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パージ

「キリヤ…過去に戻ろう。話がある。」



「この世界を変える為、過去へと導きたまえ。」



再び二人は光に包まれて行った。



「んーー戻ってきたっ、やっぱりこっちは平和で穏やかだぁ」


フィリアスが伸びーっと体を伸ばす。

まぁ少し安心はしたのかもしれない。


「んで?フィリアス。話って何だ??」



「そう!その話だ。話なんだけど…何を話せば良いんだ??」



俺はガクッと膝から崩れ落ちた。

さっきの決意に満ち溢れていた顔は何だったんだよ。



「冗談だよ…でもね、正直本当に良くわからなくて…これから兄上様と敵対するかもしれない、けどそこから逃げたらアリエスに辛い思いを背負わせてしまう。」



フィリアスはフィリアスなりに葛藤しているのだ。

10歳の女の子が背負うには大き過ぎるものを背負っている。



「それにキリヤ、貴方と私も出会ってまだ一日も経ってないんだよ。」


あまりにも俺自身濃すぎる時間を過ごしてきたから感覚がおかしくなっているが、彼女と出会ったのはついさっきなのだ。

国を背負わせるか否か、信頼しても良いのかどうか、そもそも根本的な所の迷いがあるのだ。



「私は今どうしたら良いのか分からないんだ。でも未来を変えたい。私だけではどうにも出来ないという事だけは理解しているんだよ。」



「王族に名前を付けられたものは名付けの者に忠誠を誓う。それ以上でもそれ以下でも無いんじゃないか?

どうしたら良いか考えても分からない性格だから見たもの感じたものしか信じないんだろ?だったらもう答えは決まってるじゃねぇか。」



「キリヤ。お前の事信頼しても…良いのか?」



「それはフィリアス、お前が今まで見てきて感じた事で決めれば良い。」



「…そうか。そうだな。では改めてキリヤよ、私の国の未来を守るために力を貸して欲しい。私だけでは力も頭も及ばない。今後どうしていくか一緒に考えて欲しい。」


「決まりだな。まずは国王、フィリアスの父ちゃんを守らなければならないな。」


「ありがとう。本当に感謝しても仕切れない。まずは父上様をお守りせねばなるまい。」


「アリエスは毒殺されるって言ってたな。」



「そうだ。だけどそうなるとタイミングとかも全然分からないし父上様にずーっと付いてる訳にも行かないし…」



「だったらそのタイミングを、作れば良いんだよ。」



「作る?どう言う事??」



「フィリアスが料理を盛り付ける、酒を用意するとかを率先して行えばいい。」


「成程、そうすれば確かに食事の際に毒を盛られる事は…いや待てキリヤ。もしそれで私の気がつかないところで毒を盛られたら…」


「そう、フィリアスが悪者になる。」



「………お前は私を反逆者にするつもりかぁぁぁぁっ見損なったぞ!!」


フィリアスがボカボカと腕を動かして殴ってくる。あれこいつこんなに力強いのか?結構痛いぞ??



「違う違う。落ち着け。お前の兄さんにとっては、フィリアスが毒殺した事にするのが一番効率良く手っ取り早く権力を握れると思わないか?」



「まぁ…それは確かに…」



「だから、そう動くようにこちらから仕向けるんだ。そうすれば毒を盛るタイミングというのはこっちから限定できるだろ?」


「成程…そうすれば此方の対策も練りやすいな…

キリヤ………お前頭良いんだな!」



フィリアスの目がキラキラと光っている。


さっきボカボカやられたしゲンコツの一発でもお見舞いしてやろうかと思ったが流石にやめた

「問題はここからだ、毒をどうやって探すか、そして犯人が兄貴だと突き止める事だ。」



「毒を探す事は私が出来ると思うよ?アリエスからこじ開けてもらった聖女の加護の力なのか見る景色が変わったと言うか。


おぞましいものや、危険なものがわかるようになったんだ。」


「そうか、それなら毒を見つける所までは出来そうだな。毒を無くすための方法とかはこっちでは何が主流なんだ?」



「そんな便利なものがあったら毒殺なんてものは起きない世の中になると思う。みんな必死で聖属性の魔法で生きながらえさせてっていうのが主流だよ。」



ここに来てお手上げになってしまうとは参ったな…



「流石に起きた事を無かった事に出来る便利な能力は大きい力になると危険だと思わない?だから敢えてそう言う魔法とかは禁忌として封印されたりとかそもそと存在していなかったりすると思うんだよね。」



無かった事にする能力……


そうか。それなら出来るかもしれない。



「フィリアス…俺に考えがあるんだ。ちょっと試してみても良いか?」


フィリアスは頷き首を傾げるだけだった。

俺は拾った石を握り潰して粉々にした。



「パージ」

俺がそう唱えると粉々になった石が光り元に戻った。


「ありえない……そんな魔法存在しないはずでは…」



「じゃあ聞くがタイムトリップなんて魔法存在していたのか?」



「それは…確かに存在していない魔法だった。」



「今までステータスとか適性とかの括りがある中で使う人や使える人ががいなかっただけで、この世の中には知られてないオリジナルの魔法とかがあるのかもしれないな。」



「それで、100年後の戦争をなかった事にとかは出来ないのか?」



「それは、不可能だと思う。俺にはまだ力が足りなさすぎる。この石直すのにも結構力を消費した。あった事を無かった事にする何て馬鹿げた力容易くは使えないだろう。」



フィリアスはそうかと俯くだけだった。



「それでは、作戦をまとめると私が厨房の手伝いを始めて、毒素を探す。キリヤが毒をパージで無かった事にして兄様に食べさせて、慌てさせ事実を吐かせる。こんな感じでどうだろ?」



「良いんじゃないか?それで。」



「決まりだね。んでーキリヤはどうやってお城に入ろうか?また、何か理由をつけて城に滞在するか?」


「いや、それだと向こうが警戒するだろ。フィリアス一人で動いているように見えた方が良い」



「何か考えがあるの?」



不思議そうに首を傾げるフィリアスを横目に俺は現代で急成長した時に得たスキルを見せた。



「隠密」


これは俺がキマイラに不意打ちをくらった時に使っていたスキルだろう。

タイミング良く得ることが出来た。



「凄い、キリヤが消えたぞ??どこだ??」



慌ててキョロキョロと周りを見回す

そんな姿はやっぱりまだ子供の10歳なんだよなぁ



「あ、そこか。」



完璧な筈だった隠密スキルは一発でフィリアスに破られてしまった。



「アレ?マジか?こんなにすぐにバレるとなると不味いかな?」



「いいや、今私の近くに姿を隠し私を襲おうとしている獣がいる、助けて欲しいと願ったらそこに何となーくいるかなって分かったんだ。恐らく聖女の加護が無いと分からない。」



ふんぞりかえってどうだと自慢げな表情をしているガキを一発だけで良いから懲らしめさせてくれまいかなと思ったのはここだけの話にしておく。


10歳のガキに発情するほど俺もガキじゃ無いってのに。



「そっか。じゃあ城に向かうか。気を引き締めていけよ。」



俺は隠密状態のままフィリアスと共に城へと向かうのだった。


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