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逃げる元王女とそれを追う第3皇子の物語  作者: 月迎 百
第2章 ルクレティア ~スーリア王国の滅亡~ (ルティ視点)
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20 逃げる選択

異世界物です。

ルクレティアという小国の王女が巻き込まれていく運命を書いてみたいなと思っています。

第1章で4年後の世界を書いたので、第2章でスーリア王国王女のルクレティアがなぜ男装しているラクシュマナになったのかを書けたらいいなと思っています。

お付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 ここで今までのことを仕切り直し、スーリア王国のためにも頑張ってみようと思う。


 それには私ももっと強くならないと。

 私はやめていた剣術の訓練を再開させることにした。

 スーリアでは剣士と呼んでいるが、帝国の部隊や組みわけなどを参考にバハ大臣とも相談して騎士団というものを作ってみることにした。


 スーリア騎士団。

 おお、かっこいいじゃん。


 私の鎧や剣、手甲足甲はきれいに手入れされてあった。

 でも、白革はもう元の白には戻らずで、手入れをしてくれた防具職人が革を染めて赤茶色のような色にしてくれていた。


「お嫌なら、新しい物を……」と言われたけれど、これがいいと思えた。

 

「ううん、これがいい。

 ありがとう」


 父や祖母やいろいろな人の思い出も、戦場の記憶も、すべて自分の物だから。

 それは捨ててはいけないものだろう。


 ただ、頭の防具だけは布がもうダメで、新しい物を作っておいてくれたそう。

 布と革を使い額やこめかみ部分には飾りの様に金属の板の切り抜きが張り付けてある。

 

 身につけると、父のことを思い出した。

 うん、お父様の様に大切な人を守れる人になりたいと思う。


「騎士って感じではないな」

 ダートが私の鎧姿を見て言った。


「まあね。盾も持ってないし」


 ダートが微笑んだ。

「盾は俺に任せろ」



 私は15歳になった。


 城近くの街も人の数が増え、先に道を整備して、学校予定地を確保した。

 12歳までの子が通える初等学校はこの街にはあるので、その次の高等学校を創立することにした。


 カール先生のアイデアで、薬草や怪我の治療などを初等学校から教えることにした。

 マーサが小さい学年の先生役を引き受けてくれ、子ども達に教えてくれている。

 一度一緒に薬草探しの授業に行ったけれど、ちゃんと取り尽くさないということを伝えていて、それに子ども達が素直に頷いていたのを見て、心がほっこりした。


 戦争の復興から新たな発展という時期に入ったと思う。

 新バルカニア王国からは賠償金を払ってもらえることになり、それを使って、地方の教育環境も整えていくことをバハ大臣と決めた。

 

 帝国から派遣されてくる文官や武官ともうまく協力関係が築けて、他の国や領とも連携ができている。

 

 そんな時、衝撃的な連絡が入ってきた。

 リュートとダートは鳥を使った伝令方法を使ってこまめに連絡を取り合っているのだけれど、それによると、アニエスが病気になり、皇宮の後宮から出され、療養のためにリュートの屋敷に移ったというのだ。

 しばらくすると、無事に回復し皇宮にまた戻ったと連絡が来たが……。


 ダートの話では、皇宮の奥、つまり後宮では体調を崩したり怪我をしたりすると、このままここで亡くなることを恐れて、親元や同郷の有力者の屋敷に療養に出されるのが一般的なんだそうだ。


 あれ、ダートのお母様は?


 私が首を傾げたのを見てダートが「なに?」と聞いてくれた。

「ダートのお母様は?」

 

 ダートは苦笑いして答えてくれた。

「母は、地方から来た平民の女官だったから。

 でも、第3とはいえ皇子の母だしね。

 寝込んでしまってからは後宮の外の離宮に出されていたよ

 俺も離宮の方で育った」

「……後宮って怖いところ?」

「うーん、まあ、その時に上にいる者にもよると思うけど。

 リュートの母の正妃は悪い人じゃないけど、周囲が彼女を気にしてということはあるよね。

 だから、母は出産の時に苦しめられたわけで……。

 正妃はそういうことを命じるような人じゃないよ。

 上下関係とか、そういうことはきっちりしてるけど。

 だから、リュートは俺が不憫だみたいなことを言うけど、リュートと正妃のそばに行ってからの方が俺はきちんと世話をしてもらえてたよ。

 そう思うと、母は身分が低かったから女官も冷たかったしね。

 病床の身で幼児の俺の世話をするのは、大変だったんだろうな……」


 うーん、アニエス、大丈夫かな……。


 しばらくすると今度は怪我をしてまたリュートの屋敷に下がったそうだ。


 詳しいことはわからないが、わざと怪我をさせられたのかも……とリュートの手紙にはあり……。


 次の手紙でアニエスが亡くなったとあり、驚いた。


 私は混乱したが、ダートとバハ大臣はリュートからの手紙を見て考え込んでいる。

「これは……、本当のことじゃない。

 ルティ、アニエスは大丈夫だと思う」

「ええ、第2皇子がこちらに来るのを待った方が良さそうですね」


 なんだろう。

 何が起こっているんだろう。


 リュートがスーリア王城に到着するや、休息も取らずに話してくれたのは思いもかけないことだった。


 アニエスは生きている。

 リュートの屋敷で名を変えて使用人のひとりとして生活しているそうだ。


 鳥の伝令は万一情報が洩れたらということがあるので、内緒にするべきことを書けなかったのだという。ただ、それがわかるよう世間に発表したことだが違うという時には、ダートと決めた印を紙の隅に書き込んであるそう。



