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ウルガルム王国への再来

「着いたな…」



再び森を抜けアリエスとウルガルム王国に到着したものの、100年前の姿のまま住民は外に出ておらず閑散としていた。



「ここが、あのウルガルム王国か?」



アリエスも感じた通り、誰一人いないのだ。

厳密にいうと住宅には人の住む生活音を感じる。

外の屋台もcloseの看板が立っているが動画関係は使われていそうな感じだ。



「もしかしたら、この街は戦闘の可能性が低くなる夜になると少し賑やかになるのかもしれないな。」



とはいえ、住民の中には子供だっているだろう。

年頃の遊び盛りの子供たちが外で遊べない環境っていうのはいかがなものなのだろうか?



「旅の兄ちゃん!この時間は外にいるのは危ねぇ!早く宿を探してヒッ!!」



何も知らずに訪れた客人だと思って気を遣ってくれたのか窓を開けて声をかけてくれたのだが、何かに気がつき怯えるように窓を閉めてしまった。




「キリヤ…恐らくあいつが。」



前方からツカツカと歩いてくる狐の耳をした獣人がいた。

ガルム王や他の住民とと比べると獣感は無く、どちらかと言うととても人間寄りだ。

ハッキリ言って違和感がある。



「そこのお前ー!!このウルガルムに訪れたと言うことは、私に勝負し、国を滅ぼしに来たんだろう!!そうだろう!いや!そうでしかない!!」



……正直この手のタイプが一番イラっとする。

元気に正面突破すれば良いと。何とかなるって思っているやつが一番腹が立つ。



「この私が、国の代表として成敗する!!」





「どうする?キリヤ?」




「俺がやる。あいつ見てるだけで何かムシャクシャしてくるんだ。」




「ルールは簡単。ギブアップしたら負け!用意スタァート!!」



「ギブアーップ」



「んなぁぁぁぁっまだ始まってないだろぉ…

まだ私の強さを伝えきれてない!再戦だ!再戦を申し込む!!」




「再戦はいつでも受けて立つ。だけど、この街の空気を壊すなよ。周りを巻き込むな。そういう奴を見るのは一番腹が立つんだ。」




俺は沸々と湧き上がってくる怒りを抑えきれずにいた。

何なんだろうこの苛立ちは。



「戦闘は明日、ウルガルム王国闘技場で行う。当日は客を呼び屋台を開く。言わばお祭りだ。戦闘は飽きるまで相手してやる。」




「……そんなに自信あるんだ。良いよ別に。そこで、大勢の住民の前で私の凄さを見せつけるんだ…」



そう言うと狐耳の獣人は来た道を戻って行った。



「おぉぉ奴が帰ったぞぉぉ」



「今日は誰一人犠牲にならなかった。」



「旅の方ぁあんたぁ勇者だよ!!」



「明日のお祭り張り切っちゃうかねぇ!!」



「ただあいつは戦闘をやめて戻っただけなのにこの盛り上がりは異常だぞ…」



俺もそれは感じていた。

一先ず宿を取り住民に色々と話を聞いた。



何でも最近は誰も外に出なくなった事から、住宅に押し入り、強そうな獣人を引っ張り出しては勝負をするにまで至ってたらしく、奴が来るだけで怯える毎日を過ごしていたらしい。



