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スーパーロボットを拾ったので、上手く使って幸せになりたい!  作者: 西東ノ棒
基地跡地町(ベースサイト・タウン)の子供たち
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第39回 とある荒野にて⑦


『高熱源感知!! ピーター! 緊急回避!!』


 アンテの悲鳴にも似たコールに、我に返ったピーターは、緊急回避とダメージコントロールのイメージを乗機に放った。


「サンゴー・ビーム!!」


 サンゴーグレートは土下座の姿勢から顔だけ上げ、三条の強力なビームを発射した。

 額のパーツを解放させ、目の辺りからのものと同時にビームを放つ。アンテセッサーへ向けて。


 アンテセッサーは飛び退きながら懸命に防御姿勢をとった。

 サンゴーのビームは拡散され、アンテセッサーを覆い隠した。


『な!?』


 上空からイダルトゥの驚きの音声が聞こえるが、そんなものに構っていられない。

 サンゴーグレートはダッシュでアンテセッサーに近づいた。


「ちッ。こんなもんか。チャージが短かったな」


 甲太が呟く前で、煙の中、アンテセッサーが蠢く。

 そのロボットは、やっと動かせるようになってきた左腕部を盾として、胴体部、そして銃を守っていた。

 しかし、それによって左腕部はもはや完全に機能を失っていた。そして全身に備わる細いロボットアームも、5本の内4本が破壊されていた。

 それだけでも甲太にとって大きな収穫だが、何よりもこれで距離を詰めることが叶った。


「きさま、貴様なにを……」


 あまりの出来事に声を震わすピーター。


「これでやっと五分(ごぶ)だな。ようやく捕まえた。残り時間7分。片付けるには十分だ」


 悪びれもせず、そう語る甲太に、ピーターの怒りは爆発する。


「こ、この外道がっ!! 罠にはめたのか!? よくもそんなこと… 話し合いの場で奇襲をかけるなど、最も卑劣な行為だぞ! 恥を知れっ!!」


「おいおい、だから先に謝っただろ? それに… お前は人の事言える立場なのかい?」


 おちょくる感じの甲太に、ピーターは馬鹿真面目に聞き返す。


「僕が何をしたっていうんだ?」


「アンテセッサーの能力を黙っていただろ?」


「ぅ…… それは…」


 ピーターは詰まる。


「仲間にも教えないなんて酷いんじゃないか? サンゴーグレートの力はみんな知ってるのにさ。不公平だよね?」


「それは…… 君は日本で事件を起こしたという問題ある立場だから… そんな人間に容易く機密を教えられるわけない……」


「え~~~~! ひど~~~い! お前は仲間をそんな目で見ていたのか。じゃあ何か。一度罪を犯した人間は一生罪人だと言うのか? 罪を償ったとしても? その子供は犯罪者の子か?」


「そ……! そんなこと……」


 ピーターの生真面目さを突く言い方だった。

 どんなことであれ人を差別するのは良くない、そう信じ込んでいる

 そんな世間擦れしていない良家の御子息な面を、甲太は利用した。


「アンテセッサーの能力を知っていたら、俺も闘いの前の話し合いでちゃんと意見できたさ。でも知らないもんだから不平等な条件を飲むしかなかった。これも一種の騙し討ちって言えるんじゃね~~の。なあ!」


「そ… それは……」


 卑怯な攻撃を喰らったばかりというのに、ピーターは甲太の口車に乗せられ始めていた。


「そんなお前が俺の事を非難できるのか? これでお相子じゃないか。同罪の者同士これでやっとイーブンに成れたんだ。こっちとしてはむしろ感謝してほしいぐらいだよ!」

 

「そ…… そうなんだろうか…?」


 困惑の最中(さなか)にいるピーター。

 すると甲太は、急に機嫌を良くして。


「分かってくれたのならいいんだ。お互いこれまでのことは水に流そう! 握手して闘いを再開しようじゃないか(朗らかな声)」


「ええっ… それは…」


 当然、気後れするピーターに甲太は重ねて囁く。


「だってこのままじゃ時間切れだ。それじゃあ遺恨が残っちゃうだろ? 何のためにこの闘いを始めたのか分からなくなるじゃないか。だから一旦ここでリセットする。そして後はどんな結果になっても恨みっこなし。それでいいだろ?」


