case08 ある昼休みの教室の一幕 ~ 幼馴染が寝取られたので本気出した結果 ~
心を抉られる準備は宜しいか?
―― カシャンッ ――
と、プラスチック容器の様なものが落ちる音が、昼休みの教室に響き渡る。
その音が響き渡ると、ブルースが加速するどころか、教室は水を打ったように静かになった。
「僕の事を裏切った癖に、いまさら擦り寄って来たって遅いんだよ!」
次いで、明らかな敵意と不快感を含んだ声が静けさの中に響き渡り、教室の皆の視線は、音の発生源へと向けられている。
そこに居るのは、何かを差し出した様な姿勢で固まっている少女と、先程声を発した男。
「 はぁ……」
類に漏れず、ただし他の連中とは若干違った心境でそれを眺めていた俺は、小さく溜息を吐き、固まってしまっている少女の元へ行く為に席を立つ。
彼女の元迄十数歩。その間に状況の確認をする。
固まっていた手を下ろし、床に落ちた弁当箱を困った顔で見ているのは『森田 美沙』 清水の舞台から飛び降りる覚悟で告白して、見事御OKを貰い、先日から付き合い始めた俺の彼女である。
大事な事なので二回言うが、俺の、彼女、で、ある。
数人のクラスメイトに囲まれながら声を発した男は『西野 智也』、美沙 ―― 名前を呼び捨てにするとまだちょっと照れ臭い ―― の幼馴染と言う立ち位置の男である。
そして、
「貴女、ずっと彼と一緒に居たんでしょ? それなのに気付きもしないで別の男に靡いたくせに、彼が有名になったからって擦り寄って来るなんて恥ずかしいと思わないの?」
智也の隣で居丈高に美沙を糾弾しているのは、『小松 由衣』 ここ数日、何かと西野と一緒に居るのを見かける女だ。
そして、
「ひろくん……」
西野の視線から庇う様に美沙の前に立つ俺、『古石 宏』である。
―― ところで、彼女からの名前短縮+『くん』呼びってなんか良いよね、ヤバイよね ――
そんな益体もない事を一瞬考えて若干にやけそうになるのを堪えつつ、美沙に軽く肩を竦めて見せると、改めて西野の方を見る。
―― あ~、こりゃ明らかに敵意を持って下さっておりますねぇ ――
「んで? こりゃ一体何の騒ぎだよ」
まぁ、敵意向けられるのも無理も無いっちゃ無理も無いか~。と思いながら、指向性のない問いかけを行う。
が、目の前の二人は何やら敵意のこもった目を、今度は俺に向けてくるばかりで話をしてくれない。
仕方がないので、今度は後ろにいる美沙に視線を向けてみる。
「え、えっと……お昼の時間だから智君にお弁当を渡そうと思ったんだけど……」
そう言って落とされた視線を追えば、そこには果たして、床に落ちて中身のぶちまけられた弁当箱が、それを包んでいたナフキンから顔を覗かせていた。
「これ、お前がやったのか?」
視線を上げて西野を見れば、些かバツの悪そうな顔をしていたが、俺の言葉と視線に今度は敵意を剥き出しにして声を荒げる。
「そうだよっ! それがどうかしたかよっ!?」
鼻息荒く食って掛かる西野の声を受け流しながら、床に落ちた弁当箱を指差す。
「お前さ、食いモンは粗末にするなって親に教わらなかったのか?」
―― もう三秒過ぎちゃってるし、拾っても食えんよなぁ ――
西野に呆れた視線を向けながら、頭の中ではそんな埒も無い事を考える。
「う、五月蠅いな! 親は関係無いだろ!」
対して西野の方はと言えば、憤懣やるかたないと言った体で今尚気勢を上げ続けている。
「関係なくも無いんだけどさぁ。で、何がどうして態々届けてもらった弁当箱を叩き落とすなんて流れになってるんだ?」
改めて美沙の方を見ると、すっかり委縮してしまっている様で、口を噤んでいつの間にか俺の制服の裾をちょこんとつまんでいる。非常時ではあるものの、その姿は非常に可愛らしいと言わざるを得ない。
