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ライディン

食事の支度が整い俺とフィリアスは先に食事をする場所に先回りしていた。

ここだけの話だがフィリアスは料理のセンスのカケラもなく隣で見ていてヒヤヒヤもしたし、笑いそうになったのも秘密にしておこう。


「フィリアス、毒は何処に…」



「ちょっと待ってて………あった。父上様のワイングラスに遅効性の毒が塗ってある。」




「パージ!………どうだ??」



「うん、ちゃんと消えてる。後は私が何とかする。キリヤはグロウの動きに注意して。父上様の事お願いね。」



兄弟喧嘩にまで口を出す趣味は無い。

それにグロウとさっきすれ違ったが、あれは人間では無い。100年後の現代で魔族に滅ぼされたと言っていたし、恐らくグロウが黒幕だ。

こちらとしても初の実戦になるかもしれない。スキルの使い方や体のキレ等急成長した自分の能力を測れる良い機会だ。

国の為、自分の為にも負けるわけには行かない。


この国の将来を決める大事な戦いが始まった。





「それでは、三人とも揃った事だしいただくとしよう。」



俺は王室の食事というのを初めて見るがルミナス王国の食事風景は少し親近感があった。

三人の距離感もさほど遠くなく尚且つ様々な料理が並んでいる。

めちゃくちゃ長い机に向かい合って座るとかってのが主流だと思ってたんだな。



「ささ、父上様、フィリアスが女性として一歩を踏み出した門出の日です。どんどん飲んでください。」



ユリアスは不敵な笑みを浮かべながらワインを注ぐ。国王もユリアスにワインを注ぎ二人で楽しんでいる。



「門出なんて大袈裟な。でもありがとうございます。

今回私としても一歩踏み出せたという事もあり、実は今日父上様が使っているグラスは新調したものを用意したんです。兄上様もいずれ父上様の背中を追うべき存在。

ですので父上様がいつも使っているグラスを兄上様に使って頂いているのです。」



勿論全て嘘だ。

それっぽい事を言っているだけで全てが嘘だ。

だが案の定予想通りユリアスの顔がみるみる青くなっていく。



「ばっ馬鹿野郎!!なんて事しやがったんだぁ!今すぐ医者を呼べ!毒が回る!早くぅ!!」



ユリアスはパニックになり大慌てで叫んでいる。




「兄上様、どうして父上様がいつも使っているワイングラスに毒が盛られているんですか?」



ユリアスが嵌められたと気がついた時には遅かった。

国王も憤りの眼差しでユリアスを見る




「ユリアス、これはどういう事だね。」




「グロウぅぅ!殺れぇぇ!!」



グロウは剣を抜き凄い速さで国王へと迫っていた。




「させるか!」



国王との間に入り剣を受け止めて押し返した。




「なんでお前がここにいるんだ。」



隠密が解けた俺の姿を見てユリアスが驚愕する。


「お前らの作戦は全部お見通しだったって事だよ!!」


俺はグロウに斬りかかるも避けて後退した。


「………いだ」



「てめぇのせいで、俺の計画がめちゃくちゃだぁ、フィリアスを潰し損ねて邪魔な奴を消す時にも邪魔しやがる!」



「おい、グロウ契約と話が全然違うじゃねぇか。俺が国王となって政権を振るえる日が来るんじゃねぇのかよぉ」



全てがバレてしまったユリアスはグロウに近づいていく。

グロウの様子が段々とおかしくなっていく。



「よせ、ユリアス!近づくな!」



俺が叫ぶも少し遅かった。

グロウの手は魔族のような手へと変化してユリアスの顔を鷲掴みにした。



「いつから、対等の契約だと勘違いしていたんだ愚か者め。王族の血筋だから使えると思っていたのにとんだ役立たずだ。最後ぐらい良いコマとして動け」


段々とユリアスが黒く染まっていく。

叫び声も弱々しくなり途絶えた。

ユリアスから悪魔のようなツノと翼が生えてくる。既にユリアスとしての意識は無いようにも思える。



「……キリヤ!!どうしよう!!」




「俺はグロウの方をやる。フィリアス、お前はバカな兄貴との兄弟喧嘩に決着をつけてこい。」



フィリアスは分かったとだけ言うとお互いに対峙する。



「我に歯向かうか人間がときが。少し予定よりも早いがまぁ良い。この国を血祭りに染めてくれようぞ。」


グロウは王城を突き破り空へと飛んでいった。

国民の人たちが危ない。



「キリヤ!!」


フィリアスが心配そうな顔で見つめてくる。

そんな、心配さんなって。



「大丈夫だ。お前は今目の前のバカ兄貴の目を覚ましてやれ。」



俺は身体強化の魔法をかけて空へとジャンプした。



ーーーーー

フィリアス視点



「兄上様…目を覚まして下さい。」




「こ…ろ…す…」



私は父上様を背に向けて守りながら兄上様を説得して目を覚まさせようとしていた。

しかしながら兄上様は既に魔族の手によって取り込まれていて私の声が届かない。

兄弟喧嘩なんて簡単に表現されてしまうならどうにかなる何て思いたかったけれども、やるしかないのか…



「フィリアス…お前に色々なものを背負わせてしまっていたようだな。子供たちの変化にも気が付かずに取り返しのつかない所まで拗らせてしまった。愚かな私を許してほしい…

そしてどうか…囚われたユリアスを救ってやってくれ…」




父上様の言葉にハッとした。襲いかかってくる兄上様から結界で守り続ける。

今兄上様は自分の意図では無い形で動かされているのだ。

苦しいのは私たちだけでは無いんだ。



「兄上様、将来の平和な国の為、刃を向ける事をお許しください。」




「…アス……れ」



兄上様の動きが鈍くなった。



「フィリアス!!早くやれ!!」



兄上様の心の声が聞こえた気がした。

好き勝手に人を殺そうとした挙句の果てに今度は攻撃しろなんて。相変わらず何て身勝手なんだろう。



「聖なる雷よ、この者を解き放て!!ライディン!!」



空から白き稲妻が落ち兄上様に直撃する。

悲鳴のような雄叫びをあげながら苦しんでいる。



「どうか、……どうか兄上様をお助け下さい。」


私は涙を堪えながらドス黒いオーラが無くなるまで技を繰り出した。


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