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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ランドセルおじさん

作者: 水ManJu

今から2、3年前くらいのことですかね。僕はお盆に実家に帰ったんですね。で、地元の友人と遊ぶことになった。待ち合わせの場所まで電車で行こうと思い、電車に乗ったんですね。


ガタンゴトンガタンゴトンと揺られながら乗ってたんですが……なんだか向こう側の車両から変な人がやってきたんですね。


僕はその人を見た瞬間、うわっ! って思ったんですよ。というのもその人は大人の男性だったんですが、なにか変なんですよ。子供が着るみたいな半袖半ズボンで、しかも黒いランドセルを背負っている。しかも、特徴的なのは目がないんですよ。眼球がないんですよ。目の位置には底の見えない黒い闇があるだけなんですね。


僕はその人を見たときに、うわっ! っとなって。僕は霊感がある方じゃないんですが、ごくたまに見るんですよ。幽霊。絶対幽霊だと思って、気づかないフリをしたんですね。


反応したら絡まれると思って。で、その黒いランドセルを背負った……そうですね……40代くらいの方なのかな……その人がフラフラしながら近づいてくるんですね。


僕は無視して窓の外を見てたんですよ。そしたら声が聞こえてきて……

「ない……ない……」って言うんですよ。


僕はそれでも無視ししてたんですが

「ない……ない……」と言う言葉が段々近づいてくる。頼むから早く行ってくれ! とその時思いましたね。


すると僕のすぐそばで

「ない……ない……」って言ってるんですよ。チラッっと見ると斜め向かいの席にそのランドセルをつけたおじさんが座ってるんですね。


もう心底ゾクッとしましたよ。

うーーわぁ。嫌だぁ! って思ったんですが、それでも無視してたんですね。でもあまりに「ない……ない……」本当にしつこい。


僕は思わずそのランドセルおじさんの方をチラッと見たんですね。するとランドセルの肩ひものところに眼球が一つ……プラプラプラーっとしていた。


で、その時僕は思ったんですよ。この幽霊ひょっとしてこの眼球を探してるんじゃないか。って。正直嫌だったんですけど、あんまりしつこいのと、なんだかその幽霊が必死で可哀想な感じがしたので


僕は幽霊にバレないように独り言を言うことにしたんですね。で、僕は言いました。

「ランドセルの肩ひものとこ……」と。幽霊にヒントを与えたんですね。ちょっと変な感じですが。


するとその幽霊の「ない……ない……」がピタリと止んだんですね。うわぁ。ヤバい。言うんじゃなかった! 僕がそう思っていると、その幽霊が自分の胸とかお腹を探すようにを触っているんですね。


これは……ひょっとして

「目玉が肩ひもの……」と言うとその幽霊は手探りで眼球を掴んで


「あーー! あーー!」と嬉しそうに言うんですね。それでその幽霊はガポっとその目玉を自分にはめた。そしたらその幽霊は無言になってジッーーっとこっちを見てるんですね。


嫌だなぁって思いながら窓の外を見つめて無視をしてたんですけど、段々顔を近づけてくる。そしてその幽霊は耳元で言うんですね。

「もぅいーーかい」って不気味な声で。


その瞬間ドキッっとして思わず叫びそうになったんですが、それでも声を抑えた。するとその幽霊は立ち上がり電車に乗っている人の顔を一人ひとり確認し始めたんですね。顔を傾けながらジッっと乗客の顔を見ている。でも乗客はそれに気づいてないみたいなんですね。


で幽霊はなにか言ってるんですね。

「違う」「違う」


で、その幽霊はそのまま、いつの間にか消えてました。僕は心底震えながらそのまま電車に乗り、古い友人との待ち合わせの場所に向かいました。


居酒屋でその友人に電車で見たことを話しました。ランドセルおじさんのことを全部。そしたら、友人はノリノリでそれを聞いて、その幽霊の正体を突き止めるって言うんですね。


