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第二章 <滅亡のその後に>

 その後、私は昼間は旅の薬屋として身を立て、夜は妖の祓い手として暗躍していた。

暗躍というと悪いことをしているようにも聞こえるが、異能者として登録されていないし、恐らくお尋ね者なのだからしょうがない。

表向きの、旅の薬屋の方は、旅をしていれば、いざという時に顔バレしにくいし、訪れた土地の分だけ多くの噂や情報を得ることが可能だ。例えば、どこどこにどんな妖が出没したらしいとか、今、綜竜のお役人が視察に来ているとか、そんなものたちだ。討伐する妖の目星をつけられるし、私はお尋ね者になっていると推測されるので、そういった噂話、情報はとても助かる。

さらに、薬学は専門分野だし、妖だけでなく、病気や怪我が原因で死んでしまう人をなくすことができる。

そんなわけで、まあ、そこそこ暮らしていけたわけなのだが、ある時、綜竜の都たる紫晶ししょうで薬を売っていた時、一組の役人の会話に、なかなか興味深い内容があったのだ。

なんでも、綜竜やその属国の異能者で、軍属の者たちを集め、一つの隊を作るというのだ。

そこでは、属国も含む国中の妖に関する情報が一番に伝えられ、妖の研究なども行い、更には異能者同士で訓練をするという。

その話を聞いた時、真っ先に思ったことは、その隊に是非入りたい、というものだった。

情報収集も、研究も、自分を鍛えることにしても、やはり一人では無理がある。

それに、市街で得られる情報などは、大半がただのデマに過ぎない。

一方、軍で得られる情報などはそれらとは比べ物にならないほどの信憑性がある。

だが私は、「本来の身分」の自分ではお尋ね者だし、「現時点」の自分ではただの庶民だ。

この国では、貴族が官吏となり、働くことが常識だ。

稀に、平民でも官吏になることがないわけではないが、歴史上、数える程しかそんな例はないし、そもそも識字率が高くない平民の中で、貴族を凌駕するほどの機知と聡明さを持ち合わせるものなど、いないに等しい。

ただの予想に過ぎないが、私は、彼等は没落貴族や敗戦国の王族だった者や、何らかの理由で宮中を追放された官吏や医官などに師事された者だと考えている。

彼等は基本的に目立とうとはしないような人々だから、その理由はかなり的を射ているのではないかと思う。

確かめようがないし、どうでもいいのだが。

まあ、大きな戦争でも起きたらひっくり返るのだろうけど。

――平民が政治に関わることのできる大きなチャンスは、戦争だ。戦争でも起きたら、当然ながら平民も兵士として戦いに駆り出される。そこで手柄を立てさえすれば、成り上がることも可能、というわけだ。

だが、異能者を集めた隊ともなると話は別だ。

異能者は貴族であり、平民が異能を持つなどありえない。否、あってはならないのだ。

もし、異能を持つものが平民の者と関係を持ったとして、子供が出来たとする。

その場合、その子が異能を持つ限り、出生を捻じ曲げてでも貴族として育てられる。

異能というのは、それほどまでに貴重な力なのだ。

だから、現時点での立ち位置が平民である私が、その隊に入ることなど、不可能なのだ。

どうしたものか。

そんな考えても仕様がない事を考えていたが、どうやら客が来たようだ。

私は軽くため息を吐き、黒頭巾を被ったどこからどう見ても怪しい客の相手をすることにした。

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