 アニエスは後宮に入ったが、北の辺境のしかも小さな王国の王女ということであまり歓迎されなかったらしい。

 新バルカニアやレイクールの人質も先に来ていて、なんか待ち構えてたみたいな?

 後ろ盾が正妃の息子の第2皇子ということもやっかみの原因になってしまったよう。

 第2皇子が保護者であるが、後宮から第2皇子の妃は選ばれない。

 微妙な立場のアニエスに嫌がらせを仕掛けてくる、同じ立場である王女や公女達が多かったよう……。


 リュートも後宮内のことはあまりわからず、侍女も皇宮の中の女官を推薦してもらって付けたそうなので、そちらからの情報もなく。

 病気が治って後宮に戻ったが、その時にはまた別の侍女が付いたのだという。


 そういうことをアニエスは何も第2皇子に言わなかったみたいで……。

 さすがに次の怪我は意地悪を仕掛けられての怪我で、かなり悪質なものだったのだそう。


 このことでリュートもアニエスに問い質し、後宮内でアニエスが辛い毎日を過ごしていたことが発覚したのだそう。


 リュートにしてみれば、スーリアにいるより後宮の方が幸せに過ごせるのではと思って連れて来たわけで、責任もある。

 私と約束したこともある。

 そこで、アニエスを亡くなったと届けて隠すことにしたのだが、思わぬことが出てきてしまった。


 スーリア王国からの新しい人質を求められたのだ。

 

 帝国の方で、最近、北へ出陣していた兵達が帰国したことで、私のことが『鬼姫』と話題になっていたそう。で、皇帝が興味を持った。

 でも、すでにアニエスが後宮に送られていたから、ね。

 そのアニエスが不幸にも亡くなったわけで、ならば、その『鬼姫』と第3皇子はまだ婚約ということだから問題はなかろうということになり、婚約破棄して、近日中に人質として後宮に入るように指示が出ているとのこと。


 後宮は皇帝か皇太子の妃を選ぶ場所になっている。

 皇太子はまだ決まっていないそうだが……。

 どんな下位の妃や寵姫でも選ばれれば、もう第2皇子と第3皇子ではもうどうしようもできないし、選ばれなくても、アニエスの様に嫌がらせを受けることは目に見えている。


 リュートはこんなことになり申し訳ないと謝ってくれた。


「私が人質になりに皇都に行くと、王家の人間がいないのにスーリア王国の名だけ残るの?」

 私が言うとリュートは頷いた。

「そうだな。

 たぶん、それは残してもらえると思う」

 

 たぶんか……。

「名前なんてどうでもいいのかも。

 私から、ここをバハ大臣とダートに託してスーリア領ということにできない?

 せっかく、ここまで復興してこれから発展しようとしているんだ。

 止めることはできない。

 民や、これからのスーリアに未来を託して来てくれている人のことを考えると、国の名前などどうでもいい。

 今のまま、平和が保てるなら、王国じゃなくなっても、いい」


 私の提案にリュートは頷いた。

「そうだな。そうしよう」


「待てよ。

 スーリア王国の名はなくなるのに、結局、ルティは皇宮で人質?!

 それしかないのか?!」

 ダートが呻く。


 バハ大臣が言った。

「王国の名を捨てるのなら、他にやりようがあるのでは?

 第2皇子、第3皇子……、帝国内であなた方がもっと力を持つにはあと何年かかりますか?」


 リュートが静かに言った。

「第1皇子か私かで、後継ぎを望む声は割れている」


「ならば、あなたが皇太子か皇帝になるにはあと何年かかりましょうか?」

「……なれるかわからないが、なれるとしたら10年後くらいにははっきりするか?」

「なって下さい。

 もしくは帝国内で皇帝に対抗できるだけの力を。

 おふたりでならできると思います」


 リュートとダートは真剣な顔をしている。


「なら、私は10年後宮で頑張ればいいの?!」

 私の言葉にバハ大臣は首を振った。


「姫様、逃げなさい」


 理解できなかった。

「……逃げる?」

「10年ほど、自由に生きてみるのはどうですか?

 王国の名のために後宮に行くくらいなら、先ほど言われた様にそれは下ろして、……逃げたらいい」

「でも、後宮に行けば……」

「後宮にいって、もし、妃や寵姫に選ばれでもしたらどうするのですか?!

 また犠牲になり、苦しむのですか?!」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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