「そうかもしれないけど……」


 何かフワフワするピーター。


「大丈夫。こんなにいっぱい人が見ている前で卑怯なことしたりしないよ! この闘いが終わった後も僕たちの日常は続くんだ。そこにモヤモヤした気持ちを引きずりたくない」


 カール直伝の、とめどない語りでピーターを流そうとする甲太。

 見かねたアンテが。


『ピーターや。受けてはいけませんよ! どう見ても怪しいですよ。大体もう卑怯なことをされた後じゃありませんか』


「で・・・ でも…」


 必死な引き留めにも、心が揺れて定まらないピーター。


「もう時間がない! さあ、握手を済ませて、正々堂々と闘おうじゃないか! ピーター!(凛々しい声)」


 甲太の誘いにフラフラと近づきそうになるピーター。

 するとアンテセッサーが。


『分かりました。ではパイロット同士が生身で握手するとしましょう。お互いハッチを開けてロボットの手の上で。それでいいのではないですか? 甲太さん』


「……そうですねぇ」


 アンテの意見に、甲太は思案をする。

 ふりをしてサンゴーグレートで襲い掛かってきた!


「なっ……!」


 急接近するサンゴーに、ピーターは急回避しながら、銃を突きつけた。

 それを待っていたのか、サンゴーグレートは目の辺りからのビームで、アンテの銃を破壊しようとする。

 閃光が駆け抜けた。

 アンテセッサーの背中のロボットアーム、唯一残った、が銃を摘まみ上げて、何とかサンゴーの怪光線から救った。


「な、なんてこと・・・」


「ロボットのババァ! 余計なことを!」


 ピーターの戸惑いの声を、甲太の罵声が打ち消す。

 今にも襲い掛からんとするサンゴーグレートと、腰だめに銃を構えたアンテセッサー。両者睨みあった。


「コータ…… また裏切ったのか、僕の信頼を踏みにじったのか!」


「そんなもの最初からありゃしねえだろ! お互いにな。ここは戦場、騙される方が悪いのさ。相手を信じて落ち着こうとするのは弱虫なんだよ!」


 小悪党の顔を存分にさらけ出す甲太。なかなか板についている。


「もう信じられない… 君のことを仲間だとは思えないよ…… 君は礼儀を重んじる武士道の国から来たんじゃないのか!?」


「そんな古いもの知りませ~~ん。ん。なにか。お腹を切ったり首を切ったりするのがお好きか? 変わってるね」


「お… お前」


「何が仲間だ、(はな)っから思ってねえだろそんなこと! 最初に会った日の態度ありゃなんだ? もういい加減その綺麗ごと捨てて本気でかかってこいよ『断罪の鋏』さんよ! そのポンコツババァロボットのケツをブッ叩いて向かって来い!」


「・・・・・・・・・ってめえ!! ぶっ殺す!!」


 度重なる甲太の愚弄に、ついにピーターは切れた。

 建前や戸惑いを捨て去り、本気で勝負に出る構え。


(よし… これでいい)


 甲太は思う。

 自分だけ落ちたままじゃ不公平だ。ピーターにもこちら側に落ちてきてもらう。

 これでようやく、遠慮なしの戦いをブチかませるというものだ。



 甲太は投げていた。

 この決闘で名勝負を演じ、みんなに好かれたい、という想いを。

 気づいてしまった。

 ここで勝っても負けても、評価してほしい人たちには届かない。

 カールは金儲けしか頭にないし、楓は何考えてるか分からないし。

 その他の見物人は、ただ派手なロボットバトルで暇つぶしをしたいだけ。戦う者の気持ちなどどうでも良く、ビール片手に野次を飛ばしてる。


(馬鹿らしい。こんな茶番に付き合ってられない)


 そう思い。降参しようと思った。もう闘う意味など見出せなかった。

 諦めた。すると。何だか頭がクリアになり。とある興味が湧いてきた。


(どうやったら、この逆境から勝利を見出せるだろう?)


