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逃げる元王女とそれを追う第3皇子の物語  作者: 月迎 百
第1章 ハルキ ~シェルターからの脱出と亡国の王女~ (ハルキ視点)
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4 街の広場

異世界物です。

どうぞよろしくお願いします。

 服の着方をゲンジに教えてもらい、居間に戻るとラクシュが旅の仕度をしていて、長老があれを持って行けこれも持っていけといろいろ渡そうとしていて、苦笑いして断っていた。


 ゲンジはその様子を寂しそうに見た。

 ラクシュはゲンジに微笑んだ。

「ゲンジ、俺がいない間、長老とハルキのこと頼むな!」

「本当にひとりで行くんだ。

 俺を置いて……」

「だって、ゲンジはここでもう頼りにされてるだろ。

 ここにいた方がいい。

 それに、俺といると嫁さんの来てが無くなるぞ!」

「それを言うな!」

 ゲンジは笑いながら言って「では先に広場の方に戻ります」と出て行った。


「どういうこと?」

 僕が首を傾げるとラクシュが笑った。

「ゲンジが好きになる女の子が、なぜか俺のことを好きっていうことがよくあって」

「今回はシュナじゃな?」

 長老が言った。


「あ、まあ、そうですけど……」

 ラクシュが目を伏せた。


 昼前に長老とラクシュと市場の方へ行ってみた。

 ラクシュはデーツとか干し肉とか買い物した。

 本当に旅に出る準備をしているんだ。


 市場の食堂で食べてから広場へ行ってみると、何か舞台のようなものが造られていて賑わっている。


「最初にハルキの紹介をするんですよね。

 ハルキ、いつもの様に挨拶すれば大丈夫だからね」


 ラクシュがやさしく言ってウインクしてくる。

 ラクシュって、男なの? 女なの?


 僕と長老がステージに上がり、長老が集まっている人達に紹介してくれる。


「パルシェ村の皆々よ。

 紹介しよう。

 ハルキ・ダ・パルシェだ。

 儂が彼の保護者となり、村で養育していくことになった。

 よろしく頼む」


 僕も促されて、大きく息を吸い込んだ。

「ハルキです!

 10歳です!

