クニオ
パソコンを開くと、メールが届いていました。
古い友人のクニオからです。
春枝は、久しぶりに見る名前にため息をついて言いました。
「まあ、あの人も、駆り出されるなんて!!
今回はよほど大変なんだね。」
春枝は眉を寄せて、クニオのメールの題名を見ました。
題名『春枝様へ』
「まあ…春枝様だってさぁ(///∇///)」
クニオの題名に春枝は、懐かしくなって目を細めました。
何しろ、クニオと春枝が会ったのは、今から100年も昔の話なのです。
春枝は、クニオとの出会いを懐かしく思いながらメールをクリックしました。
クニオは、昔話の研究する学者にとりついていた妖精で、その学者が春枝の山に着たときに知り合いました。
人間には、人間のインターネットがあるように、
妖怪にも、妖怪のネットがあるのです。
クニオは、どんなメールを春枝にしたのでしょうか?
本文…
長らくご無沙汰をいたしております。
私を覚えておいででしょうか?
もし、よろしければ、本日、一緒にアフタヌーンティ等を楽しみたく、文を差し上げる次第です。
お返事をお待ちしております。
「まだまだ、固い文章だこと。」
メールを読んだ春枝は、そう呟いて返信しました。
題『OK(o^-')b』
本文…
久しぶり(^-^)
元気そうで嬉しいよ。
お茶、いいね(グッド)
3時にうちのドア、繋げるから、遊びに来てd(^-^)
「送信っと。さて、忙しくなったよ。
久しぶりの好男子とのお茶会だからね、素敵な茶菓子を用意しなきゃね。」
春枝は、そう言って部屋を出ました。
西洋の文化にも明るいクニオが驚くような、なにか華やかなスイーツを用意しよう。
春枝の気持ちは浮き浮きと踊り出すのでした。
はじめ、ダイレクトに柳田國男先生を登場人物で書いていました。が、
なんだか、それではまずそうな気がしたので、妖精にさっき急遽変更しました。
1919年、今から100年前、スペイン風邪が流行った頃に、柳田國男先生は貴族院のお仕事を辞めて
旅に出かけるのです。
その話をモデルに作ったので、柳田先生の名前を使いたいと思い、著作権が切れているから大丈夫だと思ってましたが、ご本人は著作権とは別物だと、ここで気がついて、直しながら書いています。
「日本の伝説」では、先生が語っているようなので、なんとなく、登場人物のような錯覚があるのです。