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作戦失敗

朝食の時間、ルナお手製の食事なのにも関らず、アリエスは機嫌が悪い。いつもなら、食事でコロっと機嫌が良くなるはずなのに今日は食べながらも機嫌が悪い。

どうしたものか。特に俺の場合は女の子が機嫌を損ねた時の対処法が分からないのだ。




「キリヤ〜んはい!あ〜ん。」



「キリヤ、私も。」


そしてこの状況を助長するかのように朝からルナとリアのベタベタが凄いのだ。

断れない軟弱な俺も俺なのだがされるがままきルナとリアのベタベタを許している。




「なぁ、二人とも。そろそろやめてくれないか…」



「え?キリヤ私の事嫌い??」



「キリヤ…こういう私は嫌?」




……そういう問題じゃなぁい!!

空気を読んでくれ空気を!

まぁ読める子達では無いの知ってたけど!!

アリエスが噴火するだろうが!!




「好きならば好きだと言えば良いだろうが!!私の様子をチラチラ伺って満足したら、ご機嫌とるような事しよって!!二人が一番ならハッキリと言えば良い!!」



案の定アリエスは噴火したのだが、発言の内容に俺の方もカチンと来てしまった。



「その空気感をぶち壊してるのは何処のどいつだよ!!朝からピリピリピリピリして!折角ルナが作ってくれた飯も最悪な雰囲気じゃないか!!」




「私が邪魔だと言うのか!!薄情者め!!」



火に油を注ぐように怒ったアリエスは走って何処かへと行ってしまった。




「……そういう訳じゃないんだよ。」



俺は行き場のないムシャクシャした気持ちに頭を掻いた。




「……キリヤゴメン。」



「作戦失敗……」




何処かこの二人が俺たち二人に気を遣って行っていた行動なのではないかとは思っていた。

理由も内容もさっぱり分からなかったが。



「でも、アリエスもあの言い方は無いよ!婚約者に対して失礼だよ。」




「アリエス、最近おかしい。」




「違うんだ…問題があるのはアリエスだけじゃ無いんだ。俺の方にも…」




「え?どゆこと??」



「キリヤの事、アリエスの事もっと知りたい。」




俺は二人になら打ち明けても良いと思った。

俺がアリエスと初めて出会った時の事。

その時の映像が未だにフラッシュバックしてしまう事。

フィリアスからの提案に腹を括れない原因になっている事。

それが原因でアリエスを素直に受け入れられない自分がいる事。全てを話した。

ルナとリアは何も言わずにただじっと見つめて話を聞いてくれた。



「そんな事があったんだ…」



「キリヤ…辛い??」



ふとリアが頭を撫でて来た。

辛く無いと言ったら嘘になるけど

行き場を失っていた感情が湧き上がって来た。

今までアリエスの事が気がかりで頭がいっぱいで気が付かなかったけど、俺はちゃんとこの二人の事も大切にして行きたい。

不器用な自分でももっと強くなって自信を持って彼女達を守れるようになりたいと思った。



「二人ともありがとな。俺ももっと頑張らないと。」



「頑張るのも良いんだけど、私の事頼ってくれても良いんだよ?」


俺は隣にいたふと呟いたルナと目が合った時に思わずドキッとしてしまい慌てて目を逸らした。


「……キリヤ?……もしかして照れてる??」



顔を合わせようとしてくるルナVS意地でも顔を逸らす俺とのバトルが始まった。



「はうわぁぁっ!!キリヤが私に照れてるぅ!!最高に好きなんだけど!ねぇチューして良いかな!」



「ダメ。また酔っ払うと面倒。」



「はうわぁあっ!リア、そんなストレートに言わなくても…」



「それよりもキリヤ。私の事も見て。」



リアはストレートにガシッと顔を掴まれてジッと見つめられた。

どうしよう逃げ場が…

顔が段々熱くなってくるのを感じた。

リアの顔が段々近くなってくる。



「ストォーップ!!リア抜け駆け厳禁だよ!!」




「ハッ!!顔が勝手に吸い込まれた。私悪く無い。」



「なるほど!そう言えば私も悪くはなくなるのか。リア頭良いねぇ。」



このやり取り数秒の間に俺は何とか正気を取り戻した。この二人はストレートに気持ちを伝えてくるから困ったものだ。

でも先ずは、怒らせたアリエスに謝らないと。



「先ずはアリエスを探しに行くか。迷子になっているかもしれないしな。」




「そんな子供じゃないんだから。」



「ルナ。それはフラグ。」



俺たちは急いでアリエスを探しに行った。


ーーーーー

「…………迷子になってしまった。。」




私はガックリと膝をつき項垂れた。

ついカッとなって勢いよく出てきてしまったが、リアもルナもいない中で世間知らずの私には帰る事も何をする事も出来なかった。



