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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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突然の対峙

 達樹はその後野乃の家で夕食をとり、寮へと戻った。本来なら注意を受けるような時間だったのだが、事前に警察辺りが連絡しておいてくれたのか、咎められることはなかった。


 そして翌日。達樹は連絡が来るまで待機ということで日常に戻る。今日も学園には舞桜は来ていないらしい。おそらく警察署で色々と打ち合わせでもしているのだろう。

 そちらも気になるが、達樹としてはもっと気になることがある――パートナーの話だ。


「うーん……」


 昼食時、優矢を待つ間に達樹は一人唸る。


 達樹自身、パートナーとなることを表明している。不安要素もあるが、警察の早河自身が言い出したこともあるし、自分なりにできることはある――と、好意的に考えてはいる。

 とはいえ、実力を考えれば菜々子を始めとした面々がいいわけで――ただ、早河が達樹にパートナーと言い出した以上、実力的な要素によって必ずしも決定するわけではもちろんないだろう。


 警察としては、菜々子を除いた二人については評価ができないというのが実状だろう。何せ警察は彼らとほとんど縁がない。ただ今後彼らが色々と警察に関わり、信用を得た場合は達樹よりも――と、評価が変わる可能性もある。


 むしろそうなれば、圧倒的な差をつけられている達樹の出番はないだろう。


「実績、か」


 利があるとすれば、事件に協力したという事実。達樹としても一応それなりに活躍したのではと思っているが、果たして――


「何か、悩み事か?」


 優矢が来た。達樹は「まあな」と返しつつ、机の上で腕を組む。


「なあ優矢……立栄さんについて、何か情報はあるか?」

「どうした? 急に?」

「いや、親衛隊の人が何かしら動いているみたいな話をチラッと聞いたからさ」


 三枝のことを引き合いに出してみる。すると優矢は「ああ」と呟いた。


「それなら知っているよ。リーダー格である三枝さんが一騒動起こしているらしいな」

「一騒動……?」

「ああ。彼女はどうも親衛隊を辞めるとかなんとか」

「え、何で?」

「親衛隊ではなく、彼女のパートナーとなるために、らしい」


 公言しているらしい。ただそれは、当然騒動になるだろうと理解はできる。


「親衛隊は、あくまで自主的なものかつ、学園にいる立栄さんを守る存在……それ以上の関係へと踏み込むためには、親衛隊を辞め動く必要がある……三枝さんも、それは理解していたらしいな」

「……それ、大騒動になっているんじゃないのか?」

「言う程大変なことにはなっていないらしいけどな……祖々江滝司が色々と干渉したことにより、思い立ったのかもしれないな」


 祖々江の名前が出た。そのため、達樹も話の軸を移す。


「祖々江……彼と三枝さんがにらみ合っている所に、立ち会ったよ」

「お、そうか……彼に触発されたのかもしれない。ま、どちらにせよ俺達にとってはあんまりいい話じゃなさそうだけど」

「何で?」

「だってパートナー云々が決まるとなれば、親衛隊すらもおいそれと近づけない可能性が出てくる……応援団も、おそらく同じようになるだろう。そうなれば、立栄さんが今より遠い存在になる」

「……仮に、祖々江がパートナーとなったら、騒動になりそうだな」

「奴がパートナーになること自体、ゼロだと思うが」


 店員が持ってきた水を口に含みつつ、優矢は語る。確かにそうかもしれないが、ああやって表明し、昨日色々あって舞桜と警察で接した以上、絶対にないとも言い切れなくなった。


 達樹自身、舞桜のパートナーとなるためには、彼らが今以上に行動を起こす前の方に警察にプッシュするのがいいかもしれない。早河は達樹に対し事件解決などにより一定の信頼を持っているからこそ話を持ちかけた。しかし、他のメンバーが同様に信頼されるようになれば――


(といっても、焦ってパートナーとなっても意味はないよなぁ)


 結局、舞桜のサポートをきちんとできるかどうかにかかっている。そこを取り違えると、中学の時怪我をした菜々子のようになってしまう可能性もある。それは舞桜にとっても、警察にとっても望まない結果であり、避けるべき事。


(ま、しばらく様子を見るか……)


 そう決断した時、大通りにある人影を見つけた。視線を向けているのに優矢も気付き、首を向ける。


「……変わった取り合わせだな」


 優矢がコメントを行う。確かに祖々江と三枝――さらに菜々子までいるとなると、事情を知らなければ目を見張っても仕方がない。


(……警察の指示に従っているにしても、変に目立つな)


 警察も、そうしたことまで頭が及ばなかった――というより、単独行動させるのと天秤に掛け、三人で行動させた方が良いという結論なのかもしれない。


「よお、三人とも」


 横を通り過ぎようとした彼らに優矢が声をかける。それに反応したのは、菜々子。


「どうも」

「変わった二人と一緒だが、何かあったのか?」

「ま、ちょっとね」


 祖々江が言う。それに引っ掛かりを覚えたか、優矢は眉をひそめた。


「ちょっと、か……もしや、三人で噂の寮でも突撃するのか?」

(……優矢も知っているのか)


 達樹はちょっとばかり驚いていると――三枝が返答した。


「噂の出どころを調査しているのですよ」

「噂の? でも、このメンバーは何だ?」

「私は親衛隊とは別に行動しようと思い、色々調べていた時、彼が無理矢理同行したのです」


 彼女は説明する――ひどく慣れきった口調。もしかすると朝からこうやって行動していたため、幾度となく訊かれこうやって言い続けてきたのかもしれない。


「彼女は俺と組むのを拒否していたんだが」


 祖々江が言う。調査に無理矢理同行――矛盾の無い理由を、三人で打ち合わせていたのだろう。


「で、私も同じように調べていたのですが、なぜか二人と組むことに」


 そして菜々子。優矢は「なるほど」と答え、


「そうか……えっと、笹原さん。現状としては、どんな感じだ?」

「まだ調べ始めた段階ですよ」

「……ちなみに寮なんだが、何か騒動があったらしく封鎖されているんだが、それは知っているのか?」

「……知っていますよ」


 情報が早いと達樹は思いつつ、優矢たちのやりとりを聞き続ける。


「なるほど、理解した……ここで一つ提案なんだが」


 と、優矢は突然言い出した。


「俺達も、それに協力してもいいか?」


 ――突然、こいつは何を言い出すのか。


 達樹は心の中で呟き、優矢に真意を訊こうとした。すると、


「なぜ、突然そんな提案をする?」


 不審げに祖々江が問う。それに優矢は笑みを浮かべ、応じる。


「いやあ、実は応援団を公認してもらおうかと、色々考えていたんだが――」

「公認、ですって?」


 三枝がやや喧嘩腰。それを優矢は手で制する。


「話は最後まで聞いてくれ。もちろんそれが難しい、というより不可能に近いことはこっちもわかっている。だけど、それで全てあきらめきれるというわけじゃない。せめて、事件解決に貢献して、ちょっとばかりお近づきになろうかなとか考えているんだが」


 三枝が険悪な表情となるに次いで、祖々江は菜々子に視線を送り、


「なんだか、君が所属する人物はずいぶんと大胆だね」

「……どうも」


 菜々子としても困惑顔。だが当の優矢は意を介さない様子。


「とはいえ、そっちの面々だって情報は無いに等しいわけだろ? でも、こちらはちょっとした情報を持っている」


 その言葉に、三人の顔色が変わった。


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