172 パルシェ村での過ごし方
異世界物です。転生や魔法はありません。
第20章ハルキ視点に入っています。
さて、南部の砂漠を舞台にシェルター解放に向けた話が続きますが、ハルキ視点はもう後半になります。
これからもお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
無事にアーレス村まで戻ることができ、移住したい家族は移住者の場所に受け入れてもらえ、ダートの伯父さん(お母さんのお兄さんなら伯父さんだ)、アーレス村とシェルター3を定期的に行き来することをアーレス村の人達に相談して了承してもらえたそう。
ここはもう大丈夫そうだ。
みんなでパルシェ村に移動することにする。
パルシェ村をジャンやミーシャに見せるのが楽しみで仕方がない。
◇ ◇ ◇
パルシェ村に近づくとすごくにぎやかな感じだ。
大きな隊商じゃない、騎士団?
村の外でも野営をしている騎士がいた。
役場の中に入ると長老とすごく飾りのついた服を着ている人がいた。
「ローエン公爵、ご苦労」
グーシュさんが言って、その公爵と呼ばれた人がお辞儀をした。
ルティとダートが見つけてきた地図を広げる。
「だいたいの場所しかわからないけれど……」
長老が覗き込んで首を捻る。
「思っていたより近いな……。
しかし、聞いたことがない……」
「そうなんですよね。
岩屋ぐらいまでなら時々行く場所です。
そこから先、何の目印もないけれど、場所は開けてる、なのに巨大な建物を見たという人がいない。
3もそうだったけど、あえて坂を上って下りたところに作り、視線を遮っているのか?
あの先に進むと坂がある?」
僕は近づいて言った。
「あの岩屋まで僕は一晩中歩いた。夜の方が歩きやすかったから。
で、雨風をしのげるあそこから動くのが怖くなってそこにずっといた」
「岩屋から一晩……、10時間ぐらいか?
子どもの足で……。
岩屋から鳩を飛ばせてみるか……。
岩屋の辺りなら野営にもってこいだな」
長老がルティの言葉に頷く。
「足の早い者なら歩きで1日というところか。
馬ならもっと早い」
ルティが僕を見た。
「ハルキ、岩屋に戻ったら、どっちから来たかとかわかるか?」
「うん、わかると思う」
「うーん、明日は休んで、明後日出発はどうだろう?」
ダートが頷く。
「いいと思う。
ローエン公爵に騎士団を半分にするように言っておこう。
半分は出発。
もう半分はパルシェで待機だ」
「そうだね。岩屋までなら、連絡もすぐ着きそうだし。
と、私達の泊る場所は?
宿はいっぱい?!」
長老が笑って言った。
「子ども達はうちにおいで。
クリシュナが待ち構えとるぞ。
うちの近くの空き家を押さえてある。
そこにルティ達は泊ればいい」
「ありがとうございます」
ルティがほっとしたように言った。
「ハルキ、明日は休みにするからミーシャ様達を案内してやればいいけど……、出かける時はこっちに来てレッドを連れて行ってね。それだけはお願い」
「うん、わかった」
僕は頷いた。
長老とグーシュさん、ダートとアドニスとゲンジはもう少しローエン公爵という騎士団の偉い人と話をするそうだ。
ヨシュアとレッドとルティと一緒に僕らは長老の家に向かう。
クリシュナがすっごい笑顔で迎えてくれる。
「おかえり! みんな!」
ルティがどこに泊まるのかだけ確認させてといい、僕達は泊る部屋をクリシュナの案内で確認した。
「あ、ここに泊まるんだ?!」
ルティが笑った。
それは2階のあまり使っていない広い部屋で、もう、布団が4組運びこまれてた。
「みんなでわいわい楽しそうだな」
「ルティも来れば?」
ミーシャが言った。
「それは無理でしょう。ルティが来ればダート様も来ますよ」
レッドが脅すように言う。
「……うーん、それはちょっと……」
ミーシャが口ごもる。
ルティが首を傾げる。
「あれ、ミーシャ様、ダート大好きでしたよね?」
「うん、ダート兄様、好きだよ。
ルティも好き。
だけど、ふたりが一緒だと……」
ジャンが「あー! 確かに!」と言う。
ミーシャが言った。
