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マリスタニア王国史-ローレライと白銀の死神-  作者: 月狐-つきのきつね-
3/81

弓士アーリア

カクヨムにて先行配信。現在、最終話第81話までを公開中。

よければ、下の方にあるイイねマークをポチってから、次の話に行って下さい。


「すれ違う刹那、流れる様に押されるイイねが作者の胴を横に薙ぎ、音もなくすれ違う読み手の右手は、作者フォローを捉える。トサリ、と空虚な音がして作者はその場に倒れ込んだ、そう、それは見事な土下座。感謝の姿」

 壁のメニューに目を走らせてモリアスは暫く思案する。特にこれといって決まった食べたい物もないので、いつも通りの注文になってしまう。


「そうだな。今日は日替わり定食とエールを。あと、その……」


「ん?」


「君の次の休みがいつかを教えて欲しいんだけど……、演劇でも……」


 モリアスが持てる限りの勇気を振り絞ってそう告げると、クラリスが日替わり定食とエールと、と呟きながら手元の魔法紙に注文を書いていく。


 この紙は後で書いた文字を剥がすことができる、コーティングの魔法がかかった優れものだ。


「で、次のお休みは明日だけど、先約があるの。ごめんね」


 さらりと口にするクラリスの言葉に、目の前が暗くなる。


「せ、先約……。いや、あの、ごめん……」


 何を聞いているんだろう、そして何を謝っているのだろう、と自己嫌悪に陥りながら片手で目元を(おお)ってモリアスが引き下がると、クラリスは明るい笑顔で悪戯っぽく笑いながら違うよ、と否定した。


 まるで何を考えていたかを見透(みす)かされたようで、恥ずかしさに顔が熱くなる。


「弓士隊のアーリアちゃんって知ってる?」


「弓士隊のアーリア……。……斥候と遊撃のアーリアかな?」


 時々、森の魔物の間引き任務で、行動を共にすることがある顔を思い出す。


「私がなんだって?」


 クラリスの背後からひょこっと顔を出した浅黒く日焼けした女性が、自分の居ないところで自分のことを話されていることに、複雑な表情を浮かべている。


「あーちゃん!いらっしゃい。すぐ席を用意するね!」


「いや、それより私がなんだって?気になるよ!」


 青年は記憶を手繰(たぐ)り寄せてあーちゃんと呼ばれた女性が、今クラリスが言った、弓士隊に所属しているアーリアであると思い当たる。


 弓士は森に潜む斥候を行うせいか、直前まで気配に気付かなかった。


 と言うよりも、今目の前にいるのに気配が希薄(きはく)で、ともすれば見失いそうな錯覚を覚える。


「明日のお休みに、あーちゃんと買い物に行く話をしてたのよ。あ、先にオーダー通してくるね。あーちゃん、そっちの席が空いてるから掛けてて」


 そう言うとクラリスは厨房の中へ消えて行った。


 厨房から出てきたクラリスはそのままアーリアのもとへ向かい、注文を取りながら、明日の話をしているようである。


 良かった、本当に良かった。


 先約が男だったら、明日の訓練は間違いなくボロボロだった、心中でそう呟く。


 八つ当たり気味に、厳しい訓練になっていたかも知れない。


 モリアスは、アーリアとクラリスが話している姿をぼんやりと眺めながら、心底安堵(あんど)していた。


 小さく鈴が鳴り、クラリスが厨房から料理を持って、自分の席にやってくるまで放心していた青年は、日替わり定食のメインディッシュに手をつけることは出来なかった。


 緊急事態を告げる鐘の音が、街に響き渡る。


 けたたましく鳴り響く鐘の音が招集を告げ、兵士達に休憩や休日が無くなったことを告げる。


時鐘(じしょう)じゃない……」


 クラリスがその表情を曇らせる。


「ごめん、代金はここに置く。行かないと」


 そう言うとモリアスは席を立った。


 見ると店内の(ほとん)どの客が席を立っていた。


 ほぼ全員が我先にと兵舎へと向かう。


 断続的に鳴り響く鐘の音は、街に脅威が迫っていることを告げていた。


 よく晴れた日の、午後のことである。


いつもありがとうございます。リアクションがないと寂しいので、できれば評価、いいね、感想、イチオシレビュー、ブックマークをお願いします。何なら話しかけてくれるなら何でもいいのでぼっちにしないでくださいおねがいしますがんばります。

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