第11章:食が紡ぐ平和、輝かしき「食の女王」の誕生
ベアトリスがアストライア王国の食糧戦略顧問となって数年。彼女の影響は、国内に留まらず、周辺の小国、さらには遠くの国々へと波及していった。食糧支援と貿易を通じて、アストライア王国とレガリア帝国だけでなく、これまで対立していた国々との関係も劇的に改善されていったのだ。
「この国の豊かなジャガイモと引き換えに、我が国はそちらの優れた漁業技術を学びたい」
「私たちの作った特製ワインを、そちらの素晴らしいチーズと交換しませんか?」
ベアトリスは、食の力を使って、国境を越えた平和的な交流を推進した。彼女は各国の王族や政治家、商人たちに対し、「食糧は、政治的駆け引きの道具ではなく、人々の命と健康を支える共通の資源である」という理念を繰り返し説いた。そして、食糧不足という人類共通の課題に対し、国々が協力することでしか解決策はないと訴え続けた。
彼女の提唱により、ついに各国代表者による「食の平和と協力に関する国際会議」が開催されることになった。場所はアストライア王国の王都。各国の王、宰相、大使、そして主要な貴族や商人が一堂に会した。会議の冒頭、ベアトリスは、これまでのヴェルムントとアストライア王国での成功体験を具体的に示しながら、食糧問題の解決と、食を通じた平和構築の可能性について力強く語った。
「飢餓をなくすこと。それが、この世界から争いを減らし、真の平和を築く第一歩となると信じております」
彼女の言葉には、感情に訴えかける力と、揺るぎない信念が宿っていた。会議は白熱した議論の場となったが、最終的には、食糧問題を政治的駆け引きの道具にするのではなく、国際協力によって解決する枠組みが構築されることで合意された。食料の安定供給のための技術協力、非常時の食料備蓄共有システム、そして飢饉予測の国際連携など、具体的な取り組みが合意されたのだ。
世界中の人々が、ベアトリスが食を通じて築き上げた平和と豊かさを称賛した。彼女は、もはや特定の国に縛られる存在ではなかった。王族の位ではなく、人々の命と心に直接働きかけ、世界全体を豊かな食で繋ぐ存在。人々は彼女を親しみを込めて「食の女王」「食の賢者」と呼ぶようになった。
特に、聖女リリアーナの成長は目覚ましかった。ベアトリスの影響で、リリアーナは聖女としての役割を、奇跡の力を使うことだけに留めなかった。彼女は自らヴェルムントの農業学校で学び、聖女の癒しの力を食糧支援や地域活性化に繋げる活動に力を入れた。弱った土壌を癒し、作物の生育を助ける、真の意味で民に寄り添う聖女として成長したのだ。彼女の聖なる力と、ベアトリスの科学的な知識が融合することで、より強固な食料生産基盤が築かれていった。
「ベアトリス様のおかげで、私は本当に民のためになることを見つけられました。ありがとうございます」
リリアーナは、かつてベアトリスに冤罪を着せたことへの罪悪感も乗り越え、彼女を心からの友として慕っていた。
アルフレッド王子もまた、ベアトリスの支援と助言を受け、真に民を思いやる賢明な国王へと成長していった。彼はベアトリスが築いた「食の平和」を継承し、国を発展させることを自らの使命とした。王室はもはや貴族の利権を守るだけの存在ではなく、民の生活を豊かにし、世界の平和に貢献する存在へと変貌していた。ベアトリスの名は、歴史書に刻まれ、未来永劫語り継がれる存在となったのだ。彼女は、まさに「食の女王」として、その名を世界中に轟かせた。