これも彼氏の特権って奴よな。ディ・モールト ベネである。
―― ちなみに、元ネタの作中においては『ディ・モールト良し』なので間違えない様に ――
軽く頭をぽんぽんしてから西野に向き直る。
「で? わざわざ届けてもらった弁当をこんなにしてんだ。このまま何事も無くって訳にゃいかねーだろ。とりあえず説明責任ってのを果たしてくんねーかな」
こちとら腹が減って気が立ってんだ。早くいかねーと焼きたてメロンパンが売り切れちまうだろうが。
「う、五月蠅いな! さっきも言っただろ! 僕の事を裏切った癖に、僕が有名になったからって擦り寄ってきて目障りなんだよ!」
気が立ってたせいか若干キツくなった俺の視線に一瞬怯んだ様子を見せたが、直ぐに居直って声をあげる。
―― なに言ってんだコイツ? ――
「あのさぁ、『裏切る』とか『擦り寄る』とかあんま宜しくない言葉使ってるけど、ぶっちゃけ意味不明なんだわ。何をどう考えたらそうなるのか俺にもわかる様に説明してくんね?」
若干白けた感のある俺の態度に神経を逆なでされたのか、西野の顔が真っ赤になる。
「お前がそれを言うのかよ! 僕から美沙ちゃんを取った癖に!」
「……は?」
思いもよらない西野の言葉に、思わず思考が停止する。
「何言ってんだお前?」
「とぼけるなよ! 僕はずっと美沙ちゃんが好きだったのに! それをお前が横から寝取ったんじゃないか!」
―― すんげぇパワーワード頂きました ――
「僕と美沙ちゃんは幼馴染で、ずっと一緒に居て僕の気持ちもわかってたくせに、僕を裏切ったんだ!」
ちらりと視線を送れば、見当違いな私見を鼻息語る西野の姿に、美沙も若干引き気味である。
「だから私が提案したのよ。智也君の凄い所を見せてやろうって、本気を出した智也君を見せつけて、裏切った森田さんを見返してやろうよって」
西野の隣に陣取っていた小松が、ここで口を開く。
「……本気を出す?」
小松の言葉に首を傾げる。
「そうよ。ずっと隠していたけど、智也君はチャンネル登録者数が100万人を超える人気配信者だったの。だから、顔を隠すのをやめたのよ。髪を整えたりちょっと体裁は整えたけどね。元々顔は悪くなかったし。お陰様でチャンネル登録者数も増え続けてるわ」
小松が自分の事の様に誇らしげに語るが、その姿を俺は若干冷めた目で見ていた。
成程、最近西野がイメチェンしたのなんだのと一部で騒がれていたのはそのせいか。
「で? その『顔出し配信』ってのがお前らの言う『本気出す』って事で良いのか?」
先の発言より導き出された情報を確認する。
「そうよ。この学校にも智也君のファンはいたし、顔を出した事で学校でも人気者になったでしょ? そうしたら案の定、森田さんががノコノコとお弁当作って擦り寄って来るんだもの、笑っちゃうわよね」
そう言って美沙の方に軽蔑した様な視線を向ける。
「え、えっと……あの……」
その視線に困ったような顔で何かを言おうとするが、上手く言葉に出来ないのか口籠ってしまう俺の彼女。
そりゃなぁ……、謂れの無い事で悪意を向けられる経験なんてそうそうあるもんじゃないだろうしなぁ。
「んで? 話が途切れたけど、なんで美沙が裏切り者扱いされてる訳?」
声は発せずとも鼻息は荒い西野に視線を向けて問い質す。
「さっき言ったろう! 僕が美沙ちゃんの事を好きなのを知ってたくせに、お前なんかと付き合い始めて! お前だって美沙ちゃんを寝取った間男のくせに、偉そうな態度してるなよ!」
―― あ~、こりゃ大分拗らせてますねぇ…… ――
「つまり何か? お前が美沙を好きだったから、美沙が俺と付き合うのは寝取られで裏切り者だって事をお前は主張してんのか?」
