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謎の少女

何かカッコいい別れ方してしまったな。



目の前の光が消えて行く。


背中が凍りつくようなおぞましい空気。


森の中である事は確かだ。だが、これだけは分かった。



「人の住む世界じゃねぇ…」




耳に聞こえるのは化け物の叫ぶ声だ。


恐らくこの森では人間はおらず化け物同士で争っている。



「とにかく見晴らしの良いところで誰か探して助けを…」




ハジメは身動きを取ろうとしてガサっと草むらを踏んだ途端赤い光と目があった。


ヤバい見つかった。


正体は赤く染まった斧を持ったミノタウロスだった。



「うわぁぁぁぁっ」




武器も何もない。ただただ逃げることしか出来なかった。ただ不思議と足は動き回り生への執着が自分にもある事に気がついた。




「光だ…」




まだミノタウロスは後ろから追いかけて来るががむしゃらに走り続けていると見晴らしが良くなりそうな光が見えた。


その方角に向けて全力で走り出す。


「何…だよこれ…」



森を抜けた先に何か希望があると思い走り続けたものの結果として丘の上。そしてその先目に見えた光景は薄暗く闇のようにかかった雲と敗れた魔物であろうものの骨、そして建物が過去に存在したかのようなものが見てとれ岩や瓦礫だった。



「人類は何者かによって絶滅し住まいは全て壊されたのか??俺はまた違う世界に飛ばされて…」



「ギェガァァ」




ミノタウロスの叫び声が聞こえたと思った瞬間背中に衝撃が走った。


見晴らしの良いところ。つまり他の化け物からも見やすい所にわざわざ足を運んでしまったのだ。



「キマイラ…これが弱肉強食の世界かよ…」



ミノタウロスはキマイラによって瀕死の状態、ジリジリとキマイラも近づいて来る。


すると次は空から龍が降りてきてキマイラと戦い始める。



キマイラの攻撃による重傷で身動きの取れないハジメは龍の風の風圧には耐えられなかった。




「あ…」



そのまま俺は風圧で高い丘から真っ逆さまに落ちていた。




「情けねぇ終わり方だなぁ。張り切って異世界楽しもうなんて思ってたのにこのザマか。だったら世界の一つでも救う勇者にでもなれば良かったか。」



今までの生活が走馬灯のように見えて来る。まだ死にたくない。



「せめて回復魔法の使い方ぐらい学んでくりゃぁ良かったな。まぁ、禁忌の時空魔法適性者だからどの道まともな魔法は無理だったか…」




「過去に戻ってやり直したいな…」



俺はそう呟きながら意識が遠くなって行った。









「…けて」




あれ?俺?生きてる??


いや生きてるはずが無い。女神様からのお言葉か?それとも地獄への案内でも…




「助けて!!!」



ハッキリと助けてという声に目を覚ます。


ここはどこだろう??



辺りを見渡すと丘の下で五匹のゴブリンと一匹のキングゴブリンに女の子が囲まれていた。




「何でこんな所にいるんだ??」



何でこんなことを聞いたのかは分からなかった。けど、ハジメがいた場所は女の子が生存できるような場所ではなかったのだ。




「あなたの方こそ何者なんですか??化け物に追われて万策尽きたと思ったら急に周りが光出してあなたがいるんですもん。奇跡のヒーローなんでしょう!助けてください。」



女の子は号泣しながら助けを求めてきた。


ありがたいことに女の子は剣を持っていた。


剣さえあれば戦える。



「その剣、使えないなら貸してくれないか?」





女の子は手が震えていて剣を振るどころではなかった。



「助かりました。武術の嗜みがあるのですね。」



女の子は安堵したように剣を渡してくれた。勿論武術などの嗜みはない。




「あいにく俺は剣なんて使った事は全く無い。だが何とかする。」



まずはゴブリンからだ、後ろで女の子が何ですかそれぇと半泣きになっているが折角生きているのに共倒れはゴメンだ。



多少剣道の嗜みはあった為単調な動きのゴブリンを剣で払いのけて斬り伏せる事に対しては何の苦労もなかった。




「残るはあいつか…」



キングゴブリン。ボスなだけあって無闇には突っ込んでは来ない。体も大きく力もありそう。闇雲に戦って勝てる相手では無さそうだ。



「さて…どうしたものかね。」



ハジメはキングゴブリンよりも後ろで泣き喚くうるさい奴どうにかしたいと思っていた。



「お嬢ちゃん。ここは俺が何とかするから今のうちに」




「なりません。民を見捨てて背中を向ける等決して私はしません。」


今の言葉を察するにどうやらこの女の子は国のお偉いさんみたいだな。




「じゃああの化け物倒すの手伝ってくれないか?訳あって俺はこの国の事、大きく言うとこの世界の事を全く知らないんだ。だから戦い方を知らない。ああいう大きい敵と戦う時にはどうすれば良いんだ?」




「基本的には身体強化の魔法と武器強化の魔法を複合して戦います。」



「それ、俺にかけられるか??」



「私も授業で教わった程度でしか使えませんが、倒せますか??」



「倒すしかないだろ??」



女の子は初めてそこでフフっと笑った。


可愛らしい笑顔も出来んじゃねぇか。




「行きます、ハァァッ」



女の子が手をかざすと体の奥底から力がみなぎって来るような感覚になった。



「これが、身体強化…」


「長くは持ちません!早く!!」



感動している場合ではなかった。


俺の変化に気がついたキングゴブリンは後退りをする。



「悪く思うなよ!」



剣を振り下ろすとキングゴブリンを武器ごと真っ二つに切り裂き女の子の救出に成功した。

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