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女の子、拾ってきました。 2

 ―――マスター?一体何のことだ? 

 「あれ?貴方が私のマスターなんでしょう?魔力供給もされていますし……」

 さらに意味が分からなくなったぞ。魔力供給?なんだ?この子は英霊的な何かで、俺が召喚したってことなのか!?

 いやそんなことはないだろう。きっと何かの聞き間違いだ。

 「えーっと、君は一体………」

 こちらから聞いてみることにした。

 「自己紹介がまだでしたね!申し遅れました、私の名前は『アト』。こことは別の世界から来た人造人間です!あと、魔術師っす!」

 何言ってんのこの子……。

 どうやら俺達とは別の次元を生きる人種のようだ……。(異世界人とかそういう意味ではなくて)

 「アトちゃん、もしかして頭をぶつけたのかな?それとも誰かに殴られて?そのせいで倒れていたんでしょ?」

 そうであってほしい!

 「いえ、ただの魔力切れです。今は、ほら!マスターに魔力供給してもらったおかげで元気ハツラツですよ!」

 そう言ってベッドの上でぴょんぴょん跳ねている。もういいや。

 「それに呼び捨てでいいですよ。所有者(マスター)なんですから」

 「それなら俺も名前で呼んでくれ。深夜(ナハト)だ。こっちは妹の小夜」

 もう疲れたので彼女の話を聞いてやることにした。

 気が済むまで聞いてやれば、後で倒れていた理由を聞き出せるだろう。



 「うーん……。ナハト、私の話を痛い妄想や何かだと思っていますよね?」

 「えっ、いやぁ……それは………」

 ああ、まったく信じていない。ファンタジー的な単語にときめきはしても、信じてはいない。

 『兄さん、ここはハッキリ言ってあげた方がアトのためだよ』

 『そ、そうだよな!そうだハッキリ言ってやろう!』

 それを言うことによって彼女を傷つけるかもしれない。だが、そうでもしないとアトからちゃんと話を聞けないだろう。

 「アトの言うとおりだ。俺はその話を信じられない」

 「そうですか……」

 うつむくアト。

 これでやっと折れたか。少々可哀想だったが仕方が無い、これもアトのためなんだ。

 改めて話を切り出そうとする。

 しかし、予想外の言葉がそれを遮った。

 「でしたら!ナハトが、そして私自身が魔術師であるという証拠を見せましょう!!」



 「うんしょ!うんしょ!」

 アトが俺の部屋を物色し始めた。

 まさか物的証拠がこの部屋にあるとでも言うのだろうか。

 いや、そんな都合の良く………

 「待てよ……もしかして“アレ”のことか…」

 一つだけ心当たりがあった。

 アトがZ指定のゲーム棚に手を伸ばそうとしている。幸い身長が足りないので届いていない。

 今のうちに出してやればこれ以上部屋を滅茶苦茶にされずに済む。

 俺は机の引き出しの奥にしまっていた“アレ”を取りだした。

 「アト、これのことだろ」

 俺はアトに本を差し出した。

 俺の所有物で、俺が魔術師であることの証拠になりそうなモノといえばこれしか思いつかなかった。

 黒い革で製本された本だ。

 (ただ)ならぬ雰囲気を漂わせることから普通の本ではない気がする。

 「おお!これは魔導書(スペルブック)じゃないですか!しかも見たところBランク以上の代物ですよ!」

 どうやらアタリだったようだ。

 この本は馴染みだった書店が閉店する際に廃棄された本の中から拾ってきたモノだ。

 その徒ならぬ存在感が気に入って持ち帰ってきたのである。

 さて、この魔導書を使ってどんな証拠を見せてくれるのだろうか。

 どうやらこの本のことを知っているようだし、どんなものなのか解るかもしれないな。

 「ではナハト、これを使って魔術を行使してください」

 そう言って魔導書を返してきた。

 「え!俺!?アトが先じゃないの?」

 「ええ、私については後でわかると想いますので」

 「でも魔術なんてやったことないぞ」

 「心配ご無用。その魔導書は使いたい魔術のページを開いて念じるだけでいいのです!」

 「そう言われても……」

 「えーと、じゃぁ浮遊魔術なんかどうでしょう。ページは…ここです、浮かせたいものを思い浮かべてください」



 この魔導書は持ち帰ったはいいが、ちゃんと読んだことはない。

 というか読めない。

 浮かせるモノも決めたし、後は念じるだけだ。

 二度、深呼吸。

 右手をかざし。

 「フロート!」と叫んだ!

 念じるだけでよかったのだが、こうも雰囲気が出来上がっていると呪文を唱えたくなってしまう。

 「ほら!使えたでしょ。これがナハトが魔術師であるという証拠です!」

 俺は魔術を使えた。

 どうやら本当に俺は魔術師らしい。

 実際に使えてしまったのだから受け入れるしかない。

 実のところ魔術の話を切り出されてからずっとワクワクしていたのだ。

 誰だってこんな超常的な力に憧れたことがあるだろう。

 いや、憧れない方が変じゃないか?

 そして俺はその力を持っていた。

 俺は魔術師だ。

 


 それにしてもすごいな。簡単に浮かせてしまうなんて。

 これがこの魔導書の力なのか。

 《スペルブック・アドバンス》それがこの魔導書の名前。

 記載されている魔術を最低限の動作で発動させることがこの魔導書の能力だ。

 行使できる魔術はそれほど強力ではないが、動作を短縮できる、未熟な魔術師でも使用可能という点からBランクという位置づけになっている。

 ただし魔力は使用者のものを消費するので、もともと魔力を持たない人間では使えない。

 そのことを考えると俺は普通の人間ではないということになる。

 後でアトに聞いてみよう。きっと知っているはずだ。



 



 

 

 

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