178 メダルの少女
異世界物です。転生や魔法はありません。
第21章ルティ視点に入っています。この21章で物語は完結する予定です。
南部の砂漠を舞台に最後のシェルター2の調査、解放に向けた話が続きます。
もう少しお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
門から建物の裏を進んで、シェルター3だと宗主がいたという建物の裏あたりに来ると、そこから中に入るように案内される。
住民には会わずに入れた、というか会わないようになってる。
これで、外との繋がりがあるのを住民には隠し通していたのか。
建物の裏から荷物を運び入れ、ラクダなども塀と建物の裏につなぐところが用意されて……。
建物内の部屋も外が見られる窓がない部屋で、いくつかの部屋に分けて、店の様に品出しをする。
私は女性の服の部屋にいるように言われ、高価な金属製のアクセサリーなどもあるからとグラムが一緒。
ダートは食べ物の方へ行ったみたい。
すぐに宗主夫人だという50代くらいの女性が来た。正妻になるのかな。
グラムが品物の説明などしてくれ、私は助手みたいに服を運んだり、広げて色や模様を見せたり、手触りを確認してもらったりというような仕事をした。
夫人が気に入った服を一式と腕輪と指輪を買った。
買ったといっても、シェルターに通貨はないし、通貨があったとしてもそれはデューン共和国では使えない。
ようは物々交換で、グラムが向こうの役人っぽい人と何やら何が何キロとか、何袋とか交渉していた。
次々に順番に女性とお付きの人達が訪れる。
夫人2、3……とその度にグラムがこそっと言った。
結婚した順番?
気に入った服とアクセサリーを選んでいく。第5夫人までいた。
最後にまだ少女といった感じの16、7歳くらいの少女がひとりだけのお付きの女性を連れて現れた。
その子を見て私は驚いた。
胸に黒い石を嵌めたメダルを下げていたからだ。
「今度夫人候補に選ばれた子なのです。
初めてですが、服を選ばせて下さい」
お付きの人なのか、身内の人なのか……。
私より年上かなと思われる女性が言った。
新しい夫人って……。
宗主夫人は50代くらいの人で……。
他の夫人達も一番若くて20代後半くらいだった。
やけに若くないか?!
あ、ルリ様もこんな感じでこのメダルを身に付けていて、門に裏で繋がる宗主の建物にいる時に逃げ出したのだろう!
「ミサキ、この色、あなたに似合いそうね」
お付きの女性が少女に話しかける。
少女は静かに黙ったままだ。
「もう、せっかくの宗主のお心遣いなのに!
あなたが選ばないと、私が叱られるのよ!」
少し怒った口調で女性が言った。
少女はあきらめたような表情で、並べられた服を見回し、私を見た。
「あの人の来ている服がいいわ」
女性がずんずん近づいてくると私の右腕をつかんだ。
強く引かれて、踏ん張った私の左腕の腕輪がシャラララと音を立てる。
「脱いで!」
は?
いやいや脱ぐにしても……。
女性の手がベルトに伸びてきて、反射的につかまれている腕を回し、彼女の右手を捻るように振りほどいて、さら服をつかもうとしてきた左手をかわした。
「ちょっと何するのよ!」
いや、それ、こっちのセリフだわ。
「……待ってください。
同じ色の服があるか確認させて下さい。
もしないようなら奥で脱いで着替えてきます」
グラムも間に入ってくれた。
「これは妻の服。
本当にこれを所望?」
少女は頷く。それを確認してお付きの女性は言った。
「服の着方も見たいし、ここで脱いで着替えてちょうだい。
そちらの男性が夫なら、問題ないでしょ」
いや、問題大ありなんだが……。
私は困った顔でグラムを見てから少女に向かって言った。
「奥で着替えてきます。
少々お待ち願います」
「ひとりで着替えられる服なの?」
少女が私の言葉に反応して言った。
私は頷く。
「じゃあ、奥に私だけついていってもいい?
それで服の着方を教えて」
まあ、ひとりぐらいなら、誤魔化せるか?!
