110 恐ろしい暴露
異世界物です。転生や魔法はありません。
第14章ミリア視点で話が進んでいます。
出産にまつわる話が(血の描写も少し)あります。
苦手な方はご注意下さい。
話が長くなってきていますが、これからもお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
側妃様から話を聞くためにお待たせしていた部屋にみんなで移動した。
側妃様は男爵令嬢だったそう。
でも、エルガー伯爵家が親戚でその後ろ盾があり後宮に側妃候補として入ったそうだ。
その時のエルガー伯爵は前伯爵の代の時だったそう。
ネリー様の祖父ってことか。
当時の伯爵家にはちょうど年齢的に合う令嬢がいなかったので、ということらしい。
今回もエルガー伯爵家から直接ではないが、違う家を通して指示があったようだ。
それはもう皇宮の方でも把握していることなので、確認すると渋々認められた。
でも、エルガー伯爵家がシンカイ王国と繋がっていたことは知らないと言われた。
先ほどの毒薬が使われること、マルグリット様が狙われることを知っていたかのような言動について聞かれると表情が曇る。
少し判断に迷っているように見えた。
うん、ミミがどこまで知っていて、どこまで皇宮の調査に話をしているかだよね。
とぼけるか、誤魔化すか、知ってることは正直に言ってしまうか。
側妃様がリュートを窺うように見た。
リュートは無表情だ。
見事だ。まったくわからん。
無言の間が続き……。
アレク様が口を開いた。
「母様、隠していることがあるなら、ここで御自分から話して下さい。
私も今回の事での報告を読ませてもらっています。
エルガー伯爵との繋がりを正直にお話になった方がいいですよ。
母様がどこまで、御自分の意志で関わっていたのかを」
「アレク……」
側妃様が呟く。
アレク様が続ける。
「シンカイ王国が、どうして、こうもメグを狙い続けるのか。
私は、怒っているんです。
シンカイ王国に伝えて下さい。
ハカン王女マルグリットは私の妻になります。
すでにドーワルト帝国皇家の者です。
彼女を傷つけようとする者は何人たりとも許さない。
それが、母様……でもです!」
「母は!
母は言われて仕方なく……。
それに私はシンカイ王国のことは知らなかったわ」
側妃様はアレク様の強い言葉に驚きながら言った。
あ、エルガー伯爵家の方は知ってたということか。
アレク様とミーシャ様がその言葉に無表情になる。
「アレクとミーシャに危険なことはないと。
だから、母は言うなりになるしかなかったのよ。
私はずっと従ってきた!
エルガー伯爵とそれから!」
強い目で皇帝陛下を見る。
「あなたに!」
皇帝陛下が驚いた様子で言った。
「私?
私が何か言ったか?」
「覚えていないのですか?
第1皇子の事で……、アレクが生まれてすぐ仰いました。
あれは育て方を間違えてしまったって!
第3皇子の方がまっすぐ育っているからって!」
「……それは、お前にもそうしろということではなく……」
「私にはそう聞こえました!
後ろ盾である伯爵からも、アレクの無事を願うなら……と。
嫌だったのに!」
話がずれてきている。
嫌だったのにしなければならなかったこと。
過去、嫌だったことを語り始めている……。
「そうよ。
嫌だったのに。
エルガー伯爵、そして陛下からも言われて……。
それに寵姫のことを考えたら、怖くなって、結局手離した……。
自分で育てたかったわよ!
大切な我が子ですもの!!
大切だからこそ、手離した!
そうしなければならなかった。
私に選択肢はなく、自由もなかったのよ!」
「寵姫のこと?」
正妃様が苦しそうな表情で聞き返す。
「自分が陛下の皇子を産んだ時、寵姫のことを思い出したの。
寵姫は第3皇子を育てるのに、とても苦労していた。
だから、私も同じことになるのではと……。
手離すことを前々から伯爵には言われていて……。
少しでも皇帝の座につける可能性を上げるにはって。
産んでみて、なんてかわいくて、我が子ってなんてかわいいのだろうって。
こんな大切な……、寵姫はどんなに苦しかっただろうって。
寵姫が死んで、第3皇子が正妃に預けられて、彼はきちんと世話を受けられるようになった。
それを見ていたから、アレクもミーシャも1歳過ぎて食事が摂れるようになって、手離して……」
「ルリのように嫌がらせを受けたりしたの?!」
正妃様の悲しげな問いに側妃様は首を振った。
「嫌がらせはされてない。
寵姫のことがあったから、あなたが守ってくれたから。
でも、差し出さなきゃならなかった。
我が子をあなたに!
