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マリスタニア王国史-ローレライと白銀の死神-  作者: 月狐-つきのきつね-
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クラリスの子守唄

カクヨムにて先行配信。現在、最終話第81話までを公開中。

よければ、下の方にあるイイねマークをポチってから、次の話に行って下さい。


「すれ違う刹那、流れる様に押されるイイねが作者の胴を横に薙ぎ、音もなくすれ違う読み手の右手は、作者フォローを捉える。トサリ、と空虚な音がして作者はその場に倒れ込んだ、そう、それは見事な土下座。感謝の姿」

 モリアスが帰ると執務室(しつむしつ)は途端に殺風景(さっぷうけい)になった。


 来る前には何ともなかった室内の空白が、寂寥感(せきりょうかん)に満ちているように感じる。


 ()(たま)れなくなってロランは部屋をでた。

 少し歩いたのち中庭に出て木陰(こかげ)に腰掛ける。


 建物の窓の向こう側で、侍女達がこちらを(うかが)いながらひそひそと何かを話している。


 何だろう、言いたいことがあれば言えばいいのに。

 いつもそう思う。


 あれが戦場に駆ける死神だとでも言っているのだろうか、と少し悲しくなった。


 木漏(こも)()に心地いい風、すっと意識が遠退き、心地良い睡魔(すいま)が訪れる。

 半刻も経った頃、近くに人の気配を感じ眠りが浅くなる。


「お兄ちゃん」


 声に気付いて顔を上げると目の前にはバスケットを持った妹が立っていた。


 輝く銀髪に銀色の瞳。優しく微笑(ほほえ)んでバスケットを手渡してくる。


「はい、お弁当。作ってもらってきたよ。地龍亭のお弁当。ね、お兄ちゃん。今日の召集、もしかして危ないの?」


 どこかで聞いたのか、察知したのか。


 ロランが返答に困っているとクラリスが続けて、やっぱりねと得心(とくしん)する。


「いや、魔物の討伐はいつもの事だし、危険はいつでもある。お前が心配するような事は……」


「お兄ちゃん」


「可能性として……。いつもより少し危険かもしれない」


「お兄ちゃん」


「いつもより危険です」


「どのくらい?」


「最悪出兵した半数が死ぬかもしれないくらい?」


 その言葉にクラリスは唖然(あぜん)とした表情を浮かべ、間を置いてそっか……と少し落胆(らくたん)する。


 (あきら)めにも似たクラリスの表情にロランの胸がちくりと痛む。


 楽観的(らっかんてき)な話題を出そうとするがどうしても悲観的(ひかんてき)な内容しか出てこない。


 こんな時、モリアスならばきっと何か明るい話題を、いや、意味も根拠(こんきょ)もない話であっても場を明るくできるのだろうなと思いながら立ち上がり、妹の頭を優しく()でながら胸元へと抱き寄せる。


 優しさをたたえた兄の顔でごめんな、そう言いながらロランは妹から身を離すと騎士の顔へと戻った。


「謝らないで。ちゃんと生きて無事に帰ってこないと許しません。座って、少し休んでちょうだい」


 クラリスはロランに座るように促すと、自らの(ひざ)にロランの頭を導き膝枕(ひざまくら)の体勢をとり、静かに子守唄を歌う。


 戦時における全身の逆立(さかだ)つ神経が急激に撫で付けられその(とげ)を失う。


 ほんの数秒後、ロランは安らかな寝息を立てていた。

 子供のような寝顔の兄の頭を撫でながらクラリスは兄の無事を願う。


 廊下の窓からは侍女達が(うるわ)しい光景に触れたという恍惚(こうこつ)とした表情で兄妹を見ていた。


 昔からクラリスが子守唄を歌うと兄はすぐに寝息を立てていた。

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。きっとわたしが護るから」


 クラリスは静かに眠る兄に語りかける。


 慈愛(じあい)に満ちた強さを(はら)んだ(おだ)やかな笑顔で。


「エリちゃんのお手伝いに行って夜に備えないと」


 兄の髪を撫でながらそうつぶやいて兄を起こす。


「ん……、落ち着いたよ。ありがとうクラリス」


 起きた兄の鎧についた芝生を払ってクラリスは兵舎の中庭を後にした。


 まだ少しだけ、自分にも出来ることがあることに思い至っていた。

いつもありがとうございます。リアクションがないと寂しいので、できれば評価、いいね、感想、イチオシレビュー、ブックマークをお願いします。何なら話しかけてくれるなら何でもいいのでぼっちにしないでくださいおねがいしますがんばります。

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