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香り立つ

作者: 藤野

 一時期、よく夜中に目を覚ましていました。まあ別に、目を覚ました所でどうということも起こらないんですが……ちょっと不思議でして。

 何かに気づいて起きたような気がするものの、いつもすぐに眠りについてしまうんです。でもそれが長く続いてようやく、何が起きているのか分かりました。香りです、香り。なんだか懐かしい匂いがするんです……。私はどうやらそれで起きていたらしいんですね。

 爽やかな花の匂い……と言ったらいいのでしょうか。でも少し香水臭くって。私はこの香りを昔に嗅いでいるのです。懐かしい記憶がふわっと頭によぎった気がしました。

 上品な祖母。私を撫でる手。きっと、その時の香りなのです。これは祖母が纏っていた香水でしょうか。ずっと前に亡くなっているので、祖母のことはあまり記憶にありませんでした。でも、私が記憶の奥底にしまい込んでいた思い出が、香りをきっかけに表へ出ることになったのです。

 そうなると、なぜその香りがするのかが問題じゃありませんか。ええ、やっぱり気になるものです。

 これは結局どうしてだったのか最後まで分かりませんでしたけどね。私が祖母の命日に線香をあげ忘れていて、それに気づいて慌ててあげたら無くなったんです。

 だから、催促に来てたんじゃないかなあ……って。枕元に立って、私を見ていたのかもしれません。

 だって私、夜中に目を覚ますと体が全く動かなかったんです。あれも今思えば金縛りだったんでしょう。

 え? ……それは本当に催促に来ていたのか……ですか。

 まあ、これは私が勝手に想像したことですからね。そうですねえ、違ったかもしれません。本当は()()()()()のかも。

 効いたのは線香じゃなくて、盛り塩の方だったのかなあ。

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