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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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襲い掛かる敵

 黒い騎士が動き出した直後、それにいち早く反応したのは達樹だった。


「――お」


 声と共に、足を踏み出し黒い騎士に立ちはだかる。この場にいた優矢や、三枝に祖々江――彼らは唐突に現れた黒い騎士がどういった存在なのかを判別できないため、対応が遅れたと見て間違いない。さすがに建物から出られないという異常事態から味方などでないことは百も承知のはずだが、それでも体が硬直するのは仕方がない。


 その一方で、達樹は目の前の存在がどれほど厄介なのか深く認識していた――だからこそ、動く。

 黒い騎士が腕を振る。見れば腕の部分は鋭く刃のようになっている――それを達樹は、増幅器の自動防御で弾いた。


 同時、達樹はさらに間合いを詰め拳を放つ。右腕に魔力を込め、黒い騎士の胸部へと打ち込んだ――結果、騎士は吹き飛びその最中に体が砕けていく。

 そして塵すら残らず騎士が消える。


 やった――達樹が心の中で呟いたと同時に、祖々江が声を上げた。


「な、何だ今のは……?」


 驚愕の声。達樹は無理もないと思いつつ、行動するべく優矢たちに口を開く。


「優矢、部屋に戻ろう。あちらももしかして――」


 交戦しているかもしれない――告げようとした矢先、轟音が発生した。方向は、借りていた教室のある――


「くっ!」


 優矢が走る。次いで祖々江と三枝も状況を理解しそちらへ走り始めた。

 直後、三人を阻む存在が現れる。教室からすっと出現した――騎士。


「こいつら……!」

「どけっ!」


 祖々江は優矢に呼び掛けると同時に、先頭に出た。それと共に拳を振りかざし、魔力を収束させる。

 騎士もまた動く。刃状となった腕を振りかざし、祖々江と対抗。拳と刃が激突し――


 祖々江の拳を腕を破壊。騎士を押し潰した。


「まったく……ここに来て敵襲ってわけか」


 祖々江は歎息を交え語る。それに反応したのは、優矢。


「ちょ、ちょっと待て。敵襲って――」

「たぶん俺達が調べ回っていることを察した誰かが仕掛けたんじゃないのか? よっぽどやばい虎の尾を踏んでしまったみたいだな」


 吐き捨てるように呟いた祖々江。優矢がいる手前語ってはいないが、寮の爆破事件とも関連している――そう彼は認識しているに違いない。

 三枝もそれを理解しているのか、無言ながら深刻な表情を見せている。


「ともかく、今は合流しないと――」


 祖々江がさらに言いかけた直後、新たな騎士が教室から出てくる。気配などほとんどない騎士。達樹たちからすると、教室から湧き出たようにすら感じられる。


「これは……」


 そこで達樹は背後が気になり振り返る。そこには挟撃するような形で同じような騎士が。

 以前遭遇した重騎士はいないが、それでも挟まれているということで少なからずプレッシャーを感じる。


「……やれやれ、厄介な状況だな」


 祖々江はそう告げると、教室方向にいる騎士を見据えながら告げる。


「ひとまず、対応するしかなさそうだ……だが、どうする?」

「まずは合流しないと」


 発したのは、三枝だった。


「先ほどの音はおそらく笹原さんが戦っている音のはず……彼女の能力や他の二人が組めば、敵にも十分対応できるだろうからそう心配はしなくていいはずだけど……分散しているのはまずい」

