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第十七話

一日更新ができずすみませんでした。


―――『どうしてくれんのよ! あなたのせいで、あなたのせいで、私は()()()()()()()()()()()()じゃないのッッッッッ!!』

側妃がその言葉を放った瞬間、僕は映像を止める。

王の方に顔を戻すと、驚きの表情で王は映像と、現実の側妃を見ていた。

まだ頭の整理が追いつかないかな?


ちなみに、公爵様は知っていたから何も言わずに淡々とした表情で前を向いている。

それに対し、エルファ様は驚き、両手で口を覆っている。


「そこな者…フォリアンといったか?」

「はっ。」

王様よりも早くに頭の整理がついたらしい王妃様が、僕に話しかけてくる。


「この映像は真のものか?」

はっ、とした表情でこちらを見る観衆たち。

「はい。それを証明してくれる物証がございます。それに加えて、証人もおります。」

そこまで言うと、公爵様が話を引き継ぐ。

「この時の侍女を我が公爵家で匿っております。数名の刺客に狙われていた模様です。」


はぁ、と嘆かわしげにため息を吐く王妃様。そのため息にピクリと肩を震わせ反応してのは、側妃だ。

王妃は、側妃に蔑むような視線を投げる。

それを見た側妃は悔しげにギリギリと唇を噛み締め、こちらを睨みつけてくるが、別にこちらのせいではなく貴方の自業自得なので、にらまないでほしい。

エルファ様が怖がっちゃうじゃん。


それにしても、この王妃様演技派だね!

事前に公爵様と話を付けてるから、全部知ってるはずなのに…。

というかまず、怪しい動きをした人には王宮の影を付けてるから、側妃の行動は全部筒抜けなんだよなあ……。

貴族なら絶対に知ってると思うんだよ。

だってさ、


『黒い子 黒い子 影の子よ

 悪い子 悪い子 見られてる

 黒い子 黒い子 王様を

 ずっと ずっと 守ってる』


っていうような詩を聞かされて育つらしいからね。

ちなみに、これ二番もあって、もっと怖くなってるんだよね。

ちっちゃい子にもわかるように簡略化して罪の内容が詳しく書かれてるの。

……この詩の話は置いといて。


「うっ、嘘よ!! こんなの、嘘に決まってるわ!!」

ついに、側妃が叫んだ。

嘘って言われてもなぁ…。僕が集めたんじゃないし。もとから公爵様が然るべき時に交渉材料にするために取っておいたやつだし。

いやぁ、大人って怖いね。


「ルルティアよ、今は我が話しているのだ。控えよ!」

そう言うと、王妃は側妃を手で指し示す。

「…っっ!」

流石に、近衛騎士たちに取り囲まれるのは堪えたのか、大人しくなる側妃たち。

側妃は悔しげに爪を噛んだ。

その表情はもう鬼のように怒り狂っているが、自業自得なので気にしない。


「すまぬな、フォリアンとやら。映像を続けてくれるかの?」

「かしこまりました。」

僕は再び魔道具を起動する。

「っっっっっっっ…!!!!!!」

側妃が声なき悲鳴を上げているようだけど、別にどうでもいいかな。


―――『何を…ッ! 何をやっているのですかッ!? 側妃様!』

映像の中で、レェラとかいう侍女が、顔を真っ青にして叫ぶ。

その瞳は驚きで見開かれている。


―――『何をって、貴方が勧めたんじゃない!! 今代の王は王妃に尻に敷かれているからもうダメだ、って言ってッ!』

そう言って、怒りのままに側妃は鞭を振り下ろす。

幸い、その先には侍女がおらず、ビシッ、と床を叩いただけですんでいた。


ちなみに、今も側妃とその隣に控える侍女、レェラに周りの貴族たちや王族の皆様から厳しい視線が注がれている。王弟さんも同様だ。

あーあ、怯えて顔真っ青だし、すっごい汗もかいてるし。

そんなふうになっちゃうなら、最初からやらなきゃよかったのにね?


―――『落ち着いて下さい、側妃様。今はそれより、腹の中の子をどうするか決めましょう。』

レェラは侍女たちを下がらせる。

一介の使用人如きがこんなことできるのかな?

王宮では、これが普通なの?


―――『うるっさいわねッ、勿論下ろすに決まってるでしょ!? あぁ、もう…ッッ。せっかくこの国を支配するためにここまで来たってのに、台無しじゃないッ。』

そう言って、ぎりぎりと唇を噛みしめる側妃。

その唇からは血がポタポタと滴り始め、ドレスを汚している。

そして、その問題発言をこの場の者全員に聞かれたことによって、更にガタガタと震える側妃。そんな側妃の周りを取り囲む騎士たちも、心做しかさらに厳しい目になった気がする。


―――『冷静になって考えて下さい、側妃様。その子供を王の子供としたら良いことでしょう。次の陛下のお通りはいつです?』

そう言いながら、優しく側妃の手から鞭を取り上げるレェラ。

その貌には歪んだ邪悪な笑顔が浮かべられている。

レェラの言葉を聞いて側妃もそのことに思い至った様子で、同じ笑みを浮かべる。


―――『……陛下のお通りは、二日後ね。凄い良い考えだわ、レェラ。ふふ、ふふふ! そうね、この子の名前は……―――』


「いやぁあああああああ!! やめてぇ!!」

いつの間にか泣き出していた側妃は涙と鼻水と汗で顔をグシャグシャにしながら叫んだ。


―――『ハーディー。そう。ハーディーにしましょう!』

過去の側妃の、嬉しそうな声が響いた。


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