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再び訪れる悪夢

「ゴホッゴホッ…何だここは…」




視界が鮮明に見える以前に状況がおかしい事はキリヤ含めて皆すぐに感じた。

生臭い血の匂いに何かが燃えているような煙の匂い。

違うパラレルワールドに行ってしまい、戦場にでも来てしまったのでは無いか。もしくは悪夢でも見ているのか誰もがそう思った。




「かなめぇぇぇ!!!!」




フィリアスの悲痛な叫び声が聞こえて、違うここが現実であると皆が我に帰る。

辺りを見回すと要が大怪我をして倒れていた。

出血も酷く片腕が無い状態で倒れている。

皆が大慌てで要の元に駆け寄る。

自分で応急処置はしていて、何とか命を繋ぎ止めているような状況だった。



「要!大丈夫か!今すぐに治す!」



「……リヤく。逃げて…」



キリヤがパージをかけようとすると、その前に要が掠れた声でだが悲痛な表情で訴えて来た。

あの要が震え怯え逃げるように訴えかける状況に背筋が凍った。




「あいつ…には…勝てな…い。早く!!逃げ……て。」




そのまま要は気を失ってしまった。




「クララ!お前は何をやってたんだ!!」



狂気に満ちた顔でフィリアスはクララを睨みつけた。

こう言ったリスクアセスメントはクララの仕事だ。

クララは戻って来た時から顔面蒼白で冷や汗を垂らしてパニックになっている。



「最近調子が悪くて…パラレルワールドが見れなくてどうなってるのか何でなの?」



最近クララの様子がおかしいとは皆感じていた。

クララがパラレルワールドを見ているような気配を感じない日々が続いていた。

このような事態になるのであれば先に言って欲しかった。



「ここで悩んでいても仕方ない。キリヤ先ずは治療。」



ここ数日一番クララに冷たかったリアがすかさずフォローを入れ、キリヤはすかさずパージで要の傷を無かった事にした。

しかし、要の深い傷は外傷よりも内面的な部分の傷が大きいような気がした。

キリヤのパージはメンタル的な部分は当然だが元に戻すことは出来ない。

要は気を失ってもなお体が震え続けていた。




「要がここまで追い込まれるなんて‥」



フィリアスも周囲を警戒しつつ心配しながら近寄って来た。

一方のクララは状況が読み込めずにずっとパニックになっている。それを隣でリアが支えていた。


そんな中でルナだけが一点を見つめて足を震わせていた。



「パパ?‥ママ‥??」




ルナの声に反応し、一同がその先に視線を移すとそこには既に生気を感じないルナの母親が倒れていて、父親の方も既に生き絶え、過去にボコボコにやられてしまった仮面を被った男に首を鷲掴みにされていた。




「ちっちがうのなんで?ほんとになにが?」



この状況を一番理解したくないルナが状況を理解し、怒りの余りにクララを睨みつけた。

勿論クララだけを責めるのはお門違いではあるのだが、しかし、パラレルワールドを見れなかった事さえ伝えてくれれば回避できた可能性だってある。



ここまで仲間の大事な存在達を傷つけてしまい、更に殺意の目で見られた事でクララの心でグシャリという音がした。



「ロス‥貴様だけは‥コロス!!!」



ルナ自身も過去に受けたダメージによる恐怖と大事な家族を葬られた怒りが混ざり足が震えながらも魔力を最大放出して仮面の男に殴りかかりに行った。



「はぁぁぁぁっ!!ゴプッ。」



自分自身に不利益が生じた時に怒り冷静に考えられずに一目散に飛び出すのはルナの長所であり短所だ。

近くにいた魔族の存在に全く気が付かなかった。

その近くにいた魔族の手がルナの腹部を貫いた。



「よぉさっきぶりだなぁ下等種族ぅ」




「ダマンティス‥なん‥でお前‥グハァッ」




そこには仮面の男の仲間として既に

倒した筈の魔族達がいた。

ラダマンティスはそのまま回し蹴りをしてルナを突き飛ばした。




「なん‥で?こんな‥筈じゃ。」



クララは膝から崩れ落ち呼吸が荒くなる。

キリヤが急いでルナに近寄りパージをかけたが今の一瞬の攻防で皆が察してしまったのだ。

いくら視野が狭まっていたとはいえ、あれだけ実力差のあったラダマンティスとルナとの間に一瞬で決着を付けられてしまうほどの差が出来てしまっていた。


魔族達は格段に強くなって復活している。

そして恐らくその要因は。



「仮面の男を潰す。私が出る。」



魔族が強化されて復活した要因。

恐らくは仮面の男の仕業だろう。

要をあそこまで追いやったのは恐らく仮面の男の技だとフィリアスは踏んだ。

そして、そんな相手を他の仲間に任せるには荷が重すぎると踏んだのだ。




「悪いけど一瞬で終わらせる。エクスプロージョン!!」



フィリアスは一切の加減をせずに全力で魔法を放った。

一撃で国を滅ぼせるだけの魔法だ。

まともに撃ち合えるものはほぼいないだろう。


しかし仮面の男は焦った様子も無く右手を挙げた。



「指パッチン」



仮面の男が指をパチンと鳴らすとフィリアスの魔法はフッと無くなってしまった。

一瞬何が起こったのか分からなくなったのはフィリアスだけではなかった。




「何をやったかは知らないが何度も猫騙しは通用しないぞ。」




フィリアスは所謂多重詠唱というものを行った。

一発のエクスプロージョンだけではない様々な技を複数個同時に唱える。



「バケモンじゃねぇか。」



ルナを一瞬で蹴散らしたラダマンティスさえも冷や汗を流しフィリアスをバケモンとそう捉えた。

だが、そんな状況にも仮面の男は表情一つ変えなかった。



「次元が違うんだよなぁ全く。」




男はやれやれとため息をついて指をパチンと鳴らすと全ての魔法が消え去ってしまう。

そして瞬時にフィリアスの前に躍り出ると顔を手で鷲掴みにするように覆った。



「リロード」



「がっくっあぁぁぁぁっ!!!」



男が呪文を唱えるとバキバキとフィリアスの体が鳴り始めて悲痛な叫び声が響き渡る。

そのまま男が手を離すとその場でフィリアスは倒れ込んだ。



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