「ふたりいるとすぐイチャイチャするから、遠慮して」
ルティが赤くなって「……はい」と言った。
クリシュナがルティ達を泊る家に案内して来るから待っているように言って出て行く。
その間、荷物を整理して、洗う物を確認して洗濯してしまうことにした。
ミーシャは全然下手でというか、やり方がわからないみたいで、邪魔ばかりするので「もう見てて!」となり、ジャンとふたりでさっさと洗って絞って干してしまう。
干している時にクリシュナが戻って来た。
右斜め前5軒目ぐらいの家で、扉の家が青いのが珍しいからすぐわかるだろうと教えてくれた。
あ、なんかわかるかも。
後で買い出しに行く時、その家に寄り、レッドを必ず連れて行くことを言われたそう。
荷物の片づけを進め、終わったところで市場に行くために4人で家を出る。
青いドアの家を訪ねると、ルティが出てきて、レッドとヨシュアも一緒に行くという。
ミーシャがすごく興奮していてキョロキョロしまくりだった。
やっぱり、皇子様なのだろう。
洗濯もできないし、市場で買い物とか初めてっぽい。
ジャンは「なんかラーダのごちゃごちゃした感じがする。懐かしい」と言っていた。
僕達は串焼きの肉をたくさん買い込んで、それから揚げパンも買いこんで……。
ルティに「野菜を食え!」と言われて、根野菜と鶏肉を煮込んだスープを買った。
ルティ達もいろいろ買い込んでた。
ヨシュアが「あれ良いですか?」とルティに言っている。
見るとお酒だった。
ルティは「まあ、明日は休みだからね。でも、飲み過ぎはだめだよ」と買ってヨシュアに持たせてた。
あっちは酒盛りか、じゃあこっちは……。
「クリシュナ、お菓子も買おう!」
「揚げパン買っただろ」
「じゃあ、クリーム揚げパン!」
「う……、特別だぞ!」
特別なクリーム揚げパンを買って貰った。
揚げパンにクリームを挟んである、揚げパンの中でも一番高い奴だ。
一度食べてみたかったんだよね。
「おいしそうだな。
このクリームの奴、うーん、6個下さい!」
ルティも買っていた。
その晩はとても楽しかった。
長老が夜遅くまで起きてていいと言ってくれ、僕達は大興奮で好きな物を食べ(ルティに買わされた根菜のスープもちゃんと飲んだ)、寝る仕度をしてから布団にゴロゴロしながらたくさん話をした。
パルシェ村のこと、見てきたシェルターのこと、僕がいた施設=シェルター2のこと。
皇都の話も聞いた。
ジャンはラーダのことも話してくれた。
ラーダってゲンジとラクシュが出会った街だよな。
それを言うと、興味を持たれ、ゲンジに聞いたふたりの出会いの話をしてやった。
ルティはゲンジと出会ったくらいにさらっとしか言わなかったので。
「へー、ルティ、かっこいいな」
ミーシャがすごく感心していた。
次の日、ルティに叩き起こされる。
「もう10時だ!
早く起きろ!
パルシェを案内する時間が無くなるぞ!」
僕達は飛び起き、仕度を済ませて1階に降りると、朝食ができていた。
パンとスープと昨日の串焼きの残りを外して炒め直してくれてあった。
あと果物とお茶。
「ハルキ、クリシュナ。ふたりを頼むね。
レッドを連れて行くこと!
ちゃんと寄ってね!」
それだけルティは言うと出て行った、
レッドを呼びに行き、僕達は村の中をたくさん探検して、昼は買い食いして、石蹴りとか他の友達も入れて鬼ごっこをしたりして遊んだ。
すごく楽しかった。
ジャンもミーシャもあまりこういう遊びはしたことがないと言いながら、やり始めると夢中になってた。
特に鬼ごっこは「騎士の練習よりきつい!」と言っていた。
そうかな?
剣術の練習の方がきついと思うけどねー。
それを聞いたレッドが「走り込みを加えるか……」と呟いていたのが聞こえた。
読んで下さりありがとうございます。
第20章ハルキ視点、後半に入りました。
レッドの最後の呟き、ミーシャとジャン、帰ってからが大変そう。
ゆっくりと毎日更新を心掛けていきますので、もう少しだけお付き合いいただけたらと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。




