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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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パートナーについて

 日町の言を聞き入れ舞桜は菜々子を電話で呼んだ――あの事件以来会っていなかったため電話を握るのにも少し緊張してしまったくらいなのだが――結果、菜々子は固い声ながら承諾し、家を訪れた。


 けれど、予定外の人物まで一人。日町の言葉もあったため変に意識しないように努めつつ、口を開いた。


「……なんで達樹が来るの?」

「いや、実を言うと俺自身もよくわかっていないんだけど……」


 頬をかきつつ困惑しながら応じる達樹。その視線は無言で佇む菜々子に注がれている。

 菜々子を呼んだ結果、なぜか達樹までついてきた。彼によると「菜々子に言われ」とのことだが、そもそもなぜこうして二人でいたのかも疑問に思う。


 そして菜々子は、どこか肩を怒らせているようにも見えた。それがどういった意味合いなのかわからないのだが、負の感情である以上あまり良い話題ではないと思った。


 とはいえ、まずは根本的な疑問から――舞桜は思い二人へ尋ねる。


「というか、何で二人が?」

「いや、実は警察で――」

「警察?」


 達樹の返答に眉をひそめる舞桜。二人が警察に厄介になるとは思えなかったため、一体何をしていたのか訊こうとして、


「舞桜、祖々江滝司って人を知ってる?」


 菜々子が先に問い掛けた。なんだか複雑極まりない表情であり、舞桜としては訝しむ他ない。


「……菜々子、どうしたの?」

「答えて」

「……学年総合成績三位の人でしょ? 一応上位者という縁から、それなりに話したこともあるけど……彼がどうかしたの?」

「その人が警察を訪れて、舞桜のパートナーとしてどうかって早河さんに訊いていたんだけど」

「……んん?」


 首を傾げる舞桜。話が一切見えないため、どう反応していいかもわからない。いや、それ以前に――


「先に何で二人が警察を訪れているか聞かせてもらってもいい?」

「私は祖々江って人について訊いているんだけど」

「いや、その前になぜ二人が――」

「だから、私は彼のことを――」

「えっと、菜々子」


 そんな会話を見かねてか、達樹が口を開いた。


「とりあえず、順々に説明しよう」

「……でも」

「というか、ゴリ押しで通そうとしても駄目だろ。さすがに何をしようとしていたのかくらいは話さないと」


 ――達樹の口上で、舞桜もあまり良い話題ではないのだと察する。次いで、なんとなく予想がついた。


「で、菜々子……私の質問に答えて。正直に、ね」

「……達樹が、舞桜のパートナー候補だって日町さんから聞いた」

「うん」

「でも、私としては達樹が戦うのは危険だと思った。けど、もし私と戦える技量とかなら――」

「やっぱり、そういうことか」


 予想通りだったので、そう言って肩を落とす舞桜。


「警察立ち合いで、決闘でもしようとしていたのね……菜々子、そういうのは」

「……ごめん」


 少し語気の強い舞桜の言葉に菜々子も肩を落とす。


「その、私は……」

「色々と気に掛けてくれているのは私も理解できる。けど、菜々子――」


 そこで、舞桜は以前の事件のことを思い出す。色々とあの戦いは思う所があった。そのせいか、菜々子に対してもどう声を掛けていいのか上手くまとまらなかった。


「――言いたいことは山ほどあるけど、とりあえず言うのはやめるよ。けど、一つ約束して」

「何?」

「もう絶対に、一人で抱え込まないように。例え私に関することであろうとも、絶対に相談して」


 舞桜はじっと菜々子の表情を見ながら告げる。それに彼女もまた反応し、小さく頷いた。


「わかった」

「なら、この話はおしまい……で、祖々江君のことだけど、私はまったく心当たりがないし、彼に関してそういう話も聞いたことがない」

「ということは、彼の独断ってことか?」


 聞き返したのは達樹。舞桜は彼と視線を合わせつつ頷き、


「そんな話が出たこともないから、飛び込みだったんじゃない? 警察の方に私に会わせてくれという人もでるし、さして珍しくもないけど」

「そう、なのか……確かに口ぶりからすると飛び込みだったのかな……ちなみに彼、学園内で舞桜のことを調べ回っていたみたいだけど」

「え?」


 菜々子が反応。目つきが鋭くなったため、舞桜はすぐさま彼女に告げる。


「菜々子、落ち着いて」

「……ごめん」


 すぐに好戦的な眼差しを収める。以前の事件もあってか、舞桜の指示に素直になる心積もりらしい。


「で、そのことがどうやら舞桜の親衛隊にバレて……今日の最初の授業が終わった後、親衛隊の三枝さんと揉めてた」

「揉めてた、か……ふむ」


 舞桜は口元に手を当てる。達樹の表情もここに至り複雑なものとなっている。

 伝え聞く情報だけでは、確かに色々とあるのかもしれないが――少なくとも、彼は独断で色々と行動しているのは間違いなさそうだった。


「私としては、どうとも答えられないかな……警察の方にも事情を訊かないことには、私も答えられない」

「そっか……えっと、彼はそうした話をしに警察を訪れたのは確定だから、今後舞桜の所に来るかもしれない」

「わかった。助言ありがとう」


 答えた舞桜は、内容自体無害なものであったため安堵する――大きな事件が立て続けに二つも起きたため、舞桜としても無意識に警戒してしまったようだ。


「さて……話はこれで終わり? なら、菜々子」

「何?」

「さっきのパートナー云々の話に戻るけど……私は現状、パートナーとして誰と組むかなんてまったくわからない。けど、今までの事件を考えて必要性が高まってきているのは、事実だと思う」

「うん」


 菜々子もそこは深く頷く。


「で、そのパートナーには達樹が?」

「……本人のいる前で言うのもアレだけど、私としては難しいんじゃないかなと思う」


 チラリと達樹を見ると、彼はそうだろうとでも言うように頷いていた。特に気にしていない様子だったため内心安堵しつつ、言葉を進める。


「正直、パートナー選びは白紙の状態。どういう人になるのかはこれから協議しないといけないわけで……私に言及されても、どうとも言えないというのが答え」

「……うん」

「そして菜々子は――自分が、と思っているの?」


 問い掛けに、菜々子は僅かに身を震わせ、


「……その意志も、ある」

「そう」


 短く答え、舞桜は手を鳴らす。


「今日は申し訳ないけど、話はここまでだね。ごめんね、呼び出して」

「……何で電話を掛けたの?」

「日町さんから色々と聞いて」

「つまり、私がパートナー云々の件を日町さんから聞いたから……私の動向が気になって、今日呼んだの?」

「そういうこと」

「……信用、ないんだね」

「当然だと思うけど」


 達樹の横槍。菜々子は視線を流すと、彼も目を逸らす。

 そんな二人のやり取りに舞桜は苦笑しつつ、二人へ告げる。


「ということで、話は終わり……ごめん、呼び出して」

「ううん、いいよ……それじゃあ、私は授業もあるから」

「俺も学園に戻るよ」


 二人は舞桜に告げて――やがて舞桜の家を後にした。

 玄関扉の閉まる音を耳にした時――舞桜は、椅子に座りため息をついた。


「パートナー……か」


 なんだか話が勝手に進められており、舞桜自身どう応じていいかわからない。確かに必要だとは思う。けれど――


「……改めて、早河さんに相談しないと」


 そこまで述べた時、机に置いてあった携帯から着信がきた。


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