 そんな想いが生まれると、それはムクムクと成長し、甲太の頭に充満した。

 そして、それを実践することにした。

 もう他人からの評価など気にしないので、存分にピーターの心を揺さぶり、まんまと接近することに成功した。

 汚い。卑怯。等々どんなに他人に言われても結構。これは甲太が考案し、何よりも熱中している、新しいゲームなのだ。

 最高に楽しいこのゲーム、是非、ピーターにも楽しんで欲しい!

 そう思って、発破をかけたら、怒り狂ってしまった。


(まあいい! これぞ真剣勝負。最高の戦い!)


 そんなハイになってる甲太inサンゴーグレートの前で。

 アンテセッサーのマスク上に変化が生じた。

 右目?の透明カバーがスライドし、中から管に繋がった目ん玉みたいのがミョ~~ンと伸びてきた。


「うげっ 気持ち悪う!」


 怖気(おぞけ)が走る甲太を他所に、その眼がついた管はドンドン伸びっていって、右手に持つ銃のスコープのような場所に接続した。

 これがアンテセッサーのビーム銃の完成形。

 完全に本体と一体化した。エネルギーが本体からダイレクトにチャージされ、銃のスコープで捉えた映像は、直接アンテセッサーの視界となる。


「そんなことして目が回るだけだろタコがっ!」


 罵りつつアンテセッサーに向かってダッシュする、甲太のサンゴーグレート。


「これでてめえの脳みそ吹き飛ばしてやるよ! ゴミがっ!!」


 叫びつつ銃をサンゴーグレートの顔面に向かって突きつける、ピーターのアンテセッサー。

 とうとう戦いは最終局面に入った!

 ただ、残り時間はほんの僅か。




 先程からのサンゴーグレートの卑劣な戦いぶりに、観客席からは盛大なブーイングが飛んでいた。

 客たちは皆心を合わせて、アンテセッサーを応援する。ある意味最高の盛り上がりにはなったが。


「流石コータ…… 見込んだだけのことはある……」


 カールの言葉もたどたどしく。

 楓の顔は怖くて見れない。




 アンテセッサーの完成されたビーム銃が光を放つ。

 本体にチャージされたエネルギーを、連結された銃に解き放った。

 当たった箇所が丸々消失するだろう威力。


「うぇえええぇええ!!」


 奇っ怪な叫びを上げ甲太は逃げずに飛び込んでいく。


『サンゴーー・パンチ!!』


 アンテセッサーの強力なビームを拳で受け止めた。

 光の粒子が飛び散り、サンゴーの機体表面を焼く。


「そんなっ。バカなっ!」


 ピーターが驚く。そんなことしたら腕ごと吹っ飛ぶ筈。だが。

 舞い上がる白煙をサンゴーグレートの拳が突き破る。それは痛々しく赤熱していたが形を残していた。

 かつてイダルトゥが、サンゴーグレートのビームをくぐり抜けた時に使った技。機体表面のエネルギーを拳に集中させ、ビームを防ぐ。

 それを甲太が我がものとしていた。 

 

『流石甲太だ。先程の話術といい、私もその成長ぶりに目を見張るばかりだ!』


 サンゴーが大袈裟に驚いてくれるが、甲太はかえって恥ずかしくなる。


(正気に返らせるなバカ!)


 でも今はこのサンゴーを使って、勝利をもぎ取る。

 アンテセッサーは、今ほど強力なビームを、直ぐには撃てないはず。


「終わらせるぞ! オラァァァァア!!」


 (とど)め!とばかりに振りかぶるサンゴーグレート。

 迫りくる相手との間に、アンテセッサーは爆弾を(ほう)った。背中のアームで、腰の後ろに付けていた爆弾を。持ってきたのはこれで最後。


 起爆!


「クソっ また!」


 爆風で強制的にサンゴーを突き放す。

 距離を開けたアンテセッサーは、ビーム銃をガトリングのごとく乱射してきた。


「ちいっ! クソぉい!」


 甲太側は逃げたいが、これ以上距離を開けるのは、絶対駄目だ。

 サンゴーグレートの身を、可能な限り低くしてビーム弾の嵐をかいくぐる。

 腹ばいの姿勢となり、そこに反重力を加え、地表を泳ぐように高速で移動した。

 アンチグラビティ匍匐(ほふく)前進だ!

