旅立ち
「ん…んん…」
……もう朝か。
何か体が重てえ。
ガルム王の修行と比べると体力の消費は無かったはずなんだけどなぁ。
ぼんやりとした視界が段々とハッキリとしてきた。
「………!!?!!?!!??!」
何でルナが一緒のベットに??
つか何でこいつ何も着てな
「んん、キリヤおはよハムッんん」
待ってくれぇ心の準備も頭の整理も出来てねぇ
何が何でどうなって何なんだ?
ヤバい頭溶けるこんなタイミングでアリエスが来たら。
「キリヤ!!ルナの姿無くてひゃぁっ!!」
知ってた。来るんだよなぁ。
こいつこう言うタイミングで必ず来るんだよ。
だから言わせてもらう。どうしたら良い?
助けてくれぇ
「ぷはぁ、ん?おはようアリエスぅ」
「なななにゃにをしているのだお前達?」
「え?おはチューだよぉ。よくあるスキンシッぶぅぅ」
アリエスは思いっきり服をルナに放り投げた。
「良いから服を着ろぉ!キリヤもいつまでも幸せそうな顔をしてるんじゃ無いぞこの破廉恥め!!」
不可抗力なんだけどなぁ。
まぁ速攻ライディン放ってた頃よりかはマシかぁ。
「全く、嫌な予感がすると思ったらすぐこれだ。だから気が抜けないんだ。
ほら、さっさと準備しろ!!早く行くぞ!」
アリエスはルナを俺から引き剥がしてズルズルと連れて行った
「さて、これからは長い旅路になるな。準備も満タンだ。」
アリエスは大きなカバンパンパンに荷物を積んで外で待っていた。
それもそうだ。アステカ王国はここから一番遠い国だ。
山なども越えなければならず一週間はかかると言われている。
「お待たせー。」
「ルナ!??何だその軽装は?これから長い旅路に…」
「うわっ凄いねぇその荷物。なにが入ってるの?」
「これから暫くの間の食糧だったり準備するものが色々あるだろう?」
「えぇ??そんなにかからないよ?食糧も自分で調達するもんじゃ無いの??もしかしてアリエスってすんごい甘やかされてたお姫様なの??」
ルナに悪気は無かったのだが、アリエスは図星を突かれてしまったようだ。
「アリエス、ここはルナに任せよう。荷物が多いと移動も余計に時間がかかる。」
ルナはもう全く気にしていないようだがアリエスは何かとバチバチライバル心を燃やしているようだ。
アリエスは少し荷物の整理をした上で出発した。
街を出て少し歩いたところでルナが立ち止まる。
「この辺なら大丈夫かな??」
ルナは辺りをキョロキョロと見渡して誰もいない事を確認した。
「キリヤもアリエスもちょっと待っててね!
変化!!」
ボンっと煙に包まれると中から大きな翼が出てくる。
「何だこれは??」
全長5メートルぐらいはあるだろうか大きな鳥が出てきた。
「ジャイアントホークスっていう魔物の一種だよぉ。ドラゴンとかよりは劣るけどこれで一っ飛びだよ!」
「魔物が喋った!!ルナをどこにやった!!」
アリエスが杖を構える。
どう考えてもこの鳥がルナ…なんだよな?
「アリエス!ストップストップ!私ルナ!!
目的地に向かいながら少し私の事も話すから二人のことも教えてよ。」
「ルナは鳥になれるんだな…」
アリエスは感心しているが少し違う気がする。
恐らく聖獣の加護とかなのだろう。
ガルム王の手紙も気になるしな。
「さぁ背中に乗って!安全飛行で行くからね!」
俺たちはルナの背中に乗り空の旅を楽しむことにした。
「そういえばさっきの話の続きなんだけど私の妖狐のスキルはね、相手から魔力を吸って強くなる事でね、聖獣の加護は魔物に変化して魔物とコミュニケーションが取れる事なんだ。」
「そうか、だからキリヤから魔力を吸っていたのか…魔力を吸うのはそっその口からでないとダメなのか?」
「いいや、そんな事ないよ?手を繋ぐだけでも出来るけど、口からの方が私が幸せだからねぇ」
「そっそんな理由で!!破廉恥だな!!二度とキスするの禁止だ!!」
「アリエス……落とすよ??」
「いやそれだけはやめてくれ。」
ふと思うのだがこの二人は漫才のようなことをやっている。仲良くなってきているのだろうか?
さらに全然関係無いのだが今変化しているジャイアントホークスはどんな触り心地なんだろうか。
気になりすぎて仕方ない。モフりたいのだ。
俺は好奇心を抑えきれずにジャイアントホークスの首元のフサフサをモフモフした。
「ひゃぁあっ!……私うなじ弱いの………
……もう。キリヤのエッチ。そういうのは二人の時だけにして。」
………やってしまった。
いや、冷静に考えればそうだよな。
変身して感覚が変わりますなんて普通無いよな。
「………はぁぁ。キリヤよ。」
アリエスさん視線が冷たいっ!
凄く冷ややかだよ。
ただ、今回は不可抗力でも何でもないんだスマン!
「キリヤの行動に悪意やいやらしさを持っている訳では無いのは分かっている。だが、余りにもラッキースケベが多すぎないか??程々にしてくれよ?」
………思ったよりも怒ってはなかった。
けどラッキースケベって…
「悪かったよ。そういえばルナは龍人の方のスキルはどうなんだ??」
「龍の血は正直薄まり過ぎて何の役にも立たないの。体が丈夫なだけ。正直無くても良かったよ…。」
……こっちにもやってしまった。
多分一番聞いてはいけない事を聞いてしまった。
「そっそろそら暗くなってきたし降りて食い物でも探すか。」
早くこの空気をどうにかしたい。
どうすれば良いんだ助けてくれぇ。
俺たちは嫌な空気感を感じつつ夜を越した。