「むしろ、私に帰る場所なんて無いのか…」




私はおばば様からキリヤの婚約者として相応しい存在になれるように言い聞かせられて育てられてきた。

私とおばば様を強く結びつけていたのもキリヤだったし、キリヤの存在があったからこそ私は今の状況にある。

だからこそ、キリヤの一番でいる事には誇りもあれば自信もあった。




しかし蓋を開けてみれば、家事もろくに出来ない世間知らずのお嬢様で、ルナとリアしかキリヤの手助けを出来ずに指を咥えて見ているだけ。

挙句の果てにモンスターを呼び起こしてキリヤにまで八つ当たりをした。



「私は最低な女だ…。」



正直キリヤにも腹を括れていない面もあるのかもしれない。

だけど、私は自分の力の無さを受け入れず、仲良くしているルナとリアが羨ましくて仕方が無かったのだ。

隣で一番活躍して側にいるのに相応しいのは自分だと思っていたのに、それは都合の良い妄想に過ぎなかった。



「おばば様は帰ったら何て言うんだろ…」



キリヤが次仲間にするのは私の記憶を読み取る能力に近い力を持った子になるだろう。

そうすれば、私の居場所はもっと無くなって行くし、一緒にいるのが辛くなっていくだろう。



「こんな我が儘で情けない理由で帰って許して貰えるのだろうか。」



おばば様だったら何て言うだろう。

怒るだろうか…いや、それはないな。



「アリエス、お前はどうしたいんじゃ?」



多分こうだな。

私が決めた事に関しては否定しないだろう。

私がどうしたいか…



「私は…」



キリヤの側にいたい…。

もっと強くなってキリヤの手助けが出来るようになりたい。

これはおばば様から言われたからでは無く…

そう、私の意志で…。




「いた!アリエス!!」



その時背後からキリヤの声が聞こえた。

ドキッとしてどうしたら良いか分からなかった。

このまま逃げてしまおうかとも思った。



「………何の用だ??」



……素直になれなくて悔しい。

一番になれなくて悔しい。

迎えに来てくれてありがとうって言いたいのに。

今まで行ってきた行動がそれを邪魔する。

突き放すような事をする不器用な自分に腹が立つ。



「……その。何だ。アリエスがいないとこのチームまとまらないだろ。だから…その!!」




ダメだ。これ以上キリヤに言わせては。

このチームの中心はキリヤだ。

キリヤに戻って来てと言わせて私が承諾する形で戻るのは今後のパワーバランス的にも良くない。

私の方が謝るべきなのだ。

……なのに私はどうすれば素直に。




「はぁーむっ」



……いやこのタイミングで??

キリヤへのルナの口撃ならぬ怒涛の攻撃が始まった。

勢いよく行った為キリヤも押し倒されてバターンと倒れる。

キリヤは無抵抗のまま手をピクピクと動かしている。

するとリアが何かを訴えるような目でこちらを見てくる。

いつも通りで良いんだと言っているように感じた。


「………まさか二人にまで気を使わせてしまうとはな。」



「タイミングを考えろ馬鹿者ぉぉ!!」



私は勢いよくルナを引き剥がした。



「キリヤもキリヤだ!!……キリヤ??」



そこには目をグルグルに回し茹で上がったように顔を赤くしてルナの口撃によりKOされていたキリヤの姿があった。



「………え?嘘??」



ルナにもこれは想定外の反応だったようで段々と顔を真っ赤にしていった。



「…ルナ。今後はセーブしないとダメ。」



「……こんな反応されたら逆に恥ずかしくて出来ないよぉぉ。」



「……ルナ?言っておくが正妻は私だぞ!?」



「え?知ってるよ?でも正妻がいなくなっちゃったら、私は二番のまんまじゃん!折角キリヤが意識し始めてくれたのに。勝ち逃げなんて良くないよ。」



「待って。二番目は私。負けたくない。」



「……二人とも素直だな。羨ましいよ。」




「でも、素直じゃないアリエスの事キリヤは追い払ったりしないでしょ?」



「アリエスはアリエスのペース。難しいこと考えなくて良い。」



二人と会話をしていて、カッとなった自分が恥ずかしくなった。

二人はあくまでも私が一番と立ててくれているにも関わらず、気を使わせてしまった。



「すまなかったな。二人とも。私はキリヤの面倒を見ている。」



「オッケー。それじゃあ私たちは旅支度でもしてくるよ。」



「キリヤの事。お願い。」



二人は旅支度へと向かって行った。




「……ルナに対してこんな反応するとはな。」



…少し起きたら弄ってやろう。

私のイタズラ心が少し動いた。キリヤが目覚めるまでの時間はあっという間に感じた。




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