お茶会
家守の代わりに客間に来たのは、クリーム色のセーターの優しげな青年でした。
春枝は、見知らぬ青年の登場に驚きました。
でも、青年の方は、春枝を知っているようで、親しそうな笑顔を浮かべて春枝に言いました。
「お久しぶりです。クニオです。」
えっ(°∇°;)
春枝は、イケメンチエンジしているクニオを見て驚きました。
「くっ……クニオさん!?
メガネ……と、あのチャーミングな口髭はっ…どこに?」
驚いた春枝は、上手く言葉が、つなげませんでした。
だって、柳田クニオと言えば、丸眼鏡と口髭がトレードマークなんだから。
それが、すっかりそりおとされて、若返っているのです。
髪の毛だって、なんだか今風に短く刈り込んで、サッパリ爽やかです。
春枝の驚く顔を、クニオは満足そうに笑顔で受け、
それから、少し照れたように目を細めて説明を始めました。
「私が他界して既に弔いあげも終わりました。
時代も平成から令和…と移り変わりましたし、
今風な格好にも挑戦しようと思いましてね。」
少し照れた優しいクニオの笑顔に、春枝もつられて照れ笑いを返しました。
「まあ…、お似合いですよ。」
春枝はそう言ってから、クニオをテーブルへと誘いました。
でも…令和と言うより、80年代トラディショナル…って感じね。
若々しく、スッキリとしたクニオの座る姿を見て春枝は思いました。
春枝は、それから、丁寧に紅茶を入れ、
スコーンにタップリのクリームとブドウのジャムを添えてクニオに渡しました。
二人は、黙ってお茶を飲み、お互いに相手が話しかけてくるのを期待していましたが、スコーンを食べ終わり、紅茶を飲み終えてしまいました。
春枝は、おかわりの紅茶を入れながら、若々しいクニオの姿に戸惑いながら声をかけました。
「百年ぶりに私の所へ来たのは、クニオさんにも牛頭様からのお使者が来たのですね?」
春枝は、秋ごろにやって来た、可愛らしい狐の童を思い出しました。
装束を着た童は言いました。
今年、人間の世界では、やはり病が蔓延し、
病院は大変な事になりましたが、
人々の平和を祈る鎮守の神様も忙しい一年になりました。
皆、町や人たち、動物達の穏やかな生活のために、出来ることをしました。
大神達は、病神が暴れぬように鎮めることに努め、
道祖神や、明神、河童やまでもが、この終わりの見えない病神との闘いに力を貸していたのです。
それでも、海の向こうからやって来た、病神を鎮めることは難しく、
神様も疲れてきました。
そんな神様に元気と力をくれるのは、小さな子供達の笑顔です。
でも、子供たちも、不安な毎日に笑顔を忘れがちになっています。
それでは、神様も元気にはなれませんから、
子供たちが笑顔になるような物語を見つけてくるように、
春枝のような、山の魔女にも使者がやって来たのでした。
「はい。やはり、春枝さんの所へも使者がいらしたのですね?
ああ、安心しました。
私は、神様からお話をお願いされるなんて初めての事なので、どうしたら良いのか、春枝さんに相談に来たのです。」
クニオは、そう言ってホッとひと息つきました。
「私だって…知らないよ。
何しろ、神様のお使者に会うのだって、今回がはじめてなんだから。」
春枝は、困ったとばかりにため息をつきました。






