婚約破棄された“出来損ない聖女”です。祈らなかったら国が救われ王太子に溺愛されましたが、宿代が気になります。
教会で祈りを捧げていた聖女です。
婚約者である教会の後継者に「出来損ない」と言われて婚約破棄されました。
「まだいたのか、出来損ないの聖女など目障りだ、教会から出て行け!」
元婚約者の現教祖が少女を連れて来ていた。
「やだぁ、聖女って感じじゃないわね。私が聖女をやったげる」
「頼むよ」
簡単に聖女が交代した。
◆◇◆
「それって酷くない、勇者様」
宿屋にいた私の話を聞いて、旅の四人組の格闘家らしい女の子が感想を述べた。
勇者と言われた青年がうなづく
「子供の頃から、この国の教会で祈りを捧げていたんですよね?」
僧侶っぽい少女に質問される。
「はい、親に捨てられていた所を保護されて、聖女として育てられ、ずっと祈りを捧げています」
私は答える。
「おかしいわね。隣の村に、幼い娘を拐われて、ずっと探している夫婦がいたけど……まさかね? 勇者様」
魔法使いの少女の質問にうなづく勇者様。
私の過去の真相が語られそうなのだが、私はそれより勇者様が気になった。
某有名RPG風世界に転生したと思っていたけど、本当に勇者様って喋らないんだ!!
「あの、そんなことより勇者様は何処からいらしたんですか?」
私は絶対に言葉を発しなくてはいけない質問をしてみる。
勇者様が地図を出して指差す。
喋らない!!
「そんなことよりって……気になるから調べてみるわよ、勇者様」
「王様から橋を渡る通行証を貰わなきゃいけないのに、今は病気で倒れられていて待つしかないものね」
騒がしい一団は去っていった。
私は宿で行く当てもありません。
主要イベントっぽいですが……宿泊費ってどうなるんでしょう?
◆◇◆
「勇者様! やはりこの教会は邪神を祀った魔王の手先に奪われていたようです!」
「新教祖が、誘拐されて祈らされていた本物の聖女を追い出したから、教会の結界が解けたのね。これで、邪神を倒しに行けるわ」
「王様の病気もこれで治るね」
◆◇◆
「あなたが聖女様ですか!?」
この国の王太子様が私を迎えに来る。
「教会はなくなりましたが、王宮で今度は本当にこの国の為に祈って下さい」
王太子は私に抱きついてる。
手が早い。
「良かったわね、聖女様。ご両親も呼び寄せて貰えるって」
勇者様一行が喜んでくれている。
イベントが進んだみたいだけど、宿代……。
「なぜ、私の婚約者は婚約破棄などしたんでしょう? 邪神を祀ってるって知らなかったの?」
「勇者様が邪神の教会を作った四天王の一人を倒したから、知らずに彼は新教祖になったようね」
「彼も、近隣の村から誘拐された犠牲者だったみたいです。混乱で新聖女と死んでしまいましたが」
「多分、彼はあなたの顔が好みじゃなかったのね」
それはシンプルにムカつく。
「でも、聖女は心が美しいですから」
でもってなんだよ!? 今日はじめて会ったあんたが何を知ってる! 王太子!
◆◇◆
結局、宿代はどうなったのか……今の私は王宮ですでに王太子の妻になっていた。
……昔のRPGはイベントの展開が早い。
「平和になって良かったですね」
「聖女様と王太子の結婚に国中で大喜びよ」
勇者様一行が訪ねてくる。
実は私が重要アイテムを渡す事になっていたらしい。
「本当にありがとうございました、勇者様。これは、お礼の品です」
「これは!?」と言いたげに勇者様の表情が動く。
しかし、喋らない。
勇者様っていうのはそういう存在なのね。
私は深く納得した。
こうしてこのイベントは終了し、私は普通の王妃になり、勇者様一行も去っていく。
「ねえ、勇者様、今夜は誰と一緒に寝るの?」
「僧侶」
……ん?
何か聞こえた気がしたけど……。
気のせいよね……?




