シルビア・ヘインズ②
その日、私は王宮の舞踏会に家族全員で行っていた。
ドレスはラウル様が最高級のものを用意してくれた。
やっぱり私は美しい。
「あれが公爵家の養女になったっていう・・・。」
「シルビアっていうらしいぞ。なんて愛らしいんだ。」
「リリス嬢はシルビア嬢に嫌がらせをして勘当されたらしい。」
「シルビアに嫉妬してたのか。当然の末路だな。」
みんなが私を美しいと褒め、リリスを貶す。
あぁ、最高に気分が良い。
ファーストダンスはもちろん婚約者のラウル様と踊って、その後にお父様、お兄様と踊った。
その後はもう大変だった。
令息たちが我先にと私にダンスを申し込んでくる。
舞踏会に招待されていた令嬢たちもそんな私を尊敬した眼差しで見ている。
やはり私はみんなから愛されるお姫様なのだ。
そう思っていたとき―
「「「キャー!!!!!」」」
な、何なの!?
令嬢たちが歓声を上げた。
私は令嬢たちの視線の先を見る。
その瞬間私は目を奪われた。
・・・なんて美しい人・・・。
令嬢たちの視線の先には二人の男性がいた。
二人とも同じ金髪碧眼の絶世の美少年だった。
「第一王子殿下と第二王子殿下よ!!!」
その言葉を聞いた時、私は欲を持ってしまった。
あぁ、あの二人を篭絡することができればどれだけ気持ちいいだろうか・・・。
この国で最も尊い血筋、誰よりも美しい容姿。
私は自然とその二人の元へ歩いていた。
私に気づいた令嬢たちが道を空ける。
私が王子に近づくと、二人とも私のほうを見た。
いけるわ!
「初めまして、王子様!私、シルビア・オーギュストっていいますっ!」
にっこりと微笑んでみせる。
これできっとこの二人も落ちたはず!
私はそう確信して王子の顔を見た。
・・・・・あれ?
目の前にいる王子は二人とも私に興味のなさそうな顔をしていた。
それどころか、どこか敵視しているようにも感じた。
な、何なの・・・?
「シルビア・オーギュスト?オーギュスト公爵の娘はリリス嬢だけではなかったか?」
怪訝そうな顔でそう言ったのは第一王子だ。
「兄上。数年前オーギュスト公爵の弟夫婦が亡くなり、その娘であるシルビア嬢を公爵家が引き取ることになったのですよ。」
後ろにいた第二王子がそっと第一王子に耳打ちした。
「あぁ、あのリリス嬢を貶めたっていう・・・」
第一王子は私に蔑むような瞳を向けた。
!?
な、何故それを知っているの?
それにこんな視線は初めて向けられた。
それを見た周りは私を庇った。
「ひどい!いくら王子殿下でも言っていいことといけないことがありますわ!」
「そうだ!シルビア嬢が可哀そうだ!」
やっぱりみんなは私を愛してくれる・・・。
だが目の前の王子二人はその言葉にも動揺することはなかった。
それどころかコソコソと何かを話していた。
「兄上、これはもしかすると―」
「あぁ、間違いない。」
何?何を話しているの?
私が聞こうと口を開きかけたその時―
「国王陛下、王妃陛下です!!!」
貴族たちが一斉に臣下の礼をとった。
私も慌ててそれに倣う。
国王陛下に王妃陛下・・・。
そうよ、この二人に気に入られれば!
王子二人も私を気に入ってくれるかもしれない!
私はそう思い、すぐに国王様と王妃様の前に出た。
「国王様!王妃様!私、シルビア・オーギュストっていいますっ!」
二人の前でも愛想良く自己紹介した。
きっと私を気に入るわ・・・!
そう思っていた。
だが、国王様は冷たい視線を私に送り、王妃様に至っては眉をひそめていた。
すると王妃様が突然立ち上がり、声を上げた。
「衛兵、この者を今すぐ捕らえなさい!!!」
・・・え?
私はすぐに衛兵に取り押さえられてしまった。
「何!何よ!何なのよっ!」
「皆の者、よく聞きなさい。この者は《魅了魔法》を使用しています。」
会場中が騒然となる。
私は王妃様が何を言っているのか理解できなかった。
「待って!魅了魔法って何よっ!私そんなの知らないっ!」
私は魔力封じの枷を手に付けられた。
その瞬間周りの貴族たちの様子が変わった。
「そうだ、よく考えてみればその女はマナーのなっていないただの阿婆擦れだ!」
「あんな女に一時でも傾倒していた自分が情けない。」
「・・・私は何故リリス様のことをあれほど悪く言っていたのかしら。」
「リリス様がそんな愚かな真似をするはずがないのに。」
何よ何よ何よ!!!
みんなさっきまであれほど私のことを可愛いって言ってくれたくせに・・・!
「ウワアアアアアア!!!!」
その瞬間、物凄い叫び声が聞こえた。
驚いて声のする方を見てみると、お父様たちだった。
オーギュスト公爵家の三人とラウル様が絶望したかのような顔をしていた。
え、何?何なの?




