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第七章 <反乱 其参>

 「麗華さま!皇弟率いる軍勢が、こちらに向かって進軍を開始したとの情報が入りました!」

 

 孔明の軍を退け、雪桔を占領することに成功した翌日。

 仲間の一人、梠楊慶ろようけいから告げられたその言葉に、私は内心、拳を突き上げた。

 そして、笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。

 

 「順調ね。皇弟が休憩を取る可能性がある箇所を纏めておいてくれるかしら?」

 

 「御意!」

 

 転移の異能を得意とする楊慶は、軍勢の数などの詳細な記録を記した木簡を私に手渡し、跪拝の礼を取った後、一瞬にして私の眼前から姿を消した。

 

 雪桔の元・宮城きゅうじょうの地下を拠点としながら、私たちは着々と戦闘準備を進めている。

 

 仮統治者だった孔明は、こちらが拍子抜けするほど弱かった。

 

 いや、ただでさえ少ない、雪桔に住む異能者の大半がこちら側だったのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

 

 その上、反乱が起こった日から孔明は宮城から出てこなかった。

 恐ろしくなったのか、愚かにも軍の全てを宮城の周りに固め、自分とその家族だけを守らせようとした。

 兵を一か所に固めてくれたおかげで、こちら側が攻めるのはとても楽だった。

 あまつさえ、逃亡しようとした彼を捕まえることは、それ以上に簡単だった。


 というか、貴重品を大量に乗せた馬車が夜中にコソコソ出発しようとしていたら、どうしたって目立つし、誰だって気づくわよね……


 所詮は小物だったということだが、仮とはいえ、あんなのに雪桔の統治を任せるとは、綜竜もよほど人手不足なのだなと思う。


 現在、孔明とその一族。その他、幾人もの私たちと戦った兵士たちは、味方の屋敷に監禁している。


 反乱を起こした以上、血が流れるのは当たり前のことではある。

 だが、助けられるものは助けたい。

 

 そんな私の思いと、ある程度は残しておいた方が綜竜と交渉する際に有利になると見込んで、できる限り殺さず、生きたまま捕まえるよう指示を出した。


 ただ、それだけの話。


 また、私たちの姿は、未だ誰にも見せていない。

 捕らえた者たちに合わなければならないような場合は、姿を隠す異能をかけてもらうか、仮面を付けるかするつもりだ。


 雪桔の城下はやはり、混乱の極みにある。


 反乱を起こして雪桔の実権を手にした者たちの姿を、未だに見ることができないのだから。


 ――それも、近いうちに終わりそうだけど。


 にんまりと、口元に弧を描く。


 そう。雪桔の実権を握るというのは、作戦の一段階に過ぎない。

 綜竜から、追討軍がやって来ることは、決定事項のようなものだから。

 だからこそ、私はそれを利用して、合法的に雪桔を取り戻す方法を模索し、このような強行策に出た。


 ここまで来たら、絶対に成功させてみせる。


 そんな闘志を胸に、私は楊慶から手渡された木簡を眺めた。


一か月に一度は更新したい…

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