 よろしくお願いしますっ!!」

 頭を勢い良く下げた。


「頑張れよ!」「よろしくな」「元気がいいね!」など声が掛かり、ほっとして顔を上げラクシュを見ると拍手して微笑んでいてくれた。

 ゲンジが出てきて、ラクシュのところに連れて行ってくれた。

「ちゃんと挨拶できて偉いぞ!」

 ラクシュが褒めてくれた。

「ありがとう。頑張る」

「ハルキ、これ、預かっててくれ」

 さっきの買い物した物を渡された。

「うん」

 僕は受け取り、そこに用意されてた椅子に座った。


 長老のところにゲンジとラクシュが戻った。


「一昨日、儂の孫であり、この街の世話役でもあったアルジュナが、何者かに刺されて殺された。

 目撃者としてシュナとゲンジが名乗り出た。

 シュナはラクシュマナがアルジュナと口論になり刺したと言い、ゲンジはシュナの悲鳴で駆け付けるとラクシュマナがアルジュナからナイフを引き抜こうとしていたと言い……。

 ラクシュマナは何も語らず、一度姿をくらました。

 しかし、自分はやっていないと証明するために戻って来て、裁判を希望した。

 みんなで話を聞いて、裁いていきたいと思う。

 まず、最初から最後まで見ていたというシュナに話を聞きたい思う」


 ステージ上に長い黒髪で金色の飾りをたくさんつけているきれいな女の人が上がってきた。

 この人がシュナなんだろう。

 シュナはラクシュを指差すと話し始めた。


「私はアルジュナに呼ばれて話をしに行きました。

 話の内容はラクシュとゲンジのどちらかの嫁になって欲しいというものでした。

 私は、私はアルジュナのことをお慕いしていると私の気持ちを打ち明けました。

 アルジュナは驚き『君のことは妹のようにしか見ていない』と言いました。

 それでも私は結婚などせずにこのままお仕えてしていたいと言いました。

 そこへ、ラクシュがやってきて、私に『ゲンジではなく俺を選べ』と言い……。

 アルジュナがラクシュを止めようとしてくれた時、刺したんです。

 アルジュナを。

 アルジュナは私を守ろうとして、ラクシュに刺されたのです。

 そして、私の悲鳴でゲンジが駆けつけてきてくれました……」


 シュナがゲンジを見た。

 ゲンジが長老に促されて真ん中へ出てきた。

「俺はシュナの悲鳴でアルジュナの部屋に行くと、アルジュナの背中に刺さったナイフをラクシュが抜いているところだった。

 ナイフを投げ捨て、傷口に布を押し当て止血してた。

『早く医者を!』と慌ててた。

 俺が大きな声で医者を呼ぶ様に叫んでいる時、ラクシュはアルジュナの傷を止血しながらアルジュナの頭を抱え込むように抱きしめてた。

 なにか話をしているようだったが、内容までは聞き取れなかった。

 やがて、ラクシュが『ゲンジ、もうダメだ。アルジュナは……死んだ』と声をかけてきた。

 ラクシュもショックを受けているようだった。

 シュナが『刺したのはラクシュ』と叫んで、ラクシュは捕まって長老の家に連れて行かれた。

 ラクシュが自分はやっていないと話しているのは聞いたが……。

 その後、ラクシュが逃げたこともあり、どれが本当で嘘なのか俺には、わからない……」


 何でラクシュは自分が犯人じゃないなら、本当の犯人を言わないんだろう。


「シュナ、アルジュナはお前と結婚しようとしていたのか?」

 長老がシュナに質問した。

「いえ、ラクシュかゲンジと、と思われていたようです」

「そうか……。

 それはちと面妖なんだが……。

 ゲンジだけではなく?」

「はい、ラクシュとゲンジと言ってました」

「ふうむ」


 長老は思わせぶりに頷いた。

「ゲンジはアルジュナから言われていたか?」

「はい、シュナの婿になって欲しい、どうかと聞かれたことがあります」

「それにはなんと答えた」

「……シュナが受け入れてくれるなら、と答えました」


「ラクシュマナ、お前はそのような話をされたことはあるか?」

「いいえ、アルジュナはそんなことは一言も言っていません。

 シュナからなら、言われたことがありますが」


 シュナがすごく怖い顔をしてラクシュを見た。

「断りましたよね」

 ラクシュはシュナに微笑む。

「アルジュナも俺の従妹が迷惑をかけてすまない。

 断っておいてやると言ってくれてましたし」


 長老は大きく息を吐いた。

「そうなんじゃ。

 儂もアルジュナとラクシュからそう話を聞いていたのでな……」


 みんなの目がシュナに注がれる。


「私はアルジュナが好きで、その……。

 アルジュナも私の気持ちを受け入れてくれて、それでラクシュが……」

 シュナが何かぶつぶつ言い出した。


「アルジュナは君ではない他に好きな人がいたんだ。

 だから……」

 ラクシュがシュナに説明するように話し始めたが、シュナはそれを遮るように叫んだ。

「そうか! そうね!

 アルジュナは従妹である私を心配してくれて、ゲンジだけを薦めるとと思い、ラクシュの名を入れたのでしょう。

 私がラクシュを選ばないと知っているから、だから、私はアルジュナに本心を打ち明けたのよ!」


「ん?

 なら、俺がシュナに自分を選べということはないよね?」

 ラクシュが笑っているが冷静な目でシュナを見ている。


「でも、そう言って、アルジュナと争いになって……。

 ラクシュがナイフで刺したのよ」

「……いいかげんにしなよ。

 シュナが刺したんじゃん。

 シュナがアルジュナと話している声が聞こえて、部屋に入ったら、アルジュナになんでラクシュと一緒にしてくれないって言ってたよね。

 アルジュナも俺も何度も断ったはずなんだけど。

 なんで、あの時、俺を刺そうとしたの?

 言うことを聞かないから?」


 シュナがラクシュを睨む。

 ゲンジがびっくりして「ラクシュを刺す?」と言った。


「ああ、シュナは俺が強く断ったからか、ナイフを出して俺を刺そうとしたんだよ。

 そうしたら、アルジュナがかばって、背中を刺されて。

 だから、俺、慌てて抜いて、止血したんだ。

 でも、ちょうど場所が悪かった……。

 俺のせいなんだよな。

 シュナが殺したかったのは俺。

 アルジュナは俺をかばってくれたんだ。

 アルジュナは逃げろって言った。

 そして長老もパルシェから逃げるように言ってくれて……。

 でも考えてるうちに、アルジュナのためにも逃げちゃダメだと思うようになって、戻ってきた」

 

 ラクシュは寂しそうに笑った。

「アルジュナには結婚を申し込まれてた。

 一度断ったけれど、状況がもし変わったら考えて欲しいと。

 だから、シュナとは結婚できないし、それを知ってるアルジュナもシュナにラクシュとの結婚は無理だと断ってくれてた。

 長老も知ってる」

 シュナとゲンジが驚いている。

「ラクシュとアルジュナが?」

 ゲンジが呟き、長老を見た。


 長老が頷く。

「そうだ、ラクシュマナが絶対に明かせなかった秘密が、女性であることだ」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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