の三枝や、色々と情報収集していた祖々江の能力についても知っている可能性がある。情報を集めたうえで仕掛けたのならば、菜々子たちの実力を破る力を持っている手段を保有した上で結界を構築しただろう。


 警察署を出て、なおも舞桜は走る。身体強化魔法を活用し、跳ぶように学園へ駆ける。

 移動速度から、それほど経たずして学園には到着する。なおかつ結界が生じているのなら気付くだろうし、即座にそこへ向かい外から結界を破壊すればいい。


 警察署に連絡を受けた段階でどの程度時間が経っているのかわからないが、そう長い時間というわけではないはずだ。今から急行すれば、怪我なく達樹たちを助け出すことは十分可能だろう。

 そう思い、さらにギアを上げようとした――その時だった。


 突如、ゴウン――と、どこから重い音が聞こえてきた。決して日常の中で聞こえるようなものではない。何事かと思い立ち止まった瞬間、携帯が鳴った。

 何が、と思った直後今度は背後から気配。即座に振り向くと、そこには――


「な……」


 達樹と関わった事件――その最中に遭遇した黒い騎士が、いつのまにか立っていた。


「まさか……」


 警察が監視されていて、舞桜が外に出たタイミングで――先ほどの重い音もおそらく警察を混乱させる意図があるのではないか。携帯は、その連絡だろう。

 後続から似たような騎士が続々と現れる。こんなことをすれば大騒動に発展する。しかしそれにも関わらず敵は仕掛けてくる――最早、手段は問わない状況。


「……さすがに、放っておくことはできないか」


 苦虫を潰すような口調で舞桜は語り、そして、

 眼前に見えた騎士たちと、交戦を開始した。


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