「そういうことだな……よし、行こう」


 祖々江は三枝に続いて発言した後、視線を達樹に向けた。


「西白君は、直接攻撃がメインか?」

「まあ、そうだけど」

「なら三枝。彼の援護を」

「仕切らないでください」


 そうは言うものの、三枝は指示に従う気なのか達樹と隣へと移動する。


「俺はこっちかな」


 優矢は祖々江の隣に立つ。これにより、二人ずつが背を守るような形となる。


「敵はどうやら、この廊下で決着をつける気らしいな」


 祖々江が発する。その間にも、達樹の視界にはさらなる増援が出現する。


「俺は戦況を見て前進するかの判断をする。ある程度敵がいなくなったら指示を送るから、それに合わせて三枝たちもついてきてくれ」

「……わかりました」


 三枝が指示に従い――同時、達樹の正面にいる騎士が走り出した。

 交戦開始――達樹が判断した直後、三枝が先んじて動いた。


 右腕をかざし、発したのは風。それが迫りくる騎士達に直撃し、後方へと吹き飛んだ。

 さすがだと達樹が思うのと同時に、達樹たちの背後から轟音が。


 一瞬だけ振り向くと、祖々江が光をまとい騎士を拳で吹き飛ばしている所だった。


(直接攻撃を得意しているのか……)


 達樹と同類だとも言えるが、威力的に間違いなく別物だろう。

 視線を戻し、さらに騎士が出現しているのに気付く。だがそれを三枝は風により吹き飛ばし、一部を消していく。


 だが、騎士の中には前方の騎士を盾にして風を防ぎ、強引に突破してくる輩もいた。それを達樹が阻み、接近して拳を打ち込んでいく。

 そこで三枝を一瞥。心なしか達樹の行動に興味を示しているような素振りもあったが――感情を押し殺しさらに風の魔法を放った。


 急場ではあったが連携が功を奏し、後方からは「前進する」という声が聞こえた。それに応じ達樹と三枝は祖々江たちの全身に合わせるように後退。襲い掛かる敵を迎撃する。

 敵の数は際限なかったが、それでも達樹たちが撃破する方が早く――程なくして教室に到達した。


「笹原!」


 祖々江が呼び掛けたと同時に達樹は室内に視線を移す。そこには、


「そちらは、大丈夫ですか?」


 雷撃により騎士二体を吹き飛ばしながら、問い掛ける彼女の姿があった。

 羽間と土岐も構えてはいたが、顔の動揺から、十中八九菜々子一人で対応していたのだと達樹は直感する。


「ずいぶんとまあ、派手だな」


 祖々江は告げると同時に廊下に視線を送る。


「まだ騎士はいるな……とはいえ、合流した事で相手もやり方を変える気なのか、動きを止めているな」

「牽制のつもりでしょう。おそらく、使える駒にも限りがある」

「何?」


 祖々江が聞き返すと同時に、菜々子は窓のある方向を指差した。


「既に、囲まれています」

「な……?」

「ただ、気配が妙に少ないのでおそらく大半は幻影です。とはいえ上からはどれが本物でどれが偽物なのかわからないので、窓から外に抜け出るのは危険です」


 達樹は廊下を一瞥し騎士が来ないことを確認した後、窓に近寄って下を眺める。そこには、


「っ!?」


 幻影だとわかっていても呻いた――それこそ、地面を埋め尽くす程の漆黒が存在していた。


「なるほど、な」

「本物ではなく幻影を使っている以上、兵力にも限りがあるということです」

「ずいぶんと冷静だな、笹原さん」


 はあ、とため息をつきつつ、なおかつ廊下に視線を送り祖々江は言う。


「まあいいさ……敵の狙いが何なのか俺にもよくわかっていないが、少なくともここにいる誰かなんだろうというのは予想できる……で、この窮地をどう脱する?」

「私達が取れる脱出方法は二つでしょうね」


 三枝が言う。


「一つは、構築されたこの結界空間を破壊すること。そしてもう一つは、この場にいる魔法使用者を倒すこと」

「ここにいるのか? 使い手が?」


 優矢が問い掛けると、三枝は頷いた。


「間違いなく、います。結界を構築するだけなら外側からでもできますが、騎士がこちらを警戒し立ち止まっている……これはつまり、操作している人間が私達を見て警戒した証拠」

「なら、その二つから決めないといけないな……対応策を」


 祖々江が語る――達樹たちは、知らずして窮地に追い込まれたようだった。


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