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ナイトオブブルーローズ  作者: 陽山純樹
第3話

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対峙する二人

 野次馬が囲う状況で中を見ることができた達樹は、最初に向かい合う面々を捉えた。

 双方とも制服姿。一方は綺麗な茶髪を結い上げた人物であり――


「あれって、確か……」


 記憶にあった。増幅器を手に入れる前舞桜と話をした時干渉してきた、親衛隊の中でもリーダー格の人物。


 もう一方の人物は制服を着崩し、なんだか斜に構えた男性。長身かつストレートな黒髪は十分なルックスであり女子に人気がでそうな風格を備えているのだが――


「おい、これはすげえカードなんじゃないか?」


 近くの男子生徒が声を上げる。それは幾分興奮しているようなものであり、


「試験三位と四位がにらみ合うなんて、めったに見れるもんじゃねえぞ」


 その学生の言葉で、なるほどと達樹は納得する。


 どちらが三位でどちらが四位なのか――達樹は記憶の底から引っ張り出す。それと同時に達樹は克明に二人の名前を思い出すことに成功した。


 魔法試験において三位は、男性の方。名は祖々江(そぞえ)滝司(たきじ)。そしてもう一方が四位で、三枝(さえぐさ)悠子(ゆうこ)。彼女は親衛隊の中で最高の成績を所持しており、紛れもなくリーダーのはず。


 そしてなぜこの二人がもめているかというと、先ほどの会話からも舞桜絡みなのは予想できた。どうやら祖々江が色々と舞桜について調べ回っていたようで、それを親衛隊に見つけられたという構図だろう。


「あのさあ、俺が何をしようが俺の勝手じゃないか? そもそも、俺は立栄さんに何一つ迷惑をかけていない」

「以前後援会にいた会長と副会長は似たようなことを言っていましたよ」

「おお、そうか……前例があるのか。だからやめろと言うわけだ」

「……正直、あなたについてはあまり良い噂を聞きません。だから、という面もあります」


 強い口調で三枝が語る。それに祖々江は両手を上げ、


「わかったよ。調べ回ったことで色々と面倒が起き、立栄さんに心労を負わせるのはこちらも本意じゃない。だからひとまず、引き下がる」


 そう言うと、彼は三枝に笑い掛けた。


「……ところで、今日立栄さんはいないのか?」

「学校には来ていないようですね。仕事なのではないですか?」

「ほう、そうか」


 意味深な笑みを浮かべると祖々江は立ち去ろうとする。しかし、


「待ってください」


 三枝が呼び止めた。


「再度確認しますが、立栄さんの迷惑になるようなことは、お控えください」

「ああ、わかっている」


 適当な物言い――この場にいる誰もが理解できるくらいのわざとらしい生返事。三枝も同様に気付いたらしく、不快な顔を示す。


「……もし何かあったのなら、わかっていますよね?」

「何がだ?」


 面白おかしく祖々江は返答。途端、空気が一触即発としたものに変貌する。


「確かに迷惑になるようなことはしないさ。けど、立栄さんと会って話をするくらいはいいんじゃないか?」

「その目的は?」

「何でお前に話さないといけないんだよ」


 どこか挑発的。さらに三枝の表情が厳しくなる。


「お前は立栄さんの保護者か何かか? 彼女だって話すべき相手とそうじゃない相手くらいは判別できるだろう。俺が話し掛けて立栄さんが不快に思ったのなら無視すればいいだけの話。お前に指図されるいわれはないぞ」

「……警告、しましたからね」


 捨て台詞のような言葉を残し、三枝は立ち去ろうとする。周囲の野次馬はすぐさま左右に分かれ、彼女に対し道を作る。

 中には少し残念がる人もいた。おそらくこの場で決闘でも始まると思ったのだろう。


(それはありえないけど……学外でどうなるかわかったものじゃないな)


 もしかすると――という可能性を考慮するくらいの雰囲気はあった。

 そして残された祖々江は一度ぐるりと野次馬を見回し、


「悪いな」


 一言告げて、三枝とは逆方向へ移動を開始。これで双方がいなくなり、ようやく野次馬達も解散を始める。


「……決闘、ねえ」


 達樹は二人が立っていた場所に目を向けながら、考える。祖々江が何を思って舞桜と接触しようとしているのかは不明。しかし少なくとも三枝は、舞桜のために行動している。


 場合によっては決闘も辞さないという空気だった。迷惑を掛けないという行動方針に対し本末転倒な気もするが、達樹としてはその気持ちがわからないでもない。


(なんというか、舞桜に近づくと守りたいみたいな感情に陥るんだよな)


 それが意味するところは――達樹は想像しかけて首を左右に振った。なんとなくだが、考えるとまずい気がした。


「……さて、授業はサボッってしまったけど、どうするか」


 気を取り直し呟いた時、携帯電話に着信が。


「ん?」


 首を傾げ相手を確認すると、見慣れない番号だった。それに一度達樹は首を傾げたが、とりあえず電話に出る。


「はい?」

『……達樹ですか?』


 菜々子の声だった。心臓が僅かに跳ねると共に、一つ疑問が浮かび上がる。


「……携帯の番号交換したっけ?」

『北海さんに教えてもらいました』

「ああ、なるほど」


 応援団ということもあって連絡先を聞いたのだろう。

 そして声を通しての雰囲気は、以前あった事件前と変わりないもの。何か気持ちの整理がついたのかと達樹は思いつつ、言葉を紡ぐ。


「えっと、それで?」

『はい……今日の午前中、お暇ですか? 場合によっては昼までかかるかもしれませんけど』

「何かあったのか?」

『ちょっと来てもらいたい場所が』


 どこか言葉を濁す菜々子。声色に達樹は疑問を感じつつも、とりあえず同意する。


「別にいいけど……どこに?」


 何か相談事か――達樹が疑問に思っていると、彼女から声が。


『……警察に、来てほしいんです』


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