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第六章 <反乱 其弐>

 「は?援軍をよこせだと?」

 

 青楼にて、一方的な戦闘が行われた、数日後。

 

 綜竜の都、紫晶の中心。宮殿の一室では、一人の男がその従者から受け取った情報に対し、苛立ちを含んだ声を上げていた。

 その情報とは、言わずもがな、雪桔で起こった反乱についてのもの。

 更には、机上を見れば、そこには雪桔の統治を一任した男からの文――それも、援軍を出してほしいとの内容のものが、長ったらしい文章で綴られたもの――がある。

 しかも、そのような不愉快な文を寄越した者は、他でもない、雪桔の仮統治者、叙孔明。

 少し前に潰した小国、雪桔の皇族の分家の当主に当たる男だ。

 

 綜竜の兵部は今、対妖魔軍の結成にてんやわんやだということや、あの国は特に重要視していなかったこともあり、傍系とはいえ皇族の血を引く者ならば生き延びた雪桔の貴族からの反発も小さいだろうと思い、綜竜の者をそこまで派遣することもなく、雪桔の高位貴族の中から、適当な者を見繕って仮統治させたのが裏目に出た。


 雪桔を重要視していなかった理由。

 それは、雪桔を潰したのは、どちらかと言うとこの国の威厳を保つためだからだ。

 発端は、言わずもがな、雪桔の外交担当の者――礼部の高官が、酔って綜竜の皇族の血を引く貴族の娘を殺したなどという事件。

 大国、綜竜の威信に関わるということから雪桔を潰したが、対妖魔軍の結成にできる限り労力を割きたかったため、雪桔に派遣する人材は最小限に留め、基本的な統治は叙孔明――雪桔の人間に任せることで、綜竜の度量の広さを示すという政策のつもりだった。つもりだったのだが。


「――その結果が、これか」


男は、心底不機嫌そうに、そう吐き捨てる。

だが、それも一瞬。

反乱に対する詳細な情報が記された書類に目を通すやいなや、その表情は、驚愕へと変化する。


「首謀者はおろか、反乱者たちは、誰一人として姿を見せていない、と?」


先程まで、孔明に統治を一任していたことを小さな失敗だったと考えていた。だが、それは底の見えないほど大きな失敗だったことを、男は自覚した。

 

 姿を現すことなく、事態をここまで混乱させることが可能な人間。

 それは、どう考えても、自分と同じ異能者であることに他ならない。

 恐らくは、生き残った雪桔の貴族の中で、孔明の支配に納得がいかない者が反旗を翻したのだろう。

 それも、ここまで大規模なものを起こすということは、かなりの数がいる筈。

 

 「仕方がない、私も追討へ出向くとするか」

 

 「な…貴方様自らが出向く必要、はっ」

 

 その必要は、ないと。従者は、そう言おうとしたのだろう。

 

 しかし、必ずしもそう言い切れないということを理解しているが故に、黙り込んだ。

 

 ――確かに今のところ、一般人への被害は出ていないという。だが、反乱がこれ以上大きくなると、どうなるか分かったものではない。


 そのためには、段階的に強い者を差し向けて相手の実力を上げてやるような馬鹿な真似はせず、小さな芽であろうが、少しでもこの国を脅かす可能性があるのならば、圧倒的強者をぶつけて除去するのが最善である。

 

 男の意図を正しく理解したであろうその従者は、一つ頷き、こう言った。

 

 「御心のままに。皇弟殿下」


お、お久しぶりです…今度の更新は。。。いつでしょう?

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