「そうだよ! 何度も言わせるなよ!」
―― なんというか、根本的な意識のずれがあるんだよなぁ…… ――
「それっておかしくね? 片思いされてる人間は自由に恋愛する権利もねぇの?」
素直な疑問を投げかけてみる。
「片思いなんかじゃない! 幼馴染でずっとそばに居たんだ、美沙ちゃんだって僕を好きだったんだ!」
「それさぁ……確認した事ある?」
溜息交じり吐いた俺の言葉に、西野が固まる。
「確認……って……」
「いやだからさ、お前が美沙の事を好きでした。そこまでは良いよ? 別に誰が誰を好きになろうが、法や人道に背かない限り自由だと思うよ。でもさ、『美沙がお前の事を好きでした』っていうのは何処情報だよ。少なくとも俺は聞いた事ないけど、本人に確認したのか?」
「か、確認した事は……無いけど……」
ついさっきまでの勢いは鳴りを潜め、小さな声になってしまったねぇ。
「確認した事も無いのに、なんで『美沙ちゃんと僕は両想いだ~』なんて言える訳? 勝手な脳内設定でっちあげて逆切れとか、お前はストーカーかなんかか?」
「で、でも! 幼馴染でずっと一緒に居たんだ! 言わなくったって僕の気持ちはわかってくれてたはずじゃないか!」
―― だからそれが逆切れだってんだよ ――
「だから、お前の勝手な妄想を人に押し付けんじゃねぇよって言ってんだよ。確認もしないで一人でその気になって、勝手にいじけて終いにゃ裏切り者呼ばわりとかお前何様だよ」
顔を真っ赤にして拳をぷるぷるさせてる西野。
小動物がやると可愛いけれど、男がやってもなぁ……。
「んで? 『言わなくてもわかってくれる』だっけ? 馬鹿じゃねーの? 動物だって鳥だって、時には虫だって嫁さん探す時は声をあげるんだぜ? 黙ってても通じるとか、いつからこの世界は人類総超能力者な設定になったんだよ」
そろそろ自分の言動の不条理さというものを理解してくれただろうか。
「『言葉にしなくても伝わる事』とか、『言葉では伝わらない事』も確かにあるだろうけどさぁ、そんなのは言葉を尽くした人だけが主張出来る事じゃねぇの? そもそも世の中は『言葉にしなきゃ伝わらない』モンなんだよ」
一旦言葉を切る。西野は相変わらず黙り込んでます。
―― おっけ~。まだ俺のターン! ――
「そもそもさ、『言わなくても気持ちをわかってくれ』と主張するお前は、美沙の気持ちをわかってたのか?」
「え……?」
「いや、『え?』じゃなくてさ、美沙には『言わなくてもわかってくれ』と宣っているお前は、美沙の気持ちが『言われなくてもわかってたのか?』って聞いてんだよ」
「そ……それは……」
心当たりが有るのか無いのか、酷く歯切れが悪くなる西野。
なんだろうね、自分に都合の悪い事は思いつかない便利な頭してるんかね。
「わかってないよな? わかってないからこんな事になってんだろ? お前さ、自分では出来もしないくせに、他人にそれを求めて思い通りにいかなかったら逆切れとかどんだけ頭悪いの?」
―― 『はい論破』なんてレスバ勝利宣言してとっとと移動したいところなんだが ――
「で、でも! 智也君が有名になったからって擦り寄って来たのは本当でしょ? それって随分調子の良い事じゃない?」
―― そうはいかないのが、現実世界の人付き合いってやつなんだよなぁ ――
別に好き好んでレスバ続けようなんて思っちゃいないが、仕方がないので西野を庇う様に声を上げた小松の方を見やる。
「さっきもそれ言ってたけどさ、なんだっけ? 『西野が有名になったら擦り寄って来た』だっけ?」
「そうよ! ずっと傍に居たのに西野君の魅力に気付かなかったくせに、彼が有名になったらまた近付いてくるなんて節操のない事だと思わない?」