短剣とメダル、隠したままにしないと。
「では着替える服を用意させて下さい」
グラムが私に近づき、左手の腕輪を外してくれながら囁く。
「大丈夫?」
「なんとかする」
うーん、着替えるのどれにしよう。
あ、下のクリーム色のワンピースは同じものあるじゃん!
上の羽織るのと頭の布だけ替えればいいんだ!
私は少女の分の新しいワンピースと、着替えたことがわかりやすいように、今着ている青と違う色、緑色の羽織り物と頭の布を選んだ。
少女に声を掛けようとして困った。何と呼べばいいんだろう。
ミサキと呼ばれていたが、急に名を呼ぶのは変だよね。
「……お嬢様、こちらへ」
私は奥の着替えるために衝立で目隠ししている場所へ少女を案内した。
台があるのでそこに服を並べる。
「下のワンピースは同じものがありましたので、新しいこちらをどうぞ」
まず、彼女に服を脱いでもらい、説明しながらワンピースを着てもらう。
それから、私は自分の頭の飾りと布を外し、ベルトを外して羽織り物も脱いだ。
私の髪が2色になっているのを見て少女がびっくりしている。
「その髪は?!」
小さな声で聞かれた。
「少し前まで髪を染めていました」
少女がゴクリと息を飲む。
「別人になれる?」
「……身を隠す事情がありましたので」
「その、髪を染めるのはないの?」
「今は持っておりません」
本当に持ってない。全部離宮に置いてきた。
「……それは残念」
「次回……」
「次回はないわ」
ぴしゃりと言われる。
私は自分が着ていた青い羽織り物を丁寧に払い、汚れをチェックする。
うん、大丈夫そうだ。
「あなた名前は?」
少女が聞いてきて「ルティです」と答える。
「ルティ……、私はミサキ」
「はい、ミサキ様。
羽織はここに手を通していただいて……、こう整えて、ベルトをします」
一緒にやってみる。
「本当に私が着ていた物でいいのですか?」
言いながらベルトの下から布を広げたり皺を均したりしながら、ついメダルに目が行ってしまう。
「これ、明日の夜の儀式が終わるまで身に付けていないといけなくて……」
ミサキ様が薄笑いを浮かべる。
「そして、次にまた夫人に選ばれる子に渡されるのよ……」
「儀式って何ですか?」
私はミサキ様を椅子に座らせ、頭の布を被せてバランスを見る。
顔が見えやすいように縁を折り込もうとしたら言われた。
「あ、ルティみたいに少し顔が隠れるような感じでお願い」
頷いて、外してからもう一度被せ直す。
「儀式は……は私もよく知らないの。
明日の夜、新月だから、闇が深まる日で……。
昔から続くドグラとの契約の儀式と聞いているけど……」
そうか、明日、新月か!
確かに闇が一番深い夜と言えるか。
布の位置を確認したら、髪留めの輪飾りを乗せるだけ。
飾りの前後などを確認して頭に乗せることを伝えながら一緒に留める。
私は自分で頭に乗せて布の端を引っ張って位置を決め、輪飾りを乗せて調整する方法を見せた。
ひとりでやる時のやり方ね。
「どうです?
わかりました?
おひとりで着れそうですか?」
「ありがとう、ルティ。
ええ、わかったわ。
いい気分転換になったわ。
それに、この服は……、外の世界を本当に旅してきた服なのよね……」
あ、そういう理由もあったのか。
外への、自由への憧れ……?
住民でいる時は知らされていなかった外の世界の存在。
夫人候補になって、初めて、外の世界が本当は存在していることを知って……。
ミサキ様は私の手甲みたいな手首に嵌める形の腕輪があるのか? とグラムに質問し、両手首に嵌めるような腕輪をふたつ選んで身につけた。
「明日、また会って話をしたいわ。
外の世界の事を聞かせてくれる?」
「ええ、お時間があれば!」
私はにっこり微笑んだ。
ここにいると住民の様子もわからない。
ミサキ様にシェルターの中の住民の様子を聞くことができるかも!
読んで下さりありがとうございます。
第21章のルティ視点に入っています。
ゆっくりと毎日更新を心掛けていきますので、もう少しだけお付き合いいただけたらと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。