「自分勝手な奴だ。許せないな。」



アリエスの憤りに何故か胸がチクリと痛んだ。

俺は似たような奴を知っていた。



「あぁ、明日何としてもケリを付けなきゃな。」




ーーーーー

翌日


昨日の一件があり、闘技場は満員。屋台も大盛り上がりでそれどころか、中継さえされてしまい、多くの住民がこの戦いを見守ることとなった。




「凄い…こんなに注目されたのは初めてかも…」



狐の獣人はキョロキョロと周りを見渡して慣れない雰囲気に戸惑っているようだ。



「コホン。今回の戦いの審判をさせてもらうガルルと申します。宜しくお願いします。」




ガルルと名乗る狼の獣人

しっかりと俺と目が合い、ニコッと笑った気がした。

これは俺の感ではあるが、ガルム王の子孫であろう。



「良いから早く始めようよ。昨日から我慢してたからウズウズしてるんだ。」



「ルールは昨日と変わらずで良いか?」



「オッケー!ギブアップなんてさせる暇与えないんだから!」



「それでは、よーい始め!!」




「でぇぇっやぁぁぁ!!!」



狐の獣人はスタートの合図と共に殴りかかって来た。

こいつ武器とか使わないのかよ。


拳を避けると地面に当たる

すると大きな地響きと共に地割れが起こる。

なんてパワーだこいつ。



「パージ」



すかさず俺は割れた地面を元に戻した。

折角のお祭りなのに建物崩壊住民怪我とかマジで勘弁してくれ。



「中々面白い技を使うんだね?」



特殊な技を使うのは狐の獣人の方もであった。

手と足が青白く炎のように光る。

恐らく身体強化魔法の類だろう。

それを何重にも重ねてかけて、圧縮している。

しかし、獣人とはいえそんな事したら体の方が持たないはず。



「お前何者なんだ?」



すると狐の獣人は舌打ちをしながら不快感と憤りを露わにした。



「そんなに何者かが大事なの?そんなの関係無いでしょ!!!」



憤りに身を任せて単調に殴る蹴るの攻撃を繰り広げて来た。

パワーは相手の方が上かもしれないが…


「これじゃぁガルム王の方が強かったな。」



俺は隙を見つけて回し蹴りで吹き飛ばした。

勿論相手が腕でガードをして怪我をしないタイミングを見計らっての話だが。



「……にしてるの??」




薄々は気が付いていたがこの子は特殊だ。



「私が人間みたいだからって馬鹿にしてるの!!」


逆上して単調に突っ込んでくる。

ガルム王も俺と対戦した時ってこんな感じだったのかなぁ。



俺は無傷のまま相手がギブアップするのを期待してボロボロになるまであしらい続けた。



「……なんで勝てないの。私は強くなきゃいけないのに。」



これも薄々は気が付いていたが、恐らくこの子は育ってきた環境も特殊だ。



「そこまで、強さにこだわる理由ってなんだよ?」



「見てわかるでしょ?私は獣人の中でも変異種なの。」



「変異種??」




「そう、妖狐の母と龍の血を持った人間の父との間に出来た…

獣人の子は基本獣人になるはずなのに、時より違った形で人間寄りに生まれてくる。それが変異種よ。」



恐らく身体強化に体がついていくのは龍の血のおかげだろう。



「それがどうかしたのかよ?」




「母は変異種の出産で体力を使い果たして亡くなり、父は逃亡して行方知らず。取り残された周りとは違う変わった存在であり続ける辛さが分かる?誰も目を向けてくれない。私の存在を誰も認めてくれない辛さが分かる?」



あぁ腹が立つ。

沸々と湧き出てくるこの怒りの正体。

これも何となく分かっていたさ。



「だから、私は私自身の存在を証明するために。強さを証明する為に勝ち続けなければならないの!!」



コイツは…

昔の俺だ。



早くに母を亡くし父は行方知れずになった俺は、周りから哀れみのめを向けられ続けた。

親戚に引き取られて紬と出会って以降は紬のオマケ扱いの日々を過ごしていた。

いつか、紬のオマケから田中ハジメという存在を認めてもらえるようになる為、少し人とは違う事を始めた。



自分の存在を証明する為に変に目立った事ばかりやって、さらに周りの目は冷ややかになっていく繰り返し。

だけど、一度始めてしまったらもう引き返せなかった。

そして俺は…




「あいつ別にいらなくね??クラスでも浮いてて邪魔なだけじゃん。実は俺昔からあいつ嫌いだったわー。分かるー調子乗っててウザイよねー。」







クラスの連中に見捨てられ、追放された時の事がフラッシュバックしてくる。




「だから、私は勝たなきゃいけないだぁぁぁぁっ!!」




昔の自分を見ているようで俺も限界だった。

おもいっきり張り手でビンタし、吹き飛ばした。


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