 と言えればいいが、実際はゴキブリっぽくもある、腹ばいでやたら早い動き。


「くッ」


 相手のストレンジな動きに、ピーターは動揺する。

 それに勢いを得て、サンゴーは腕をグルグル回転させ更にスピードを増す。

 土煙を巻きあげ狙いをつけにくくし、機動力を上げる。

 腕の車輪によって、前後左右に素早く移動、撹乱した。

 まるで地面をクロールするよう。

 と言えればいいが、傍から見ると凄くバカっぽい。しかし今の甲太は人目を気にしない。その余裕もない。

 

 ヘンな動きの甲斐あり、サンゴーとアンテの間は、遂にゼロ距離に達する。

 サンゴーグレートは、海鳥に食らいつくサメの様に飛び上がり。


「うおおおぉぉぉぉぉぉおおお!!!」


 サンゴーの拳が、アンテセッサーに迫る。

 抗するアンテセッサーは、背部のロボットアームで動かない左腕部を掴み上げ盾とした。

 重低音の轟きと甲高い金属音が続けざまに響き、左腕部は大きくひしゃげる。

 次の瞬間、アンテセッサーはビーム銃の銃床で、サンゴーグレートの横っ面を殴りつけた。

 破片が飛び散る。

 吹っ飛ぶサンゴーは、振り返りざまに、目の辺りからのビームを発射。

 アンテセッサーは、飛び退きながら銃を構えなおし、ビームを撃つ。

 ビーム同士が衝突し、荒野の真ん中でスパークした。


 両機とも、すでに目も当てられないほど傷だらけになっていた。

 決闘が始まる迄は二人とも、あまり機体に傷つけたくないな、と思っていたのだが。

 もはやそんなことどうでも良く。

 むしろ自機が傷つけられるたびに、相手の技量に感心し、それに対応した己の腕前に喜びを感じるほどであった。


「今のは良かったぞ。よく耐えた、無能なりにな」


「フン。そんなトロい攻撃なんて! もっと本気で来いよ! 落ちこぼれのクズ!」


「言いやがったな! いい度胸だ。次で潰す! 消えろクソメガネ!」


 両機、ぶつかっては離れ、離れてはぶつかり、荒野の中心で終わらないワルツを繰り広げる。

 それは制限時間が過ぎても続いた。




「あ~~~~……。両方ともあんなに傷つけちゃって…… 直すのにどんだけかかんのよ~~~!!」


 観客席の前に立つヘルメイアスの中で、クラウディアが情けない声を上げる。

 以前、バラバラだったサンゴーグレートを直した時は、パーツ単位でキレイに分解されていたので、特に時間はかからなかった。

 それが今回は全身くまなく傷が付いており、吹き飛んで消失したパーツも幾つもある。しかもそれが2体分ときた。

 このロボット達は、人間(子供)が乗っていないと能力をフルに発揮できない。それはヘルメイアスの修理能力も同じことで。

 クラウディアはいつ終わるとも知れない修理の為に、ロボットビルの地下の格納庫で、残業に追われる未来を想い、嘆息するばかりであった。


「ワ~~~~~~~~~!!! ヤダ~~~~~~~~~~!!」


 嘆息で終わらず騒ぎ立ててるけど。


 クラウディアだけではなく、楓もまた表情を曇らせていた。

 制限時間を過ぎても闘いは終わらず、もはや勝ち負けも無く、ただひたすらに互いを傷つけあう男子2名を直視していられない。

 この決闘の発案者としても、責任を感じずにはいられなかった。


「もう止めてあげよう。こんなの悲しいだけだよ」


 振り向いてカールにそう訴えた。

 そこに居たのはオジサンだった。おジイさんと言ってもいいかもしれない。


「えっ、あれ?」


「カールKUNならどこかへ行きましたよ。2,3分ほど前ですかね」


 某「鶏のフライの世界チェーン」の創業者を連想させる見た目のそのオジサンは、折り目正しく返答してくれた。カーネルオジサンよりメガネが厚くて、表情が読めない。


「そうですか… ありがとうございます」


 楓は礼を言いながら、このオジサンどこかで見たことあるような? と思っていた。

 オジサンがUFR研究所の所長だったと思い出すのは、翌日になってからである。




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