で、その友人は交友関係も広かったので片っ端から地元の知り合いに電話した。なにか知ってる奴がいないかって。


すると分かったことがあるんですね。やっぱりと言うべきか30年くらい前に痛ましい事故というか事件があった。当時、小学生の児童が電車に轢かれたんですね。


その児童が遠足に行く日に起こったらしいんですよ。その轢かれた男の子は学校でイジメを受けていた。


で、そのイジメがまぁ陰湿なもので。クラスのリーダー格が教師にバレないようにやってたんですね。周りもその子がそんな陰湿なイジメを繰り返してるなんて思わない。教師受けも良いんですよ。そういう子供は。


たとえば、子供なんでかくれんぼをして遊ぶんですよ。それが、ちょっと特殊なかくれんぼなんですよ。罰ゲームがあるんですね。それに、リーダー格が男の人が絶対に鬼になる。


そのかくれんぼのルールは一番最初に見つかった子供は罰ゲームとしてリンチされるんですね。そういう決まりなんです。リンチされる決まりっておかしいですけど、でも子供ってそういうもんじゃないですか。大人たちのルールより、自分たちのルールを優先する。


殴りたり蹴られたり、そんなの当たり前。しかも罰ゲームと称して、クラスメートの女の子に告白させたり体を触るように命じたりするんですよ。


「お前は一番最初に見つかったんだから、あの女の胸を揉んで来い」って


それで次の日イヤイヤ女の子の胸を揉むと当然女の子は大声で泣き出すんですね。そこでリーダー格の男の人が出てきて、命令されて胸を揉んだ男の子を殴りつける。それで、泣いてる女の子を助けるんですね。


それでリーダー格はみんなのヒーローですよ。胸を揉んだ少年はクラスの女の子たちから毛嫌いされる。命令されただけなのに。


そんな酷いイジメ……イジメと言って良いのか。まぁ犯罪ですよね。それが繰り返されてた。そのイジメを受けていた子供は、中々先生に言いづらいかったと思いますが、ちゃんとSOSを出してたんですね。


殴られたアザを教師に見せるようにしたり、でも教師は気づかないフリをした。


それである日遠足の時、駅のホームでそのリーダー格の男の子が言ったんですよ。

「今からかくれんぼをするぞ」って。みんなビックリですよ。でも、逆らったらなにされるか分からない。で、駅のホームで突然かくれんが始まったんですね。


でも駅のホームに隠れるところなんてないですよね。


かくれんぼしようって言われた子はパニックになった。どうしよう! どうしよう! どこに隠れたらいいんだ! どこに! そうだ!


その子は必死だったんですね。で、思わずホールから線路に飛び降りた! ここなら見つからないだろ! と。それにここまでしたら教師も気づいてくれるだろうと。自分が酷い方法でイジメられていることに。


誰かに気づいて欲しい。そう思ったんですね。


で、リーダー格の男の子を見たら笑ってるんですよ。「ろーーく……ごーー……」と言いながら線路に降りた子供を見て。


で、線路に降りたその子はふと横を見ると電車が迫ってきているんですね。凄い勢いで近づいてくる。怖くて体が動かない! うわぁ!!! っと叫んだ直後!


キィーーーーーーー!!! バグン!……っと嫌な音を出して電車は子どもを轢いた。即死でした。その子は亡くなったんです。


でも、学校は責任を認めませんでした。イジメの事実も隠蔽しました。線路に飛び込んだのはその子が自分から飛び込んだと。止めようがなかったと。自殺だったと。


僕はそう聞いてなんとも言えない気持ちになりました。イジメを受けていた被害者の気持ちが少し分かったからです。


あのイジメを受けた少年は今もあの場所で苦しんでいるのかも知れません。30年前のことです。きっと多くの人が忘れているでしょう。でも被害者は決して忘れない。


彼は電車内で誰かを探しているみたいでした。それは彼を死に追いやったいじめっ子か。それとも隠蔽した教師か。それとも見て見ぬ振りをしたクラスメートか。


次は彼の番です。次は彼が鬼になってみんなを探す番です。イジメをしていた方は決して見つからないように気をつけて下さい。


怖いと思った方


後味悪いと思った方


ぜひ感想と評価お願いします。レビューもお願いします。

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