―― 小松なりに西野の事を庇おうとしているのだろうけど、それってどうだろうね ――
「さっきも言ってたけど、その口ぶりだと、小松は顔出しする前から西野の事を知っていたって事で良いのかな?」
「そうよ! 私は昔から彼のチャンネルのファンだったもの、この学校に入学して西野君を見た時にピンときたわ」
「ほーん」
気のない返事をしながら思考する。違和感を形にする為に。
「あのさ、なんで西野は配信者やってるのを隠してたわけ?」
小松の横で涙目になっている西野に問う。
「別に隠してたわけじゃ……」
「でもさ、少なくとも能動的に知ってもらおうと思ってた訳じゃないよな? だって自分からは何も言わなかったんだから。あ、『言わなくても~』ってのは無しな、無意味だから」
「で、でも! 言われなくったって私は気付いたわ!」
今度は小松が声を上げる。
「だからさ、『小松は言われなくても気付いた』から、それを誇るのは構わないけどさ、『気付かなかった美沙を責める』のは筋が違うだろ? そもそも本人が『知ってもらおうとしていなかった』或いは、『知られなくても構わなかった』んだから」
「そ、それは……」
「なんだっけ? 『本気出した』だっけ? なんで今まで隠してたのを態々顔出ししようと思ったわけ?」
「そ、それは……由衣ちゃんに、『本当の僕』を見せてあげれば、美沙ちゃんを見返せるって言われて……」
―― そんなとこまで他人頼りかよ ――
「つまり、『有名配信者』っていうのが、お前の言う所の『本当の僕』って事か?」
「そ、そうだよ……」
―― コイツ頭悪すぎてこっちの頭が痛ぇ…… ――
「つまり、お前は『本当の自分』とやらを隠したまま、美沙と付き合ってたつもりになってたわけ? そんで振られたと思ったからか『それ』を出してくるとか、それってただの後出しじゃんけんじゃん」
「そ、そんな事!――」
「あるだろ?」
―― 自分に都合の良い言い訳は後にしてくれ ――
「大体さ、『振られたから本気出す』ってなんなん? 振られるのが嫌なら、振られる前から本気出せよ。相手から見えない様に手札置いといて、場が確定してからその手札出して逆転勝利宣言とか、イカサマより質悪いな」
「イ、イカサマとかそんなつもりじゃ……」
「つもりがあろうがなかろうが、お前のやってる事はそういうことだよ」
「っ……」
「あとあれだ、『有名になってからすり寄って来た』ってやつ」
小松を見ながら言葉を続ける。
「な、なによ……」
俺の視線に小松が身構える。
「なんで美沙は駄目で小松が擦り寄るのは良いわけ?」
「……は?」
俺の言葉に、小松が目を剥く。
「何言ってるのよっ! 私は智也君が顔出し配信する前から彼の事を応援してたの! 本当の彼を、優しい所とか真面目な所とかを知って、それで好きになったの!」
―― おっと、爆弾発言が出ましたよ。やったね智君、彼女が出来るよ! ――
「いやさ、顔出しの前とか後とか関係ないんよ。結局のところ、『有名配信者』だと知ってるから気になったんだろ? 優しいとか真面目とかは後付けじゃん? そもそも西野が『有名配信者』でなければそれに気付く事も、そもそも西野に興味を持つ事も無かったろ?」
「そんな事ない!」
「いやあるだろ、実際このクラスの他の連中だって、西野が有名配信者だって知るまでは興味もなかったろ? 今西野を囲んでた連中だって、ついこないだまで西野の事をぼっちだなんだと言ってたじゃん?」
ちょっと視線を巡らすと、俺と目と合った連中が気まずそうに目を逸らす。
「あと美沙の名誉の為に言っとくけど、知ってたからな?」
「は?」
「え?」
西野と小松が揃って驚きの声をあげる。そんな驚くような事か?