それに、寵姫が、ルリ様が私の前に現れるの……」
何か嫌な感じがする。
私はアレク様とミーシャ様を外に出した方がいいのではと立ち上がった。
「何故、ルリがあなたの前に現れるの?」
正妃様が聞いてしまった。
私がアレク様とミーシャ様のそばに行った時に側妃様が口を開いた。
「あの時、寵姫が……。
ルリ様が、医師を呼んでって。
私、そのまま、彼女の部屋のドアを閉めた。
見て見ぬふりをしたの。
……死んでしまえばいいって思った。
みんなそう思っていた。
だから、みんな同じようにしたわ。
私だけじゃない。
彼女がいたら、陛下は次の側妃も寵姫も選ばないと思ったから……」
アレク様が衝撃のあまり目を見開いている。
ミーシャ様はまだ理解が追い付かないようで私を見た。
私はミーシャ様に外に出るように動作で促したが首を振られた。
「あなただったのね……」
正妃様が呟いた。
「いえ、私だけじゃないわ。
その後、寵姫の部屋から助けを乞う叫び声がしばらくしていたけれど、誰も、誰も見にいかなかったもの。
だから正妃様が無事に出産したという一報を聞いてから、女官達と恐る恐る見に行ったのよ。
寵姫は血だらけで、青白い顔で、弱々しく泣く血だらけの赤ちゃんを抱きしめていた。
さすがに赤ちゃんは皇子だから、医師を呼ばないとってなって。
その後、身体が不自由になった寵姫は離宮に出されて……。
満足な世話は受けられていない様子だったわ。
それを見ていたから……」
「……ルリにしたことを今度は自分にされるのではと恐れたの?」
側妃様は正妃様の問いかけに笑った。
「いえ、だって、正妃様が守って下さるから、大丈夫でしたよ。
私はルリ様の一番の仲良しでしたものね。
ルリ様もその後、何も言わなかったし……。
あきらめたんだと思う。
子どもを守るために、黙ったのかしら……?
……でも、見てるのよ。
気づくと、私の回りにいる女官の中にいるの。
怒っているでもない、悲しんでいるわけでもない。
ただ私を見てる。
なんでか、私を、見てる……」
みんなあまりのことに黙りこんでしまった。
えーと、でも、全然知りたいことはわからないまま。
「側妃様……、エルガー伯爵家が雇われるように勧めてきた女性がシンカイ王国の連絡係だと言うことはご存じだったのですか?
毒物のことは?」
私が言うと、側妃様は顔を引き攣らせた。
「もう話すことはないわ」
「いえ、聞いたことに答えて頂いていません!」
「……ミリア、ありがとう。
側妃、きちんと答えて欲しい。
寵姫のこと、過去のことはわかった……。
今、聞いているのは……、現在のことだ。
マルグリットやアレクに関わること……」
陛下が何とか気持ちを立て直してくれたようだ。
正妃様はまだ呆然としている。
私はミーシャ様達から離れて、側妃様に近寄った。
「大切なことです。
答えて下さい」
「うるさい!」
側妃様が私につかみかかってきた。
えっと、やり返したら、不敬になるのか?!
考えてしまって、どう対応したらいいのか迷ってしまった。
ブラウスの襟元をつかまれ、強く引っ張られた。
布がちぎれる、糸が切れるような音がした。
私はさすがにやられっぱなしはと思い、身体をねじって側妃様の手を振り払った。
側妃様が私の胸元を見て悲鳴を上げて、後退る。
「シンカイ王国のことは知らなかった!
伯爵家のほうで、アレクに帝国貴族の婚約者をという話を聞いたわ!
そのために毒を使うけれど、アレクとミーシャに害はないって!
それ……、あなた……、寵姫なの?」
私は自分の胸元を見下ろした。
ブラウスの前が少しはだけてしまい、ダートのペンダント、つまりお母様のメダルが身体をねじった時に外に飛び出していた。
慌てて前をかき合わせて、メダルを服の中に入れた。
「私にやり返そうと?
寵姫の亡霊なの?」
側妃様の言葉に心がズキッと傷んだ。
そうだ、今の私は亡霊みたいな存在かもしれない。
読んで下さりありがとうございます。
第1章の話のラクシュの空白の3年間を展開していっています。
ブックマークをしてお付き合いして下さっている皆様、いいねを付けて下さる方、ありがとうございます。
自分でも複雑な話になってる気がしますが、最後まで書ききるつもりで進んでますので、応援して頂いていると思えて、励みになっています。
本当にありがとうございます。
ゆっくりと毎日更新を心掛けていきますので、長くお付き合いいただけたらと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。




