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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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事情聴取

 達樹や菜々子だけならどうにかなったのだが、さすがに親衛隊とあまり親交の無い男子までいるとなると、話すのにもまず順序が必要だった。


(まずは……)


 舞桜は思いながら扉を見る。今いる場所は会議室として使われている部屋であり、舞桜が了解を得て許可を得た部屋でもある。

 やがて扉が開く。まず姿を現したのは、三枝。


「……立栄様」


 声を上げる。舞桜はそれに対し彼女と目を合わせ、


「座って」


 席の対面を指差す。三枝は小さく頷き、そこに着席した。


「まずは……そうね、三枝さんがあの寮に赴くまでの経緯を話してもらえるかな」

「はい」


 返事は明瞭。そこから、彼女の説明が始まった。


 彼女を最初に呼んだのは明確な理由があった。菜々子はどうやら現場に居合わせたといっても直接巻き込まれたわけではないし、祖々江という人物と直接話すにしても舞桜自身彼に対しどう接していいかわからない。達樹という手もあったのだが、彼には別に考えていることがある――そういうわけで、三枝を呼んだ。


 パートナーとなる、という風に表明した以上、三枝自身少なからず舞桜に信頼を抱いているのは事実。ならば事情を把握し、なおかつ嘘を言うこともないだろうということで、彼女を選んだ。


「――そして、爆発に巻き込まれました」

「ピエロのお面、か」


 最後の最後で――茶化すような態度を示す以上、噂話に乗せられてノコノコ来る馬鹿者、などと言いたいのかもしれない。


「……状況は、わかった。ちなみに噂の出どころについては?」

「それは、私もわかりません。私としても又聞きも良い所なので……」

「信憑性は薄い、と言いたいの? けれど三枝さんは、あの場に居合わせたのよね?」


 詰問しているわけではないのだが、どうしても強めな口調になってしまう。質問に三枝は、首をすくめた。


「も、申し訳――」

「怒っているわけではないの。その、三枝さんは親衛隊の中でも冷静でしょう? 信憑性の低い噂話なんて「放っておきなさい」と言って終わりだと思っただけ」


 実際、彼女は舞桜自身に明確な敵意を表さない限りは基本関わらないスタンスだったはず。さわらぬ神に崇りなし、という態度が主だったもので、むしろ彼女はストッパーだったはずだ。


 舞桜の質問に一度三枝は視線を落とす。そして、


「……焦って、いたのかもしれません」

「焦る?」


 問い返した舞桜に、三枝は顔を上げ、さらにすまなそうな顔をしながら口を開いた。


「パートナーとなる、ということを表明したかと思います」

「……ええ」

「私自身、以前からそのように考えていたのは事実です。それに際し、祖々江という方の出現や、噂話のこともあり、私自身パートナーとなるには、立栄様に認められないと、と思うようになりました」

「それで、今回の件に?」

「はい……その、立栄様に害をなす人物を捕まえることができたのなら、少しは貢献できたかなと……」


(つまり、私と組むことに対する手土産、といったところか)


 実際捕まえた場合どうするかわからないが――祖々江といった存在もあり、普段性急に行動しなかった彼女が慌てた、という事実はあるのかもしれない。


「なるほど……わかった」


 舞桜としては一言添えておく必要があると思い、口を開く。


「今回の件は私が大いに関わることだから、思う所もあったようだけど……私としては、できれば相談して欲しかった」

「申し訳ありません……」

「それと、パートナーのことについては正直どう転ぶかまったくわからない。これについては何も言えないちうのが実状。それは、よく理解しておいて」

「わかりました……ただ」


 と、三枝は決意を秘めた瞳を伴い、


「パートナーとなることについては、あきらめていませんから」

「……わかった」


 それで会話は終了。続いて祖々江を呼んだ。少しして現れた祖々江は、少しばかり緊張しているようにも見受けられた。


「……どうも、立栄さん」


 他の三人と違い、舞桜にとってはあまり親交のない人物。とはいえまずは、事情を訊くべき。


「まずは、あなたが今回の件に関わった経緯を教えて」

「……三枝さんから聞いていないんですか?」

「あなたが関わった所から、あなたの視点で話をして欲しいの」

「なるほど、わかりました」


 彼は丁寧に話し始める。経緯自体は三枝とさして変わっていないのだが――舞桜にとって一つ疑問があった。


「えっと……なぜあなたは応援団のメンバーに干渉を?」


 一通り聞いた後で、舞桜はその点について尋ねる。


「彼らが何か情報を持っていると思ったの?」

「……白状すると、立栄さんと深い関わりがある人物がいるのではと思ったんです」


 その言葉を、祖々江はため息を漏らしつつ告げる。


「確証がある話ではなかったんですが……その、あくまで勘ですけど、あなたと交友関係のある人物が親衛隊云々ではなく、応援団のように別で活動しているのでは、と思いまして」


 ――鋭い、と舞桜は思ったが、ポーカーフェイスを維持し心情を露見されないようにする。


「親衛隊はお近づきになれる変わりに、色々と制約があるので、もしあなたと親しい間柄の人間がいれば、そちらの方かと」

「そういう人達を見つけたとして、あなたはどうしようと思ったの?」

「いや、その……決して脅そうとか、そんな馬鹿な真似をするつもりはありませんでした。ただ俺は、あなたと関われる機会がなかったので、そういう関係でお近づきになれるかなと思いまして」

「……学園内で、私のことを色々と聞いて回っていたようだけれど」

「最初、パートナー云々のことを表明しようとして探していたんですけど、親衛隊の硬質な態度などを見て、下手に接触すると騒動が起きるかなと……で、方針を転換し、居場所がわかった応援団のメンバーの彼と接触したというわけで」


 そこで、彼は頭をかいた。


「会話をして思わせぶりな態度を示せば何かしら親交の関わる話が聞けるかなと思ったわけで……深く詮索しようとしたことは謝ります」


 頭を下げる。その態度がずいぶんと殊勝で、気配もずいぶんと穏やか。おそらく嘘は言っていないだろう。


「……なるほど、わかった。私としては基本、そういうことに関してやめろと指示をするつもりもない。けれど、学園内で色々と問題を起こすのだけは、やめてほしい」

「仰る通りです。重ね重ね申し訳ありませんでした」


 再度頭を下げる彼。このくらい言っておけば大丈夫だろう――そう舞桜は思いつつ、さらに続ける。


「パートナー云々については、白紙の状態で何も言うことはできない。それについては申し訳ないけれど……」

「いえ、わかっています。これ以上その点について言及するつもりはありません……が、一つだけ」


 と、彼は三枝と同様強い瞳を見せ、


「――あきらめてはいませんから」

「……わかった」


 舞桜の返答を聞いた後、彼は部屋を出た。そこで舞桜は小さくため息。


「さすがに理由は……訊けないよね」


 なぜそこまで――訊いてしまうと何やら厄介なことが待っている気がして、結局そこまで追及することはできなかった。


「でも、ひとまず釘は刺しておいたから……分別はつくような雰囲気だし、これで二人は大丈夫か」


 舞桜は断じると一度深呼吸をした後、次に菜々子を呼ぶことにした。


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