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次の目的地


「勇者様と聖女様が帰って来たぞぉぉぉ!!!」



「私たちの英雄ザマス!!」



「結婚おめでとう!!!」




アリエスと俺は街に入った瞬間のお祭りムードに呆然と立ち尽くしている。



簡潔にまとめるとフィリアスの奴がやったのだ。

ゴブリンを殲滅しコカトリスとミノタウロスに圧勝する二人を中継し、2人の知らないところで結婚宣言をしていたのだ。



英雄達の結婚。国中に反対する者は一人もいなかった。

俺とアリエスは大急ぎでフィリアスの元へと向かった。




「フィリアス!!お前やりやがったな!!」



「おばば様!!どうしてくれるんですか!!」



勢いよくドアを開けて声を上げるもフィリアスは飄々としている。



「此度の活躍ご苦労じゃった。してキリヤよ。お前はどうするんじゃ?」



こいつ人の話を聞いちゃいない。



「だから、結婚とか俺たちの世界ではまだ考える年じゃ」




「誰も結婚の話など聞いとらんじゃろ。キリヤがこの後どう動くのか問うてるだけじゃ。それともあれか。国中の盛り上がりを見て覚悟でも決めたか?」



フェッフェとニヤつきながら笑うフィリアスを見て、流石の俺も口や頭では敵わないし生きてる場数が違うと感じた。





「おばば様。私も覚悟はしてはいましたが正直まだ結婚などで身を固めるよりも自由でいたいのですが…」




アリエスもアリエスなりに葛藤はしてくれていたようだ。




「あぁ。好きにせい。」




………は??

このバァさんは何を言ってるんだ??

結婚しなくて良いの??

何がしたいんだ??



「フェ〜これでアリエスへの求婚の話も無くなるじゃろう。めんどくさかったからのぉアリエス見向きもせんからのぉ〜」



アリエスも俺も沸々と来るものを感じていた。



「そんな事のために国中を巻き込むんじゃねぇよ(巻き込まないで下さい!!)」



二人がそう怒るもフィリアスは飄々としていた。



「そんな二人ともムキになるな。二人は世界を守る為旅に出る。で良いじゃろ。で結婚しないのであれば時の勇者様は時を超えて行ったで何とかなるじゃろ。まぁワシから見れば二人ともお似合いのバカップルじゃがなぁ」



口では敵わないのであろう。

アリエスもむぐぐと黙り込んでしまった。

……過去に戻った際に懲らしめてやろう。

新たな計画が一つ増えた。




「コホン話は戻すがキリヤよこれからはどうするつもりじゃ?」



「そうだな…時の勇者の情報、自分の世界に戻る為の方法、実践方式での戦闘経験を積む事。この三つは抑えておきたいな。」




「ふぅむ…実戦での戦闘経験を積むのであれば、獣人族の国ウルガルム王国がベストなのじゃが…」



何やら訳ありなようだ。

そして恐らく面倒な事だと直感で分かった。



「何か問題があるんだな。」



「そうなんじゃ。ウルガルム王国とは100年前は友好関係を築いていたのじゃがこの数十年は狐狩りというのが行われているのじゃ。」



「狐狩り??」



「そうじゃ。獣人族では聖獣の加護を持つものが国を代々守っているんじゃが、聖獣の加護を受ける獣にはサイクルがあるんじゃ」



「おばば様!もしかして今は!」



「察しが良いなアリエス。今は狐の獣人が国を守るべきサイクルのタイミングの筈なのじゃ。」



「それなのに狐狩りが行われているという事は…」


「概ね100年前の我が国と同じように歴史を変えられてしまっている可能性がある。今のウルガルム王国は治める者もおらず非常に荒れておる。」


「また100年前に戻らなきゃならないのか…」



「その通りじゃ。それに100年前に国を守っていたガルム王は熟練の戦闘狂でな。実践経験を積むにあたっても良い環境ではあると思うのじゃ。」



それ以外の選択肢は無いようだな。




「それとアリエス、お前はキリヤに着いて行きなさい。世界を知り立派な聖女となって来なさい。」



俺の方は断る理由が無かった。

魔法でのサポートは多ければ多いほど助かる。



「はい、おばば様の期待に応えられるようにキリヤの側でお守りします。」




「それじゃあまた玉座の間にタイムトリップする為に二人で風呂場に行きなさい、くれぐれも脱ぐんじゃ無いぞ」



フェッフェと笑うフィリアスに対して俺たちは顔が熱くなる一方だった。


蒸し返すなよ。



「もういいです!!行ってきます!!」




フィリアスは声を少し荒げると先に準備をしに行ってしまった。

俺も行くか…

俺たちは玉座の間を後にした。




「……二人とも行ったか。二人とも過去の私をみっちり鍛えてくれよ。今のワシが今のワシでいられる為に…」



「フィリアス、二人をわざと怒らせたのか?」

天に旅立った兄上様から問いかけられたような気がした。




「それも必要な事じゃったんです。兄上様。それに大丈夫。二人ともあれぐらいでワシの事を嫌いになるような人達じゃない。それは兄上様も分かっていらっしゃるじゃろう。」




兄上様が微笑んだような気がした。

ワシももう歳かのう。



ーーーーー


アリエス専用の浴室にて集合した。

正直お互いソワソワしていてぎこちない。

勿論服は着ている。

出会い方が最悪だったのだから尚更だろう。



「何か変な感じがするな…」



「やめろ、言うな思い出させるな思い出すな!!ハレンチだぞ!!」




お互いどう気を紛らわせば良いのか分からなかった。

ハレンチなのは俺じゃなくてフィリアスだってのに。



「獣人族の国を救う為に過去へと戻りたい」




俺の周りが光へと包まれていく。

そして俺は忘れていたのだ。

フィリアスとの感動的な別れ方をしてから時間がそれ程経っていない事を。



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