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第十四話


「―――私とマリルが歩いていたその時! 突然、上から水が降ってきたのだ! もちろん、そんなことには気づいていた私は、マリルを引き寄せ、かばったのだ! すごいだろう。ハッハッハ!!」

うん、うるさいね。

別になんにもすごくないから。だってそんなこと起きてないし。あと、ムカつくからちょっと口を閉じててくれないかな。


あ、こんにちは。アルだよ。

今、僕は、未だにハーディーのなっがーい話を聞かされてる。

いっそのこと、ずっと息をしないでいてほしいくらいだよ。


ハーディーの言う、マリル嬢への嫌がらせは実際あった。ハーディーがそれを庇ったことはないけどね。

犯人は下級貴族―――この王子の醜態を知らない者たちの嫉妬によるいじめだ。

この惨状を知っている上級貴族や中級貴族の面々は被害者であるマリル嬢にただただ憐れみの目を向けていた。まぁ、こんなのでも王子だから庇ったりは流石にできなかったみたいだけど。


「そうですか…。」

ハーディーの無駄に長い話が終わり、ふむ、とマリル嬢が黙り込む。

なにか考えているのかな? …上手くハーディーを破滅させる方法とか?


「さて、エルファよ! お前は罪を認める気になったか?」

「……恐れながら、殿下。私はそのようなことをしておりません。」

エルファ様が少し疲れている声色で言った。

これまでずっと立ったまま放置されていたからね。他の貴族たちと違い、歩き回るわけにもいかないため、体に疲労が溜まっているだろうし、あのハーディーの話が聞こえる位置にずっといたのだ。気も滅入っているだろう。


「ふん! これだけ証拠があっても罪を認めないとは、貴様は本当に強情な女だな!」

………。うん。

頃合いかな?


「少しよろしいでしょうか? ハーディー…殿下。」


―――愚かな者を引きずり下ろす、本当に意味での断罪劇が始まった。


  *


「少しよろしいでしょうか? ハーディー…殿下。」

僕は、一歩前に出てハーディーに声をかける。

心のなかで「ハーディー」と呼び捨てにしていたから、少しハーディーと殿下の間に間ができてしまったのはちょっとやっちゃったかな…。

「ちょっ…。」

一歩前に出た僕に驚いてエルファ様が思わず声を出す。…だが、時すでに遅し。あのハーディー(お馬鹿王子)が反応していた。


「誰だ? その服……エルファの従者か?

従者如きが俺の話を遮るとは…。覚悟はできているんだろうな?」

「ええ、まぁ。」

僕のしている覚悟は、お前を断罪する覚悟だけどね?


「ふんっ! まぁいい。なんだ? 言ってみろ。」

僕が素直に答えたのが良かったのか、即座に警備を動かさることはなかった。流石に警備を動かされたら……暴れないっていう保証はない。

まぁ、そこらへんはこの断罪に協力してくれているらしい公爵様とファスター様が手を回してくれるだろうけどね。


ちなみに、こんなにエルファ様が馬鹿にされているのにエルファ様()が大好きなファスター様がこっちに来ないのは、会場にスタンバイしてくれている公爵様のおかげだよ。さっきエルファ様のために軽食を取りに行っていた時に、公爵様に半ば羽交い締めにされているファスター様を見かけたよ。

ファスター様が我慢できずに出てきたらそれこそ計画がパアになるからね。

この一年間とちょっと、準備してきたことが全て無駄になるのは避けたいし。

公爵様に後でお礼言っとこうっと。


「私は、公爵様からとある手紙を預かっておりまして、この場で読み上げさせていただきます。」

そう言って僕は懐から一枚の紙を取り出す。

「『アルゼスター・デューク・フォン・アラミストの名において、我が娘、エルファ・フォン・アラミストと、第一王子殿下であるハーディー・フォン・ウール殿下の婚約の解消を求める。』…………以上です。」

言い終わった僕は、ハーディー殿下に偽物だとか言われないように、公爵家の証であるリリーヴィリーの花をかたどった紋章が押してあることを確認させる。


「な……な………。」

流石にこれには驚いたのか、ハーディー殿下は目を大きく見開き、口をパクパクと開閉する。魚みたいで滑稽だね。

「この話はもうすでに国王陛下へと通してあるそうですので、あとは国王陛下のご判断を待つだけかと。」

流石は公爵様だよね〜。抜かりない。最初からこうなることを見越して動いていたんだからね。いっそのこと、未来予知の権能でもあるのかと思っちゃうよ。


「ふ、ふん! では正式にエルファとの婚約が破棄されるのだな?」

「……そうなるかと。」

まぁ、破棄というか解消だけどね? しかも、貴方の一方的な狼藉で。


「では、もう良い! 疲れたので、俺はもう失礼する!」

そう言って全く真意を理解していないのに去っていくハーディー。

その後を慌てて追って行く宰相子息と騎士団長子息はどこか滑稽だった。



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