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物語をさがして  作者: ふりまじん
クニオ
4/20

お茶会

家守の代わりに客間に来たのは、クリーム色のセーターの優しげな青年でした。

春枝は、見知らぬ青年の登場に驚きました。


でも、青年の方は、春枝を知っているようで、親しそうな笑顔を浮かべて春枝に言いました。


「お久しぶりです。クニオです。」


えっ(°∇°;)


春枝は、イケメンチエンジしているクニオを見て驚きました。


「くっ……クニオさん!?

メガネ……と、あのチャーミングな口髭はっ…どこに?」

驚いた春枝は、上手く言葉が、つなげませんでした。

だって、柳田クニオと言えば、丸眼鏡と口髭がトレードマークなんだから。

それが、すっかりそりおとされて、若返っているのです。

髪の毛だって、なんだか今風に短く刈り込んで、サッパリ爽やかです。


春枝の驚く顔を、クニオは満足そうに笑顔で受け、

それから、少し照れたように目を細めて説明を始めました。


「私が他界して既に弔いあげも終わりました。

時代も平成から令和…と移り変わりましたし、

今風な格好にも挑戦しようと思いましてね。」

少し照れた優しいクニオの笑顔に、春枝もつられて照れ笑いを返しました。


「まあ…、お似合いですよ。」

春枝はそう言ってから、クニオをテーブルへと誘いました。


でも…令和と言うより、80年代トラディショナル…って感じね。


若々しく、スッキリとしたクニオの座る姿を見て春枝は思いました。


春枝は、それから、丁寧に紅茶を入れ、

スコーンにタップリのクリームとブドウのジャムを添えてクニオに渡しました。

二人は、黙ってお茶を飲み、お互いに相手が話しかけてくるのを期待していましたが、スコーンを食べ終わり、紅茶を飲み終えてしまいました。


春枝は、おかわりの紅茶を入れながら、若々しいクニオの姿に戸惑いながら声をかけました。


「百年ぶりに私の所へ来たのは、クニオさんにも牛頭様からのお使者が来たのですね?」

春枝は、秋ごろにやって来た、可愛らしい狐の童を思い出しました。

装束を着た童は言いました。


今年、人間の世界では、やはり病が蔓延し、

病院は大変な事になりましたが、

人々の平和を祈る鎮守の神様も忙しい一年になりました。


皆、町や人たち、動物達の穏やかな生活のために、出来ることをしました。


大神達は、病神が暴れぬように鎮めることに努め、

道祖神や、明神(みょうじん)、河童やまでもが、この終わりの見えない病神(やまいがみ)との闘いに力を貸していたのです。


それでも、海の向こうからやって来た、病神を鎮めることは難しく、

神様も疲れてきました。


そんな神様に元気と力をくれるのは、小さな子供達の笑顔です。


でも、子供たちも、不安な毎日に笑顔を忘れがちになっています。


それでは、神様も元気にはなれませんから、

子供たちが笑顔になるような物語を見つけてくるように、

春枝のような、山の魔女にも使者がやって来たのでした。


「はい。やはり、春枝さんの所へも使者がいらしたのですね?

ああ、安心しました。

私は、神様からお話をお願いされるなんて初めての事なので、どうしたら良いのか、春枝さんに相談に来たのです。」

クニオは、そう言ってホッとひと息つきました。


「私だって…知らないよ。

何しろ、神様のお使者に会うのだって、今回がはじめてなんだから。」

春枝は、困ったとばかりにため息をつきました。


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