「いやいや、高校入ってから知り合ったぽっと出の赤の他人の小松が気付いたんだぜ? なんで『幼馴染でずっと一緒に居て西野の事が好きで言わなくてもわかってくれる』って脳内設定の美沙が気付いて無いと思ってんだよ。そっちの方がびっくりだわ」
どこまでもどこまでも御目出度いと言うか、自分に都合の良い世界で生きてんなぁ
「だ、だったらなんで……」
「知ってるって言わなかったのかって? 『本人が隠していたそうだから言わなかった』だとさ」
「そ……そんな……」
もういいなぁと思いながら、これも彼女の名誉の為に、最後に一つ。
「あとさ、お前が叩き落としたその弁当だけど、作ったのは美沙じゃなくてお前のお袋さんだからな?」
「は?」
本日一の真ん丸お目々である。あらカワイイ。
「大方小松と待ち合わせでもしてたんだろうけど、お前今日の朝急いで出てって弁当持ってくの忘れてたろ? 美沙とお前の家の前を通った時、お前のお袋さんから頼まれたんだよ」
「それじゃ……」
「自分の弁当箱やらナフキン位覚えておこうぜ。ま、渡す努力はしたし、ちゃんとお袋さんに謝っとけよ。あと、叩き落としたのはお前なんだから後片付けはよろしくな」
そう言い残すと、美沙に自分の弁当を持ってくるように言って教室を出る。早く行かないと購買のパンが売り切れちまう。
§
「さっきは有難うね」
昼休みも半分を過ぎた屋上、他の連中からは少し離れた所に腰掛けて焼きそばパン ―― 焼きたてメロンパンは売り切れだった ―― に齧り付いていると、隣で弁当箱をつついていた美沙がふと漏らす。
「ん? ああ……」
「お弁当を渡そうとしたら叩き落とされちゃって、急にあんなこと言われたから、頭が真っ白になっちゃって……」
美沙は箸を止めて、しょんぼりと肩を落とす。
「まぁ、しゃ~あんめぇなぁ。いきなりあんな事になるとは思わないからなぁ」
パンを飲み込んでから溜息を一つ。
「でも、ひろくんが庇ってくれて、その……嬉しかった」
そう言って彼女は俯いてしまう。
表情は見えないが、心なしかその耳が赤くなっている気がする。
「ま、まぁ、その、曲りなりにも彼氏としてはですね、当然の事と言いますか、良いとこ見せたかったといいますか……」
柄にもなくというか、つられてというか、自分の言葉に顔が熱くなるような気がして、慌てて手で顔を扇ぐ。
「『曲りなりにも』なんて事無いよ! ひろくんは私の立派な! ……じゃなくて、ちゃんとした! ……でもなくて……あの……兎も角! 私のか、彼氏、なん……だか……ら」
俺の言葉に顔を上げて興奮気味に言葉を発するが、最後の方は小さくて非常に聞き取り辛い。
とは言え、再び ―― 今度ははっきりとわかる位真っ赤になって ―― 俯いてしまっている姿を見ると、ワンモアリピートするのも可哀想かなという気分になる。
―― 想いを伝えるのは、必要だけれど、怖い事。それはわかる ――
「えっと、美沙さん?」
―― もしも思いが伝わらなかったら、そう考えてしまえば、踏み出せなくなる事もあるだろう ――
「なんで敬語なの?」
―― でも、そもそも踏み出さなければ届かない ――
俺の声に顔を上げた美沙がくすりと笑う。
―― だからあの時、もし想いが届かなくて泣く事になっても ――
「その、先日も言いましたが」
―― それでも伝えたいと想ったんだ ――
「うん」
―― とある調査によれば、高校生の頃に付き合ったカップルが結婚する確率は2%程度らしい ――
「その~ですね……」
―― まだ高校生活は続くし、進学、就職と続くこの先の人生で、俺も美沙もどうなるかはわからない。でも ――
「俺は――」
―― 今この瞬間、確かな事を伝えたい ――
「――貴女の事が好きです」
―― だって想いを届ける事が出来たら ――
「私も……私も貴方が好きです!」
―― こんなにも素敵な世界が広がっているのだから ――
§
後日の事ではあるが、例の一件は昼休みの教室のど真ん中という状況で繰り広げられていた。
その為、クラスメイトはおろか、そこから伝わった部活の連中からも、『愛の伝道師()』『突撃ラ〇ハート』等と揶揄われ、辱めを受ける事になる。
――くっ殺せ!
タグやら煽り文やら盛り沢山ですが、嘘は書いていません。
……ませんよね?
駆け足進行ですが、学校の購買パンは戦場なので致し方なし!(開き直り
勘の良い方は『どうせこの後【D】書くんじゃろ? ん? ん?』と思われるかもしれませんが、先に言っておきます。
書 き ま せ ん よ 。
だって気持ち悪いモン!(おっさんの主張
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誤字報告いつも助かっております。
毎回確認の上、適用させて頂いております。