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追放悪役令嬢は、絶品農業料理で辺境開拓!気づけば隣国を動かす「食の女王」になってました  作者: 緋村ルナ


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番外編1:それぞれの後日談~彼らが語るベアトリス~

 アルフレッドの視点:愚王の償いと女王の光


「ベアトリスを追放した、あの日……私は、この王国史上、最も愚かな決断をしたのだと、今にして痛感する」


 アストライア王国の国王となったアルフレッドは、執務室の窓から広がる豊かな王都の光景を眺めながら、静かに呟いた。窓の下には、ベアトリスの指導で整備された効率的な水路が流れ、肥沃になった畑が広がる。以前は不満を募らせていた民衆の顔には、確かな笑顔が浮かんでいた。


 私は、当時若く、そして未熟だった。正義感が強いと自負していたが、それはあまりにも浅はかで、物事の本質を見抜く目がなかった。リリアーナ聖女の清らかさに心を奪われ、貴族たちの陰謀に容易に操られた。ベアトリスの真面目さを冷酷さと履き違え、彼女の孤独な努力に気づくことすらできなかった。あの時、彼女がどれほど絶望し、傷ついたか、想像するだけで胸が締め付けられる。


 だが、彼女は、そんな私を許し、王国を救ってくれた。憎しみや怨嗟を一切見せることなく、ただひたすらに、食の力で人々を救う道を歩んだ。彼女は王宮の地位を望まなかった。特定の官職に就くことなく、まるで光そのものが世界を巡るかのように、各地の食糧問題を解決し、食文化の交流を推進していった。


 私にとって、彼女はもう単なる元婚約者ではない。真の賢者であり、この世界を導く「食の女王」だ。私は彼女を国王として深く尊敬し、感謝している。そして、時折、あの日のこと、もう少し彼女の傍で、彼女の本当の笑顔を見ることができたなら、と未練のようなものを感じることもある。だが、それは許されない感情だ。彼女の偉大な道を邪魔することはできない。


 私は彼女が築いた「食の平和」を継承し、この王国を、そして世界を、さらに豊かな場所にする義務がある。それが、あの日の私の過ちに対する、唯一の償いなのだから。


「ありがとう、ベアトリス。貴女こそが、このアストライアを、そしてこの世界を救った光だ」


 アルフレッドは、心の中で静かに、そして深く感謝の念を捧げた。


 リリアーナの視点:聖女の祈りと友の教え


「ベアトリス様……あなたから教わったことが、私の聖女としての真の道でした」


 聖女リリアーナは、飢饉から完全に復興した地方の小さな村で、子供たちに野菜の育て方を教えていた。彼女の手には、以前は珍しかった瑞々しい野菜が抱えられている。その柔らかな笑顔は、以前にも増して慈愛に満ちていた。


 私が王国に現れた頃、私はただ無邪気で、自分の奇跡の力が全てだと信じていました。人々の病を癒し、苦痛を取り除くことが、聖女の役割だと。ベアトリス様が追放された時も、私はただただ混乱し、何もできませんでした。彼女がどれほど理不尽な状況に置かれていたか、若さゆえに、私には理解できなかったのです。あの頃の私は、彼女を、恐ろしい「悪役令嬢」だと信じ込まされていた部分がありました。


 でも、彼女はヴェルムントで、自らの手で畑を耕し、美味しい料理を作り、人々を飢えから救いました。それは、私の奇跡の力では決してできなかったことでした。聖なる光で土壌を一時的に肥沃にすることはできても、持続可能な農業技術や、人々の心を繋ぐ美食は、人間の知恵と努力なしには生み出せないと知りました。


 ベアトリス様は私に教えてくれました。真の幸福は、奇跡によって与えられるものではなく、人々が協力し、知恵を絞り、自らの手で築き上げていくものだと。それ以来、私は聖女としての力を、食糧支援や地域活性化に繋げる活動に力を入れるようになりました。ベアトリス様と畑で共に汗を流し、彼女の料理を味わうたびに、心が温かくなりました。


 彼女は、私の唯一無二の親友です。遠く離れていても、私たちは「食」という絆で繋がっています。私ができること、そして彼女が教えてくれたことを、この世界のすべての人々に伝えていきたい。それが、私の聖女としての、そしてベアトリス様の友としての、使命だと信じています。


 ディートリヒとセリアの視点:荒地から奇跡の郷へ


「なあ、セリア。俺たちがまさか、こんなすごい場所の、中心に立つことになるとはなあ」


「うん!全部、ベアトリス様のおかげだよね!」


 ヴェルムント辺境伯領の、今や見渡す限り黄金色に輝く小麦畑を眺めながら、ディートリヒとセリアは話していた。ディートリヒは、すっかりこの地の農業指導者としての風格を纏い、セリアはローゼンベルク亭の女将として、厨房とホールを切り盛りしていた。彼らの周りには、活気にあふれた村人たちが、満面の笑顔で働いている。


 僕らは、ベアトリス様が現れるまで、希望なんてこれっぽっちも持っていなかった。この辺境の地で、飢えと貧しさに喘ぎ、ただ死を待つだけだと思ってた。最初は、高慢な貴族が何を企んでるんだって、警戒心しかなかった。でも、彼女が自ら泥だらけになって鍬を握り、僕らと同じように汗を流してるのを見て、心が震えたんだ。


「ベアトリス様は、僕らに、『知恵』をくれた。そして、『諦めない心』を教えてくれた」


 ディートリヒはそう言って、深く頷いた。彼女の知識は、まるで魔法のようだった。痩せた土壌が肥沃になり、今まで育たなかった作物が豊かに実り、そしてその作物が、想像もできないくらい美味しい料理に変わっていく。彼女は決して秘密にせず、惜しみなくその知識を僕らに教えてくれた。おかげで、僕は今、この地の農業を背負うことができる。


 セリアも続いた。「私、ベアトリス様と一緒に、美味しいものを作るのが大好きだったんだ!料理の楽しさも、人々の笑顔も、全部ベアトリス様が教えてくれたの。ローゼンベルク亭も、もう私のお家だよ!」


 彼女が握るお玉は、もはやベアトリスのそれと同じくらい、人々を幸せにする魔法の道具となっていた。


 ベアトリス様は、もうこの村にはいない。世界中を飛び回って、食糧問題を解決していると聞く。でも、彼女が僕らにくれたものは、決して消えることのない、大きな光だ。この豊かさも、この人々の笑顔も、そして僕らの心にある情熱も、全てがベアトリス様の教えだ。


「僕らは、ベアトリス様の意志を継いでいく。この奇跡の郷を、そして彼女が示した食の道を、次の世代に、そして未来永劫、伝えていくんだ」


 ディートリヒとセリアは、それぞれの場所で、ベアトリスの残した光を受け継ぎ、輝かせ続けていた。

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