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オーギュスト公爵家①

オーギュスト公爵邸。



ここではほんの数日前まで幸せな家族が過ごしていた。



だが今公爵邸にいる人間たちはとてもじゃないが幸せそうには見えない。



全員が暗い顔をして黙りこんでいる。



「・・・旦那様。」



当主に話しかけたのは古参のメイドだった。



「・・・お前もやめるのか。」



当主は虚ろな目をメイドに向けた。



「はい。申し訳ございません・・・。」



もう何人の使用人が辞めていっただろう。



「・・・私はリリスお嬢様にひどいことをしてしまいました。」



メイドが泣きそうな声で言った。



今まで辞めた者たちは皆同じようなことを言って辞めていった。



全員が罪の意識に囚われているのだろう。



「・・・それに関しては私たちも同罪だ。」



当主もシルビアの魅了にやられリリスを虐げたうちの一人である。



だがメイドの決意は固く、もうすでに荷物をまとめてあるらしい。



「・・・分かった。今までよく働いてくれたな。」



当主は最後にそう言ってメイドの願いを聞き入れた。





当主はハァとため息をついた。



執務室の机の上には書類が山積みになっている。



普段の彼なら問題なく捌ける量だ。



だが今の彼は書類を捌けるような状態ではなかった。



「リリス・・・・。」



魅了が解けてから彼の頭の中を占めているのはいつだって一人の少女だ。







シルビアの魅了魔法が解けてからはオーギュスト公爵家総出でリリスを探した。



リリスは見つかった。



だがリリスはもう新しい環境で新しい家族と幸せに暮らしていた。



リリスは公爵邸に戻るつもりはないとハッキリ言った。



それがどれだけ彼らの心を抉ったか・・・。



だがリリスの受けた仕打ちを考えればそれは当然のことである。



それでも彼らはそれがショックだった。



公爵夫人はあれからずっと寝込んでいる。






―コンコン



執務室にノックの音がする。



「父上。お呼びでしょうか。」



入ってきたのはオーギュスト公爵家の令息アーノルドだ。



リリスの実兄である。



「・・・アーノルド。私はそろそろ引退しようと思う。そうしたらお前に―」



アーノルドは実父の言葉を遮った。



「父上。私は公爵位を継ぐつもりはありません。」



「な、なんだとっ!?」



その言葉に公爵は驚いた。



「オーギュスト公爵家を継ぐことができるのはお前しかいないんだ。お前も公爵になるために今までたくさん勉強してきただろう。それなのに、何故だ?」



するとアーノルドは苦しそうに顔をゆがめた。



「・・・私は今、公爵になりたいとは思わないし、社交界にも出たくない。とにかく今は誰かと関わりたくない。父上、どうか私を廃嫡にしてください。」



アーノルドはハッキリとそう言った。




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