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マリスタニア王国史-ローレライと白銀の死神-  作者: 月狐-つきのきつね-
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戦場に咲くシスコン

カクヨムにて先行配信。現在、最終話第81話までを公開中。

よければ、下の方にあるイイねマークをポチってから、次の話に行って下さい。


「すれ違う刹那、流れる様に押されるイイねが作者の胴を横に薙ぎ、音もなくすれ違う読み手の右手は、作者フォローを捉える。トサリ、と空虚な音がして作者はその場に倒れ込んだ、そう、それは見事な土下座。感謝の姿」

 衝撃的(しょうげきてき)な内容を聞かされたモリアスは、すぐさま勝ちに向かう方法を模索(もさく)する。


 そしてこれが消耗戦であり、王都の兵士、騎士を最大限投入した場合、魔物の群れを殲滅(せんめつ)することができるが、兵はその半数が命を落とすことになる未来に行き当たる。


 それは周辺国からの侵略を防ぐ手立てが無くなる未来を示していた。

 まず勝ちが無い、その事を認識する。

 まずいよね、と告げるロランの声で我に返ると続けて状況を整理する。


 王都は周囲を高い壁で囲まれているが、戦闘の規模が大きくなれば街への侵入も視野に入れなければならない。


 ただの暴走であれば正面だけを気にしていればいい。しかし、今回はそうはいかない。敵に統率者がいる。


 ある程度周囲に兵を()く必要があり、そうなると魔物の戦力の5割増を用意できないことになる。


 正面からぶつかると数の優位を保てないので土魔法で空堀(からぼり)を作り、空堀の背後に壁を立てて一度に到達できる数を減らすことで常に数の優位を保ちつつ魔法と矢で数を削っていくと考えても……、とそこまで考えてモリアスは溜め息をついた。


 消耗戦は避けられそうにありませんね。


 モリアスがロランにそう言うと、ロランがもう一度、まずいよね、と呟いた。


「市街地に魔物が侵入した場合、クラリスの身に危険が迫るかもしれない。私は市街地に陣取ってクラリスを護ろうと思う」


「うん?うん。取り敢えず落ち着いて下さい。あなたは大隊長です。南の森の際で魔物を食い止める1000人の兵を指揮する立場にあります。そんなわがままが通るわけがないでしょう。どうして妹君が絡むといきなりポンコツになるんです。あと、ちょっと冷静であるかのように真顔を装うのをやめていただけますか?真顔で冷静なポンコツなど笑えませんので」


 モリアスがロランを(たしな)めるとロランは不機嫌な表情を浮かべて、冷静でいられるわけがないじゃないか、と天井を(あお)いで吐息のように漏らす。


 そうですよね、とモリアスが同調する。こちらとしても想像していた通り、(ろく)でも無いことを言い出したポンコツに対して冷静で居られた自分を()めたい。


 この姿を侍女たちが見たらなんと言うだろうか。


 いや、答えは分かっている、家族のために悩む姿も素敵で優しいわ、である。


 あまり知られていない事実だが世界の約8割の事象(じしょう)の決定権は女性が掌握(しょうあく)している。


 そして、女性の約9割は眉目秀麗(びもくしゅうれい)で知的な男性に弱いのだ。

 

 つまり実に世界の決定権を握る存在の72%がこのポンコツに優しいということになる。


 ()せない、しかし事実は事実、受け止めよう。


 そして、同時についさっき部屋を訪れた際に感じた尊敬の念は忘れよう、モリアスはそう思った。


「つまり……その……、大隊長を辞めるべき……かもしれないとさえ考えている」


「思い切りの良さエグいですね。冗談はその辺にして下さい。今のが冗談じゃないとか冗談じゃありませんからね」


 一呼吸おいてモリアスが続ける。


「話を戻しますが、市街地への魔物の侵入を阻止することは絶対です。なので東西と北の門の警備に人員を割く事、空を飛ぶ魔物の警戒のために壁の上の弓士と魔法士は外せません」


「東西と北は他所の担当かな」


「歩兵と騎兵で魔物を食い止める場合、弓士と魔法士が居なければ敵が減りません。英雄でもいれば別ですが。弓士と魔法士の手配は済んでいますか?」


「そこは抜かりなく終わっている。が、実戦が初めての連中も多い。恐慌を起こさないとも限らんな。英雄……、英雄なぁ。王様か眠り姫でも呼ぼうか。あとは前線をどこまで押し上げて保てるかと、歩兵の交代のタイミングをどうするかだろうか。森の全景は壁の上の(やぐら)から見渡(みわた)す事ができるから挟撃(きょうげき)の心配はない。あと、クラリスを(まも)る為なら大隊長の肩書きなど要らないというのは冗談じゃない」


「妹君に言いますよ。あなたを護るために1000人の部下を犠牲(ぎせい)にしようとしていると。きっともう口を聞いてくれなくなるんじゃないですか?怒るだろうなぁ。悲しむだろうなぁ。絶縁(ぜつえん)されるかもしれませんね」


「やめろ。……やめて」


「あと、王様が出てきたら困るのは貴方です。あの方は戦闘狂(バトルジャンキー)ですから、戦場でも御構い無しに貴方と戦おうとするでしょう。あと、眠り姫は第三歩兵大隊の主戦力なので、取り上げたら隊長のダレンさんから文句がきますよ。あと彼女は取り扱いが極めて難しいので出来れば寝たままで居てもらいたいです」


「だよね。確かに王様(あのひと)の相手は嫌だなぁ。ダレンさんからの文句も嫌だ」


「ではまた夕刻に参ります。それまでに他の隊との交代のタイミングを決めるのと、誰が指揮兵をやっているのかを聞いておいてください。あと、土魔法を使える人員を集めて空堀の設営とその後ろに壁の設営を。一度に通れる魔物の数を絞らないといけないので空堀は深目に。壁は魔法士と弓士の射線(しゃせん)(さえぎ)らない高さでお願いします。空堀には油を()いて火をつけるので油の手配もお願いしますね」


 白銀の騎士の二つ名を持ち、吟遊詩人には戦場に駆ける赤い薔薇と(うた)われたロラン。


 剣を抜いて馬で駆け抜けると戦場には次々と(あか)い花が咲く、敵兵からすれば死神そのものである。


 これまでに紅い花を咲かせて散っていった敵兵がこの姿を見たら何と言うだろうか、不憫(ふびん)でならない。


 モリアスは目の前のポンコツを揶揄(からか)うのをやめて、部屋を出てもう一度状況を確認し深いため息をつく。


 流石に今回は死ぬかもしれない、クラリスとデートしたかったな。生きて戻れたらデートに誘って色んなことをしよう。


 ただ、この気持ちは絶対に口にするまい、誰かに聞かれたら生きて戻れない気がする。


 特にあのシスコンポンコツ兵器に聞かれたら戦場に咲いてしまうかもしれない。


 クラリスと進展があっても報告は全て事後にしよう。兵舎に戻るモリアスはそんな事を考えながら赤い絨毯(じゅうたん)()かれた廊下(ろうか)を歩いていった。

いつもありがとうございます。リアクションがないと寂しいので、できれば評価、いいね、感想、イチオシレビュー、ブックマークをお願いします。何なら話しかけてくれるなら何でもいいのでぼっちにしないでくださいおねがいしますがんばります。

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